Ghost of Tsushima | 誰がために金は減る

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とある人生の一端

 

本作は元寇をモチーフとしたアクションアドベンチャーゲームです。
日本はモンゴル帝国に2度侵攻されていますけれど、どちらも結果だけ見れば日本の勝利で幕を閉じています。ですが、相手が自滅するまで猛攻を耐え凌いだと言う方が近く、特に1度目の戦いに当たる文永の役において、対馬などは壊滅状態に陥ったと聞きます。そんな戦いを描いているのが『Ghost of Tsushima』です。

日本史に疎いとよく分からんという人もいるかもしれませんが、史実に基づいたゲームとは言い難いですし、おそらく正確に歴史をなぞることより創作に重点を置いていることでしょうから、歴史に詳しい必要はありません。
大まかには、世界最大勢力のモンゴル帝国が、小さな国・日本を侵略しようとした戦いの一部を描いている、くらいの認識で十分です。
なお、興味があれば“モンゴル帝国”で軽くググってみると楽しいですよ。屈服した国の多いこと。こんなところに攻められて最後まで耐えた日本が異常に思えます。
 

 

この作品を知った時、まず最初に気になったのは難易度でした。オープンワールドのアクションアドベンチャーと言えば、主力は銃火器であることがほとんどですが、本作のメイン武器は刀です。つまり近接戦闘縛りを強いられていると言っていいでしょう。(近接武器以外も勿論ありますが、基本的には刀を振るいます)
自分の好みと拙いゲームスキルから、いわゆる死にゲーと呼ばれるような高難度のゲームはやりたくないのですが、『Ghost of Tsushima』はその辺りどうなの?というのが一向に見えてこなかったため、兎に角やってみて判断することにしました。

まだまだ前半戦ではありますけれど、キャラや武器防具を鍛えれば、ちゃんと強くなれるゲームデザインで、思うような動きができないのは相変わらずながら、ギリギリの戦いを強いられた最序盤に比べれば遥かに楽な戦いができるようになりました。メインストーリーは止めて、ひたすらサブクエや強化・収集要素をこなしていくと、通常の戦闘ではそうそう負けなくなります。
後半でまた一段と難しくなる心配は尽きないものの、この調子で進んでくれれば、クリアが絶望的な難易度とはならないはず。というか、そうであることを願っています。

兎にも角にも、興味はあっても難易度が高過ぎないか心配という方は、恐れずに買ってしまっていいと思います。
ゲームメディアやゲームが上手い人の「イージーモードがあるから大丈夫」は、しばしば大丈夫じゃないことがありますけれど、ワタシは正真正銘の下手くそですので、下手くその気持ちは解るつもりです。このゲームのイージーモードは大丈夫です。(ちゃんと鍛えながらゲームを進めれば)
 

 

色んな和風モチーフのゲームを思い浮かべると思うのですが、ワタシは『Horizon Zero Dawn』に近いと感じました。(ワタシが知る限りでは、という話です)
あちらは弓がメイン武器、近接武器はサブなので、本作とは真逆ですけれど、大まかなゲームデザインは似ています。境井仁も手掛かりを頼りに追跡しますし、クライミングもします。そして弓と暗殺が強いのも同じ。

戦闘が安定して勝てるようになった頃にはクライミングの方が難しく、面倒臭くなってくるところも似ています。
ちなみに、苦戦した頻度で言えば、今のところは『Horizon Zero Dawn』の方が苦労した印象です。
 

 

ストーリーは蒙古に惨敗を喫した対馬勢の数少ない生き残り・境井仁が仲間を集め、囚われの領主を救うために再び立ち上がる、というのが序盤のお話。
非常に分かりやすいですよね。悪く言えば、捻りのないよくある話とも言えてしまうのですが、第一部から二部へとつながる展開を見る限り、そう単純明快で綺麗なストーリーにはならなそうな気配を感じていまして、今後が楽しみです。

武士道を重んじ、敵と正々堂々と戦いたい境井仁と、それを許さない状況が彼の葛藤を生んでいて、対馬を、民を守るためには手段を選んではいられないと割り切っているのに、当の対馬の人々から「侍の戦い方ではない」と恐怖を抱かれてしまう虚しさを漂わせています。

真の侍像と言うより、フィクションの世界に生きる理想の侍像を投影しているように見えますけれど、それが全く作品の魅力を損なっていないどころか、この人、めちゃくちゃかっこいいなと惚れ惚れしてしまいますね。
一対一のボス戦、いつでも任意で仕掛けられる一騎討ち、ゲームには影響しないけれどいちいち美しい所作など、これでもかとかっこいい侍が描かれています。

 

 

コントラストが高いどころか、最早ビビットと表現した方が正確なのでは思うほど強烈な配色で彩られた背景が非常に美しく、この背景一つとってみても、よりリアルに近付けることより、心の中のリアルを重視していることが伝わってきます。
日本人としては「こんなに綺麗に日本を描いてくれてありがとう」という言葉しかありませんよ。

思えば、日本を舞台にしたオープンワールドのゲームはなかなかお目に掛かれません。この規模、このクオリティで作られたゲームに限れば、現状唯一無二でしょう。
もう感謝ですよね。こういうゲームをこそ、日本人の手で作ってほしかった・・・などと野暮な考えも毛頭ありません。ただただ感謝です。
 

 

強くなれるのが嬉しくてサブクエや敵拠点の制圧ばかり進めて、メインストーリーが一向に進みません。
唯一、神社の参拝だけが面倒と思ってしまいますが、あくまでもやり込み要素の一つで、必ずしも強力な報酬がもらえるわけでもないので、やるもやらないもプレイヤー次第でしょう。

確実に身になり、強くなれる要素はマップを解放していけば自ずと位置が分かる設計になっていますので、地道に取り組んでいれば、知らなくて取り逃したということはほとんどないと思います。
強くさえなれれば、勝てない敵はいない・・・はずと信じて、境井仁の信じる武士道を共に歩みたいです。