ロマン(国書刊行会):ウラジーミル・ソローキン | 夜の旅と朝の夢

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【ロシア文学の深みを覗く】
第2回:『ロマン』

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今回は、前回に引き続きウラジーミル・ソローキン(1955-)の本を紹介します。前回は、短編集『愛』でしたが、今回は長編小説の『ロマン』です。全部で2巻ありますが、上には1巻目だけ貼っておきます。

突然ですが、僕は失敗してしまいました。そして、この失敗は取り返しがつきません。というのは、僕はソローキンの本を『愛』、『ロマン』の順で読んだのですが、『ロマン』の方を先に読むべきでした。

『愛』の各短編と『ロマン』は非常によく似ています。『愛』は『ロマン』の短編版であり、『ロマン』は『愛』の長編版です。

根拠はありませんが、おそらく『ロマン』は、短編小説という実験を重ねて得た成果を集大成的な意味を込めて長編にしたものだと思われます。とすれば、『愛』から読んでもいい気もしますが、さにあらず。『ロマン』の凄みを真に感じるためには、予備知識はできるだけない方がいい。『愛』を読んだ後では、凄みは半減してしまうのです。

では、何が凄いか? しかし、これはネタバレなくしては語れないし、ネタバレしては申し訳がない。ということで書けない。チョーカキタイのだが、書けないのだ。

多分、ネットで検索すれば、直ぐに分かってしまうだろうし、そもそもカバーに書かれた粗筋にもネタバレが含まれている。だけど、僕の失敗を繰り返さず、予備知識なしでいきなり読んで欲しい。僕の『愛』のブログ記事も読まないで欲しいのです。

ということで、今回は当たり障りのない程度の粗筋だけ書いて終わりにしましょう。

時代ははっきりと書かれていませんが、おそらく19世紀ロシア。弁護士をしていたロマンは、都会暮らしに嫌気がさし、画家として生きていくため、故郷の村に帰る。

ロマンの父母は既に亡くなっているが、故郷には叔父と叔母が暮らしていた。ロマンは帰郷すると、叔父や叔母、そして村の人々から歓迎を受ける。ロマンもまた、村の素朴な人々に共感と愛を覚えるのであった。

村での生活は笑いと慈愛に満ちた素晴らしいものであったが、一つだけ気がかりなのは、幼馴染でかつての恋人だったゾーヤのことだ。都会暮らしの間、ロマンは何度もゾーヤに手紙を出していたのだが、返事は一度も来なかった。

そんなロマンは、ヴォエヴォーディンという男と一緒にいるゾーヤと突然再会するのであった。

最初の方はこんな感じで、ツルゲーネフ的な美しい田園小説を彷彿とさせますね。まあ、凄みはその後にきますが、ここでは立ち入りません。繰り返しますが、情報をなるべくシャットアウトして読んでみて欲しい傑作です。

さて次回からは、現代ロシア文学を離れ、一旦過去に戻って、そこから現代までのロシア文学の足跡を追えればいいかなと思っています。といってもごくごく簡単にですけどね。

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