マーラーの5番 (マリインスキー歌劇場管弦楽団) | れぽれろのブログ

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11日の土曜日、マリインスキー歌劇場管弦楽団の演奏会に行ってきました。
演奏会を鑑賞しに出かけるのは3か月ぶり、そして最近は体調を崩したり
何やかんやで、1人でのお出掛けも1か月以上ぶりです。
まだまだ暖かく過ごしやすい秋の一日、
ウキウキした気分でザ・シンフォニーホールへ行ってきました。

そしてシンフォニーホールでオケの演奏を聴くこと自体久しぶりです。
確認してみると、2年前の関西フィルのマーラー5番以来です。
今回の演目は、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」と、
そしてメインがマーラーの交響曲5番。
前回に引き続きマーラーの5番を鑑賞することになりました。

指揮は有名なロシアの指揮者、ヴァレリー・ゲルギエフ
テレビなどでもお馴染みで、髪を振り乱しながら
独特のコチョコチョした指の動きで細やかに音楽を表現するのが印象的。
長さの短いオリジナルの(?)指揮棒を持って指揮することもあります。
汗びっしょりのざんばら髪で演奏を終え、瞬間的に髪を整える姿も印象的。

キーロフ歌劇場管弦楽団(マリインスキー歌劇場管弦楽団の旧称)名義のCDは
自分も何枚か所有しています。
ラフマニノフの交響曲2番、ピアノ協奏曲2番(奏者はランラン)、
ストラヴィンスキーの「春の祭典」、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」、
リムスキー・コルサコフの「シェエラザード」。
とくに「くるみ割り人形」の、こんなテンポで踊れるわけないやろという(笑)
ハイスピードの演奏、そして「シェエラザード」の美しさと終楽章の
「バグダッドの祭り」部分のこれまた常軌を逸したスピード感
(ついてくるオケがすごい)が非常に印象的なCDです。

そんなゲルギエフ&マリンスキー歌劇場管弦楽団は
どんな演奏を聴かせてくれるのか・・・。


ゲルギエフの演奏を生で鑑賞するのは自分は初めてです。
指揮法はテレビなどで見たとおり、爪楊枝のような短い指揮棒を持ち
独特の指の動きで音楽を表現していました。
そしてゲルギエフさん、式台を用意せず、ホールの上にそのまま立ち、
演奏者と同じ高さで指揮しています。
髪を振り乱す姿も特徴的ですが、現在は髪はやや短くしており、
10年くらい前までのざんばら髪は見られませんでした。


前半はストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」。
吹奏楽の部活動経験者のクラシック音楽ファンなら
「春の祭典」と並んで若いときの早い時期に必ずハマる音楽。
ベル・エポック最晩期の美しい色彩感、次時代を予告する過激なリズムとパワー、
そして時々現れる綺麗なメロディ、魅力あふれる音楽です。
この日は1919年版の組曲編曲版でした。
自分は「火の鳥」は全曲盤が好きでよく聴きますが、
組曲版は「カスチェイの踊り」でトロンボーンのグリッサンドが聴けるなど
少し編曲が異なり、これはこれで魅力的な音楽です。

この日の演奏、オーケストラとホールの響きが良いので、
素晴らしく心地よい演奏でした。
独奏管楽器がすごくいい。
とくに「王女たちのロンド」と「子守歌」のゆったりとした部分が美しく、
良い演奏だったように思います。
「王女たちのロンド」の独奏楽器のメロディが繋がっていく部分の心地よさ、
そして「子守歌」、ファゴットの独奏が素晴らしく良い!
このファゴットの方が気に入りました。
「子守歌」の最後の弱音がまた素晴らしく心地よい、
こういう弱音部分が綺麗な演奏は生オケを聴く醍醐味です。
「カスチェイの踊り」はガンガン突き進み、音の饗宴も楽しく、
そして終曲の徐々に盛り上がって行く部分と最後の爆発、
前半の「火の鳥」だけ大満足です。


後半はマーラーの交響曲5番です。
3部構成の独特の形式、暗→明の曲ですが1楽章の調性(嬰ハ短調)は
メインの調性ではなく、全体としてニ長調に収斂していく発展的調性、
ど真ん中にスケルツォ(レントラー)の楽章を設置し、
両端に緩徐楽章→ソナタ形式(あるいはロドソナタ形式)を持ってくるという
独特のシンメトリカルな構成、
これまでの交響曲の概念を覆した面白い音楽。
(この曲についてはこちらで散々書いたので、
 ご興味のある方は参照ください。 →  )

1楽章、トランペットが素晴らしいです。
驚くべき独奏トランペットの安定感!
葬送行進曲のような楽章ですが、緩徐楽章としてじっくり聴かせる
魅力的な演奏でした。

ゲルギエフは早くなりすぎず、また感情過多にもなりすぎず、
着実なテンポで細部を表現を浮かび上がらせながらじっくりと聴かせてくれます。
2楽章最後のニ長調のクライマックス部分、テンポを落として盛り上がりを作る
演奏も多いですが、ゲルギエフは感情過多になりすぎず、
堅実に盛り上げていきます。

3楽章のオブリガートホルンもまた安定して素敵な響きを聴かせてくれます。
中間部の、楽器から楽器へ音楽が渡されていく、
この弱音部分がまた生演奏の醍醐味です。
中間部後半のホルツクラッパー(上記リンクの前回の演奏会では響かなかった)も
突き刺さる響きを聴かせてくれました。

4楽章がこれまたとっても綺麗な演奏。
美しさを維持しながらこれまた重たくなりすぎず、
堅実に弦楽器をドライブしています。気持ちいい~。

そして5楽章が面白い。
ロンド主題2回目あたりまでは割と普通に演奏している感じでしたが、
4楽章の再現主題1回目が終わった後くらいから、急速にテンポアップします。
突如としてサクサク突き進む演奏、4楽章の再現主題が現れると少し
ペースダウンしますが、それ以外は進む進む・・・。
ロンド主題3回目(三連符が続く部分)など、テンポを落としたくなるところですが、
ここも突き進み、三重フーガも走り抜けて、
圧倒的なパワーと大音響で感動的に終わりました。
これがゲルギー&マリインスキーのロシアンパワー。

ブラボーの嵐とスタンディングオベーション。
これぞオーケストラ、という感じがする演奏会でした。
マーラーの5番は何度も聞いた演奏ですが、今回の演奏がベストかもしれません。
上記の過去記事に書いたような、自分が考える構成的な解釈とは
かなり異なる演奏でしたが、美しければすべてよし!
かっこよければすべてよし!


ということで久しぶりに楽しくオーケストラを堪能できました。

来月はバイエルン放送交響楽団を聴きに行く予定。
6年ぶりにマリス・ヤンソンスに会いに、京都に向かう予定です。