日記 | 誰がために金は減る

誰がために金は減る

とある人生の一端

昔使っていた古い外付けHDDの中から、インターネットエクスプローラーのお気に入りフォルダが見付かりました。

私がPCとインターネットに触れ始めた頃に、ちょっとした個人サイトブームがありまして、私もとあるマンガ(アニメ)のファンサイトを作り、そこの管理人をやっていました。“サイトの管理人”という響きがもうすでに懐かしい。
その当時に仲良くさせて頂いていた方々や、一方的にただ覗かせて頂いていたサイトのブックマークがわんさか出てきたわけです。

残念なことに今はリンク切れになってしまったものばかりでしたが、懐かしい名前の数々に当時の記憶が蘇りました。
今はブログやTwitterなどを細々とやっておりますけれど、当時は私史上最もネットでの交流が盛んな時期で、趣味を通して色んな方々とお話させてもらいました。思えば優しい人たちに巡り会えたものです。


スマホを持って初めてネットが身近になったという方は、ご存知ないかもしれませんが、私が仲良くさせて頂いたサイトは、基本的に絵や小説といった二次創作をメインコンテンツとして、それとは別に“掲示板”や“チャット”といった交流の場が設けられていました。
某巨大掲示板をイメージしないで下さい。それより遥かに小規模で素朴です。そして礼儀正しい方がほとんどでした。たまにヤンチャな人も現れましたけれど。

人付き合いが苦手で、自分からはなかなか話し掛けられない臆病な私のような者でも、その輪に入っていくのは難しくなかったから、それはもう相当に温かい空間だったのだと思います。
さすがに何を話したのかは覚えていませんが、何となく趣味の話より、無関係な雑談の方が多かった気がします。趣味は話し掛けるきっかけに過ぎません。どうでもいい話ができる場でもありました。

もちろん“掲示板”や“チャット”で文字による交流ではあるものの、それでも楽しい会話の場だったと思っています。
一部の方とは電話でお話したり、直接会ったりもしました。今ではちょっと考えられませんが、本当に当時の私はあの空間の居心地が良かったのだと、今になって気付かされますよ。


もう1つ私が好きな定番のコンテンツがありました。それが“日記”です。
ブログやNoteの前身と言っていいと思います。何なら本気で毎日書いている人はほとんどいなかったはずですが“日記”と呼んでいました。まだ「ブログ」という言葉すら浸透していない頃でしたから。

毒にも薬にもならない日々の出来事から、身近な人の死まで、多種多様な“日記”がありました。
誤解を恐れずに言えば、同じ人がある日には美味しいお菓子、またある日には重病といった温度差が炎と氷くらい異なる話題を出していることが興味深くて、メインコンテンツ以上に真剣に目を通していた気がします。
人を楽しませるためではなく、人生を綴っていたのでしょうね。だって“日記”ってそういうものですもの。

みんな文章が上手くて、凡夫な私は羨ましかったです。
文章が上手いと言うのも、ちょっと違うかもしれません。時折不文律になっても言葉のリズムが読んでいて心地良かった。そんな文章でした。

私も当時は少し込み入った話題を“日記”にしたためていたはずですけれど、今はもう照れが出ちゃうし、申し訳ない気持ちになってダメですね。
当時のネットはまだ限られた人たちの空間だったことが大きいと思うのですよ。ネットに載せるということは、全世界に振りまいていると同義ですが、見る人は少数派だって確信があったから、多少赤裸々にもなれたのでしょう。だから今は無理。
たまーに、思いの丈をぶちまけたい日もありますけれど、グッと我慢しています。


そんなことをふと思い出すHDDの中身でした。
あの頃仲良くして頂いた方々とはすっかり疎遠になってしまいましたが、元気かなー、元気だといいなーと、ささやかな祈りを捧げています。

あー、また趣味の話ができる人と出会いたいなあ。