Music Today on Fluxus 蓮沼執太vs塩見允枝子 | れぽれろのブログ

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7月7日の七夕の夜、「Music Today on Fluxus」と題された
イベントに行ってきました。
場所は中之島の国立国際美術館。

先日「美の饗演 関西コレクションズ」と題された展覧会に行ったとき、
常設展示にて「塩見允枝子とフルクサス」というミニ特集が組まれており、
この展示が面白かった・・・という記事を書きました。
国立国際美術館のスケジュールを見てみると、その塩見允枝子さんの
音楽イベントが予定されている・・・。
ということでチケットを予約し、鑑賞してきました。

フルクサスは60年代~70年代の前衛芸術運動。
塩見允枝子さんはそのグループのお一人とのこと。
そんな塩見さんと、蓮沼執太フィルという比較的若い音楽グループとの
コラボレーション。
何やら面白そうです。

7月7日のこの日は梅雨明けの暑い暑い1日。
夕方に家を出て会場へ向かいます。
6時半に会場に入ると、既に入り口前に行列ができていました。
地下2階の常設展示室がイベント会場。
「塩見允枝子とフルクサス」の特集展示も、合わせて鑑賞することができます。
イベント開始の7時まで、このスペシャル・ポエム(先日の記事でも
少し書きました)の展示を再びぼんやりと眺めて過ごします。
お客さんの中には年配の方もおられ、「昔この手紙が届いたことがある」と
言われている方もおられました。すごいなあ。


以下、この日のイベントの覚え書き。

前半

まずは蓮沼執太フィルの演奏会です。
計7曲が演奏されました。
地下2階の中央に演奏者が固まり、その周りを観客が囲む。
演奏者を囲んでの立ち見です。
後ろの方になってしまったので、あまり演奏者の様子が見えません(笑)。

楽器たち。
ピアノ、ベース、ギター、シンセ、ドラム、マリンバ、グロッケン、
ヴァイオリン、ヴィオラ、ユーフォニウム、フリューゲルホルン・・・
これらの楽器群に、ヴォーカル、コーラス、ラップが重なります。
なかなか独特の響きがします。
マリンバ入っているのがいいですね。心地よく響きます。
コーラスだけでなくラップが入るのも面白いです。
そして特徴的なのがユーフォニウム&フリューゲルホルンです。
この2楽器が加わることにより、音色がとても楽しくなります。
自分は吹奏楽部だったので、ユーフォニウムというのは何だかやたらと懐かしい。
そして、マーラー好きにとっては、交響曲3番の3楽章(ポストホルン代用)で
おなじみのフリューゲルホルン。
面白い楽器の選択ですね。

音楽は基本的にポップ。そしてややミニマルミュージック風です。
同一リズム・フレーズが繰り返されるタイプの音楽で、
そしてこの繰り返しがやたらと気持ちいい。
フルクサス活動時期の同時代の作曲家、スティーヴ・ライヒの
ある種の音楽にも似た感じです。
そして、それでいて不思議とメロディアスなのがこのグループの
面白いところだと思います。
とにかくリズム感が良くて、体が揺れます。楽しい~♪
自分は普段クラシックの演奏会ばかりなので、
たまにこういう音楽を聴くと異様に楽しくなってきます。
そして音の響き、音色がとにかく気持ちいい。
そしていろんなところでいろんな音が鳴っています。
こういう趣向は少し後期ロマン派音楽的なのかも・・・?

なぜか思い出したのが、ゆらゆら帝国の数年前のアルバム「空洞です」。
このアルバムもミニマル風ロックですが、なぜかメロディアスな
不思議な音楽なのですが、何だか近い感じ。
そして、こういう音楽にラップが加わるのも21世紀的な感じです。

「グラスハープ」を使った曲がありました。
水を入れたグラスの縁を指でなぞり音を出します。
マイクを近づけ、その音を増幅。ふわんとした不思議な響きがします。
そして、ある曲で他の楽器が停止しグラスハープの音だけになる瞬間、
ちょうどそのとき、お客さんの中のお子様が泣き出しました。
グラスハープの音と子供の泣き声が混ざり合う・・・面白い響きが完成しました。
5拍子の曲もありました。
難しげな5拍子のリズムに、ドラムの裏打ちが入って何やら混沌としたリズムに。
面白いです。
そして、いつの間にかアタッカで6拍子の次の曲に繋がって行きます。
楽しい&気持ちいい。
前半だけで既に満足です。


後半

塩見允枝子さんが登場し、スペシャル・ポエムのイベントが開始します。
蓮沼執太フィルの皆さんも参加し、以下の4つのイベントが行われました。

1.方向のイベント
前半と打って変わって、60年代風の響きのする音楽の登場です。
先ほどまでのポップさはどこへやら。古き良き(←?)前衛音楽の世界へ・・・。
(「前衛音楽」風なのに古い響きと言うのも変なのですが・・・笑)。
中央で即興風に奏でられるサックスの音、身体にずーんと響く大音響の低音、
メトロノームの音の増幅、録音された音のステレオからの増幅、
1分間に1回響く鈴の音(塩見さんが鈴を振る)、
膨らんだ青い風船が飛んでいく音・破裂する音、
そんな中、鈴などの音が出る素材を手にして、
客前を左右にいったりきたりする演奏者が・・・。
彼の動きが音に重なります。
そして、「音楽」はだんだん加速して行きます。
サックスはより過激な音になり、大音響の低音も頻度が多くなり、
左右に移動する人は高速で走るようになります。
ひたすら加速した後、音が停止し、おしまい。
現代音楽の演奏会でもなかなか味わえない楽しさです。

2.落下のイベント
紙飛行機をメトロノームのリズムに合わせて飛ばすイベントでした。
紙飛行機に番号と位置が書かれており、番号はメトロノームの拍、
メトロノームのタイミングに合わせて紙飛行機を飛ばす・・・。
地下1階から、観客の協力者8人を含む「奏者」が飛行機を飛ばし、
紙飛行機が観客のいる地下2階に落ちてくる、落下のイベント。
宙を舞う白い紙飛行機群が綺麗です。
メトロノームのタイミングにより、紙飛行機が増えたり減ったりします。
先日、びわ湖ホールで鑑賞したバーゼル歌劇場の「フィガロの結婚」に引き続き、
また紙飛行機です(笑)。
バーゼルの舞台を思い出し、フィガロの結婚3幕のフィナーレ、
結婚行進曲の音楽が脳内で流れ出します。
そして紙飛行機の中の1機が、国際美術館の地下1階から吊るされている
カルダーのお馴染みのモビール作品に
うまい具合にひっかかりました(笑)。
これも御愛嬌です。

3.風のイベント
ドライヤーのようなもので風を起こし、床に落ちている先ほどの紙飛行機が
風になびきます。
動きが見えにくく、地味な感じ・・・。
静のイベントです。

4.消えるイベント
最後は蓮沼フィルによる演奏でした。
いきなり全楽器による強奏、大音響、体と脳みそに響く物凄い重圧の音量です。
イメージはマーラーの交響曲10番1楽章展開部後半のトーンクラスター
(←マーラーのたとえばっかり)
で、その大音響から、楽器が一つずつ消えていきます。
だんだん音数が減って行く・・・。
イメージはハイドンの交響曲45番「告別」の4楽章。
(←クラシックのたとえばっかり)
最後に音が極小になり、すべての音が消失して、おしまい。
これも楽しい響きでした。


ということで、非常に楽しいイベントでした。
40年前と現在が出会う・・・そんな感じのイベント、楽しめました。

最後に、この日の入場券代わりの缶バッジをペタっと。