小説フランス革命6 フイヤン派の野望 | 雑読日記

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読んだ本の感想など

この記事の続きです。
→ 小説フランス革命5 王の逃亡

佐藤賢一「小説フランス革命」第6巻です。
副題はフイヤン派の野望。

フイヤン派、というのは聞きなれませんが
次巻の副題に予定されている「ジロンド派の興亡」または
第9巻「ジャコバン派の独裁」に現れる派閥の名前ならば、
世界史の授業で習った気がします。

本巻はジロンド派とジャコバン派という、フランス革命期の
代表的な左翼党派「ジャコバン・クラブ」における対立の
前段階として、保守ブルジョア勢力であるフイヤン派の台頭を描きます。

とはいえ、フイヤン派ももとはジャコバン・クラブだそうで、
この辺りの党派分裂は、なかなか面白いところです。

すなわち、もともと全国三部会から発展した、
立憲を目的とする国民議会では、大雑把に言って
第一身分(カトリック僧)と第二身分(貴族)が保守層であり、
第三身分(平民)が革新派という色分けでした。

しかし、憲法制定後に改めて選挙が行われ、そこで召集された
「立法議会」では、選挙がいわゆる制限選挙だったこともあり
同じ平民のなかでもブルジョア層が保守し、
無産階級層つまり一般労働者が革新と、お色直しが行われます。

政治体制の如何にかかわらず、既得権を手に入れれば
即保守として振舞う姿を見ると、これが人間の本質なのかなと
思わずにはいられません。

一方、本書では熱烈な愛国者(最近はこの言葉は保守にしか
使われないような感じで、なんとも違和感がありますが)として
描かれるジャコバン派の雄・マクシミリアン・ロベスピエールが
まだ何もしていませんが、どうにもこうにも痛ましい。

それというのも、ジャコバン派はこの後恐怖政治を布くのが
歴史を見れば分かりますので、フランスを愛し、市民を愛した
この若者が没落してゆくさまを、これからしばらく読むことになるからです。

この記事へ続きます。
→ 小説フランス革命7 ジロンド派の興亡
フイヤン派の野望 小説フランス革命6 (小説フランス革命 6)/佐藤 賢一
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