「金正恩氏の力量」は訪中で試される。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【朝鮮半島ウオッチ】



朝鮮半島情勢の動きが急になってきた。米韓、中朝の6カ国協議への駆け引きが活発化するなか、北朝鮮国内では金正日総書記の三男、正恩氏の権力基盤強化が顕著だ。世襲作業を担保するため、金総書記は核実験場やミサイル基地を訪問し、軍事的な強硬姿勢をアピールしている。中国政府も「金正恩氏の訪中」を何度も招請、これに韓国が注目している。関心の的はずばり「彼の力量だ」という。

  (久保田るり子)


3代目の「器」は


 早ければ4月中と予測されてきた金正恩氏の訪中だが、現在は上半期(6月まで)説が有力だ。

 韓国の情報機関、国家情報院(国情院)の元世勲院長は4月18日、韓国国会の情報委員会で中国政府の金正恩氏招請の有無を問われ、「北朝鮮を訪問した中国高官が口頭で招請した。(口頭であっても)公式の招請とみるべきだ」との見解を示した。国情院はまた、招請はすでに4回行われたとも報告した。

 情報機関が“世襲外交”についてここまで具体的に明示するのは異例だが、「第一には(中朝を牽制する)南北情報戦の一環。また、活発な情報活動を示して情報機関の重要性を誇示する内政上の狙いもある」(韓国の専門家)

 金正恩氏の中国訪問は昨年秋に朝鮮労働党代表者会で党中央委員、党中央軍事委副委員長に選出されて以来、取り沙汰されてきた懸案。予測されている訪中目的は主に3つだ。

(1)中国指導部との握手

 (2)経済支援獲得

 (3)核問題の協議

 特に(1)は事実上、北朝鮮経済の生命線を握っている中国の「世襲容認」を国際社会にアピールする意味が大きい。その際の中国側の相手とみられているのは昨年10月、中国共産党中央軍事委員会副主席に就任した習近平氏。金正恩氏は朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長の肩書だ。習近平氏は2012年秋の党大会で胡錦濤氏を後継する見通しだ。金正恩氏も同じ年に世襲を完成するとみられる。両氏の握手は次世代の中朝関係を象徴することになる。これを韓国が注視する。

 「シナリオ通りにしゃべったとしても人物は分かる」と韓国政府筋は「器に注目」と明かす。

 (2)の「経済支援獲得」は、北朝鮮側にとって死活的だ。12年、金日成生誕100周年に向けた「強盛大国の大門をひらく」ための経済支援の確約だからだ。中国側にとっては(3)の「核問題」が重要。「第3次核実験を含む核政策を確認することになるだろう」(同)と観測されている。


金正日総書記の軍視察の目的は?


 世襲に向けた金正日総書記の強硬姿勢を示唆する動きも次々に伝わっている。

 北朝鮮メディアは4月下旬、金正日総書記が「朝鮮人民軍264大連合部隊芸術宣伝隊を訪問した」と報道した(4月23日、朝鮮中央通信)。この部隊は核実験場のある咸鏡北道吉州郡豊渓里とミサイル基地のある咸鏡北道花台郡舞水端里を管轄している。

264大連合部隊は咸鏡北道鏡城郡に司令部のある第9軍団に所属。金正日総書記は06年5月末のテポドン発射の約1カ月前にも同部隊を訪問。09年4月のミサイル発射、5月の核実験前の同年2月末にも264大連合部隊を視察している。今回の訪問についても、次の核実験やミサイル発射など挑発行為の予兆ではないかとの指摘が出ているのだ。

 豊渓里にある核実験場で今年2月下旬に、米韓情報当局によって新しい複数の坑道が掘削されていることが確認されたと韓国の複数メディアが伝えた。新坑道掘削が実験準備であるのは疑いなく、国情院は今春以来、「いつ核実験を行うかは決定次第」とも分析している。

 北朝鮮は朝鮮人民軍創建記念日(4月25日)に際して金永春人民武力部長が「朝鮮半島はいつ戦争が起きるかわからない」「もし侵略戦争を挑発するなら侵略者らを一撃で撃滅、掃討」などと威嚇発言する一方、核問題(6カ国協議)や対米関係担当の金桂寛第一外務次官が4月中旬に訪中して、対話ポーズもみせている。

 硬軟両様の姿勢を並行させるのは北朝鮮外交の特徴だが、これに“核実験カード”も見え隠れさせているのは権力移行が佳境に入ったためとみられる。


速度調整か国内不安か…


 最高人民会議(4月7日)で金正恩氏への新しい権力付与はなかった。だが、正恩氏の金正日総書記への随行が確実に増えている。

 北朝鮮の国内向けメディアは父子の視察活動を特集番組として放映するなど、住民向けの顔見せも多くなり、平壌駐在の外交団が招かれる催しに金正恩氏が出席するようになった。

専門家はこう分析する。

 「現在は責任を負わせるより功績作りの時期だろう」(朝鮮半島専門家)「国内の不満勢力をあぶり出す作業が進んでいる。まだ英雄視できる環境は整っていないようだ」(韓国情報関係者)

 登場して6カ月。金正恩氏の「力量」がこれから試される。



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2010年10月、軍事パレードを観閲する金正恩氏(左)と李英鎬軍総参謀長=平壌(共同)





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