アンリ・カルティエ=ブレッソン その2 | れぽれろのブログ

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前回に引き続き、カルティエ=ブレッソンです。

30年代にヨーロッパ各地を撮影したカルティエ=ブレッソン。
フランス人であった彼は、40年代にはナチスドイツの捕虜になります。
そして終戦後、ロバート・キャパらとともにマグナムフォトを設立し、
以降は報道写真家として、世界を飛び回るようになります。
アメリカ、メキシコ、ソ連、インド、東南アジア、中国、日本・・・。
ドキュメンタリー風の写真が中心になりますが、
それでも楽しく不思議な写真になるのが、
カルティエ=ブレッソンの面白いところです。
ドキュメンタリーとしての要素と、芸術的で面白い構図の要素が混ざり合う。
そんな中から、いくつかの写真を並べてみます。


・7月4日 ケープコッド マサチューセッツ アメリカ 1947年

まずはアメリカから
有名な写真だと思います。
痩せたお婆ちゃんが独立記念日に星条旗の旗を身にまとい、何かを指差す。
どういう状況なのでしょうか。
お婆ちゃんの右斜め上を指す腕と、背後の左斜め上に伸びる柱の対称。


・テキサス アメリカ 1947年

あごに手を当ててほほ笑む男の人。
背後からお酌しようとする女の人・・・ではなく、壁のイラストなのですが
一緒に飲んでるように見えます。へんな感じ。


・メキシコ 1963年

メキシコから1枚
影がつくる斜めの線と、階段と柱と手すりの形。
抽象絵画のようです。
そんな中、2人の人物の影が作りだすリズム。


・サマルカンド ウズベキスタン ソ連 1972年

旧ソ連です。
階段を上る2人の人物・・・ではなく、人物と絵との組み合わせ。
上記のアメリカの広告的な絵とは対照的な、労働者賛歌的なソ連のイラスト。
しかしこのイラストは不思議と幾何学的な感じがします。
前の階段とのマッチングもいい感じです。


・イルクーツク ロシア ソ連 1972年

タイヤの跡と電柱が組み合わさる形の面白さ。
当時はまだ冷戦体制下です。
これは実はたまたま軍の秘密基地の近くで、
撮ってはいけない場所の写真だったのだとか。
世界で写真を撮影したカルティエ=ブレッソンは、
結構危ない目にも遭っていたそうです。


・スリーナガル カシミール インド 1948年

カルティエ=ブレッソンはアジアにもやってきています。
インドでは死の直前のガンジーに会い、
ガンジーの葬儀の写真も撮影しています。
そんなインドの写真。
中央の人物が空中に手を掲げ、雲に触れている・・・
ように見えます(笑)、ユーモアあふれる面白い写真です。


・難民キャンプ パンジャーブ インド 1947年

インドからもう1枚
慌てふためいているのか、踊っているのか、逃げているのか。
いまいちよくわかりませんが、人々の動き、とくに手の動きが面白い写真です。


・行進 北京 中国 1958年

中国です。
マスゲーム中でしょうか?
同じポーズの女の子たちのリズムと、その影のリズム。
石畳の幾何学模様。
しかも女の子たち、ジャンプする瞬間です。永遠の空中静止。
この他、中国にてカルティエ=ブレッソンは、先日の記事で少し紹介した
宦官の写真も残しています。


・市川団十郎の葬儀 東京 日本 1965年

カルティエ=ブレッソンは1965年に5ヶ月間日本で過ごしたのだそうです。
この写真は告別式の写真。
各々、異なる方向を見る顔のリズム
黒バック、喪服(黒着物)の組み合わせのため、
暗闇から顔だけが現れ出ているようにも見えます。面白い。


・北海道 日本 1965年

手前の対称形の学生服の男の子2人と、
背後のやや扇情的なポスターとの組み合わせ。
人体のもつリズムが面白い。
下の自転車のリズムも良いです。


・京都 日本 1965年

カルティエ=ブレッソンが撮影した日本の写真で、一番好きな写真です。
背景の中央付近、左上から右下にかけてのお寺の柱?の線。
その手前の地面の左上から右下にかけての線。
走る女の子の背中、左上から右下にかけて走る線。
全体が斜めです。
斜め方向の木も印象的です。
このお寺、どこなんだろう?現物を見に行きたいです。


以上、世界各地の写真でした。

この他、ヨーロッパで撮影された写真の中から
ユーモアあふれる写真を何枚か選んでみました。


・アテネ ギリシャ 1953年

コピー&ペーストのような上側の2つの像。
コピー&ペーストのような下側の2人の人。


・リヴォルノ イタリア 1933年

カーテンの裏側で新聞を読む人。
対象の前後の位置関係のせいで、顔面を布でくくって
新聞を読んでいるように見えます(笑)。
初期のカルティエ=ブレッソンは、シュルレアリスム運動にも
影響されていたようです。
なんとなく、マグリットの「恋人たち」なんかを思い出したりします。


・ベルリンの壁 西ドイツ 1962年

これも撮影対象の前後位置関係が面白いです。
手前のブロック上側と、奥の壁の中央の線が同一線上にあるため
3人はどこに立っているのか一瞬迷います。


・マルティーグ フランス 1932年

これも前後位置関係ネタ。
少年の像の股間から、ぶらんと大きなモノがはみ出して・・・
いるのではなく(笑)、背後を歩く馬の頭部です。
左側の建物と広告のリズムも楽しい。


・トラファルガー広場 ジョージ6世戴冠式の日 ロンドン イギリス 1937年

戴冠式の日に国王を見守る群衆。
カルティエ=ブレッソンは国王の姿は撮影せず、
新聞紙の山の上で眠る人を撮影。
なんだかよく分りませんが、好きな写真です。



以上、ババッと貼り付けてみました。

カルティエ=ブレッソンをご存じない方で、
もし「面白い!」と思われる写真を見つけられた方は、
ぜひ図書館などで写真集を手に取ってみて頂きたいです。

今日現在、京都現代美術館(何必館)でも、カルティエ=ブレッソンの
特集展示が行われているようですので、ご興味のある方はぜひぜひ。


カルティエ=ブレッソンですが、実はどうしても貼りたいシリーズが
もう1つだけあります。
・・・・ということで、またしても続きます。