助けられる人の死を防げ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【主張】被災地医療。



地震と津波のすさまじい破壊を逃れた人たちが今、新たな生命の危機にさらされている。

 東日本大震災発生から1週間を過ぎ、長引く避難所生活で心身の不調を訴える人が急速に増加しているからだ。

 死者・行方不明者は1万7000人を超え、各地の避難所では約38万人が食、水、毛布といった基礎的生活物資も満足に行き渡らない状態で不安な日々を過ごしている。

 被災地には、都道府県の災害派遣医療チーム(DMAT)や「国境なき医師団」など医療関連の非政府組織(NGO)から災害医療の経験を持つ医師や看護師が派遣され、地元医療機関と協力して当面の対応に努めている。

 しかし、避難所では不安や疲労の蓄積、厳しい寒さなどで体調を崩すお年寄りや子供が増え、風邪をこじらせたり、脱水症にかかったりするリスクも高い。慢性疾患を抱えた人たちは必要な治療薬すら手に入れられないでいる。

 重症患者については近隣の県や東京の医療機関に移送する手段もとられている。患者を診て移送が必要かどうかを判断する「トリアージ」の作業には災害医療の専門家だけでなく、一般の内科医や小児科医の応援も必要だ。

 ただし、現状は被災を免れた医療機関でも医薬品が入手できず、患者受け入れを制限する例が少なくない。緊急処置が必要な患者の移送や医薬品、資材の供給には現地に乗り込むだけでなく、輸送手段の確保や後方での支援が重要であることは認識しておきたい。

 津波で医療基盤が壊滅的打撃を受けた地域もある。かろうじて残った医療機関の医師や看護師、保健師などのスタッフは疲労困憊(こんぱい)の状態だ。さらに、感染症の予防と治療、被災者の心理ケアなど、時間の経過に伴って医療需要の幅は広がっていく。

 こうした変化に対応するには、地元医療機関がどれだけ稼働可能かを把握して、応援部隊の役割分担を決めていく調整機能が不可欠だ。各県の災害医療担当者がその機能を担う。

 災害派遣医療チームや災害医療の調整機能は平成7年の阪神大震災をきっかけに整備されてきた。今回の被害は災害医療体制の想定を超えたものとはいえ、日本の医療基盤の蓄積は大きい。助けられる人の死を防ぐために、いまこそ真価を発揮するときである。