秘密曼陀羅十住心論 大章序その2 | 秘密曼荼羅十住心論 呪悔法の学び部屋:ブログ

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秘密曼荼羅十住心論にある呪悔(しゅかい)法(呪法と懺悔法(さんげほう))と、因縁とはなんぞや?と密教を勉強のする身として、書き残しておきます。
佐伯泉澄師を始め、野口裕教先生、田中僧正の元で、たくさんのご指導をいただいております。
南無大師遍照金剛 合掌

醍醐の通じて一切の病を治するがごとく、総持(真言)の妙薬もよく一切の重罪を消し、速やかに無明の珠机(しゅごつ:根源)を抜く。衆生の住宅に略して十処あり。一は地獄、二は餓鬼、三は謗生(畜生)、四は人宮、五は天宮、六は声聞宮、七は縁覚宮、八は菩薩宮、九は一道無為宮、十は秘密曼陀羅金剛界宮なり。
  衆生は狂迷して本宅を知らず、三趣(地獄・餓鬼・畜生の世界)に沈淪し四生に令(原文は足へん)跰(りょうびょう)す。
苦源を知らざれば還本に心なし。聖父(如来)はそのかくの如くなるを愍(あわれ)んで、その帰路を示す。帰路に径紆(きょうう:示す)あり。所乗に遅疾あり(帰る方法にも早い、遅いといろいろある)。  牛羊等の車は紆曲に逐(したが)って徐(ようや)く進んで、必ず三大無数劫を経(必ず途方もない時間が必要である)、  神通の宝輅(ほうろ:ここでは密教の乗り物)虚空を凌いで速かに飛んで、一生の間に必ず所詣に到る(必ず到達できる)。
人天の二宮(人間界と天界に住む者)は焼燬(しょうき:焼けてしまう運命)を免れずといえども、これを三趣(地獄・餓鬼・畜生の世界に住む者)に比すれば、楽にして苦にあらず。
    故に慈父(如来)は且(しばら)く人天乗(人間界・天上界の教え)を与えて、彼の極苦を救ふ。二乗の住処は、これ小城なりといえども、彼の生死に比すればすでに火宅(燃えている家)をでたり。  故に大覚(悟りを得た人)仮に羊鹿の車を説いてしばらく化城(仮の城)に息(やま)しむ。 菩薩権仏の二宮(第八の菩薩宮と第九の一道無為宮)はまた未だ究極の金剛界(最終の宮の秘密
曼陀羅金剛界宮)に到らずといえども、前の住処に比すれば大自在安楽無為なり。故に如来は大小の二牛(大乗と小乗の仏教)を与えて、その帰舎を示す。
   如上の二宮(第八の菩薩宮と第九の一道無為宮)は但し宅中の荒穢を芟薙して(家の中の雑草を刈り取っただけで)、猶し未だ地中の宝蔵を開かず、空しく大海の醎味(塩の味)を甞む(なめているだけ)、たれか竜宮の摩尼を獲ん(そんなことで竜宮の宝をわが物にはできない)。浅より深に到り、近より遠に迄(いた)るまで転妙転楽(しだいに良い方向にいく)なりというといえども蜃楼幻化の行宮(蜃気楼や幻の宮殿)にして、未だ三秘密・五相成身・四種曼茶・究竟真実の金剛心殿(第十最終の金剛堅固な宮殿)に入らず。   
彼の人天(人間界・天上界)より顕(第九の一道無為宮)の一乗に迄(いた)るまで、並びにこれ応化仏(人々の求めに応じて出現した仏)の心病を対治するの薬、他受尊(人々に悟りを与えんとする仏)の狂子(迷える子)を運載するの乗なり。宗に名づければすなわち七宗(倶舎・成実・三論・法相・律・華厳・天台)轡(原文はかねへん)を並べて和漢に馳せ、車を言えばすなわち三四轍(3台、4台と車)を雙(なら)べて東西に遊ぶ(七宗は車で言えば中国や日本では互いに競い合って駆け回っている)。
  各、己が戟(ほこ:古代の槍)を美(ほめ)て己が盾を忘れ、並びに他の疵(きず)発(あら)わして(欠点を表して)他の善をかくす。是非紛紜(ふんうん)して勝負不定なり。吠声(べいしょう:)の徒(勢のある猛獣の吼声の様である)、朋党相扇ぎ(仲間と呼応して)、雷缶の響(悪口を言いあう)、周比痏(い)そうす(うごめきあっている)。これすなわち方を設くる(本来の教え)の本懐にあらず、還りて毉王の雅意に乖(そむ)けり。