現場の頑張りを支えたい。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【主張】福島原発事故。



想像を絶する修羅場である。大津波で機器への電源を断たれ、水素爆発や放射能漏れも起きた東京電力福島第1原子力発電所では、事故を押さえ込むために不眠不休の奮闘が続いている。

 「飯が食えない」「交代要員もいない」。苦闘のメールが現場に踏みとどまり、原発事故に立ち向かっている最前線から届く。

 よく頑張ってくれている。すごい人たちだ。発電所員や協力企業の社員、そして自衛隊員、機動隊員、消防隊員などに心から激励と声援を送りたい。

 事故発生から1週間が過ぎたが、終息の兆しはまだ見えない。複数の原子炉でウラン燃料が損傷し、本格的な炉心溶融も心配されている。最後の砦(とりで)の格納容器が傷んだ可能性もある。

 3、4号機では燃料貯蔵プールの水も沸騰して水位が下がった。このままでは燃料を収めた金属管が崩れて、内部のウラン燃料が外気にさらされる。原子炉建屋の天井や壁は失われているので、放射性物質が風に乗って周辺地域に広がってしまう。

 17日から始まった散水や放水はプールに海水を注ぎ、発熱しているウラン燃料を冷やすための対策だ。1、2、3号機では、原子炉内に海水を注入し、内部の燃料を冷却する作業が続いている。

 こうした努力の現場を思い描ける人はいるだろうか。壊れた原子炉建屋は50メートルほどの高さがある。運転員が働く中央制御室は、原子炉に近い。巨大施設に窓はない。真っ暗闇だ。エレベーターも使えない。上下階への移動で足の筋肉がけいれんする。

 内部の放射線レベルは高い。不気味な余震が繰り返し襲う。原子炉の状態を示す計器類も不調だ。仮眠は連日、1時間しか取れない。東京への連絡メールは、空腹と脱水症状を伝えている。

 事故に立ち向かっている彼らには休息と食料が必要だ。そしてそれ以上に国民の理解と応援が気力の糧になる。言うまでもなく、この災害規模を予見できず、重大な事故を招いた東京電力の責任は大きい。しかし、罵(ののし)るだけなら首相にもできる。

 目下の急務は原子炉の冷却だ。政府は現場の人々が最大限の力を発揮できるよう総力で支援しなければならない。国内外の人材と技術を投入したい。日本の将来がこの戦いにかかっている。