結月式シネマセクション(24)
結月でございます。
今朝はね、ウディ・アレンの『ギター弾きの恋』を観てたんだけどね。これもいい映画で、1930年代の雰囲気がすごくよくてね。
あの時代のキャバレーというのは、衣装や装飾、照明もアール・デコでね。今と違ってとてもヒューマンな感じがする。
あの時代を描いた映画はたくさんあるけれど、例えばチャン・イーモウの『上海ルージュ』ね。1930年代の上海は魅力的でね。すごくヤバい感じがいい。でも、同時にアール・デコで美的なのね。
単にヤバいだけっていうのは良くないわね。ところがね、ヤバさに美的なものが加わると、これがとってつもない魅力を発揮するものなの。ヤバさっていうのはスパイスでね。エキサイトするものってどこかヤバさがありますよ。ドキドキするよね。
まあ、今でも上海は魅力的な街ですよ。とても自由な空気があるしね。そして、ヤバさだってあっておもしろいね。上海はとにかく色っぽい街ですよ。北京は色っぽくないけどね。
『ギター弾きの恋』は天才ギタリストの話だけど、口の利けない唖の女との恋をしてしまうんだけどね。あれを観ていてね、ああ、この映画はきっと『ペーパームーン』だって思った。
主人公が三日月の模型に乗って登場するっていうシーンがあるのね。今では三日月にひとが座っているっていうのは珍しくないけど、有名になったのは『ペーパームーン』という映画じゃないかな。
これはモノクロフィルムで撮った映画だけど、なかなかいい映画でね。詐欺師の男と少女の話なんだけど、だから、ウディ・アレンもあれを意識したんだと思うよね。
口の利けない女の話では、『愛は静けさの中に』というまあまあいい映画があったね。随分昔だけど、ロードショーされて映画館に観に行きましたけどね。
ウィリアム・ハートが主演でね。きれいな映画だった。耳の聞こえない若い女に、バッハの無伴奏か何かを体で表現しようとするんだけど、それがうまくいかないのね。
ウィリアム・ハートは名優でね。若い頃の映画だけど、『蜘蛛女のキス』はすごくよかったなぁ。
それから、『偶然の旅行者』。これも昔、映画館に観に行って、家にもビデオで持っているけど、シンプルでキレイな映画でね。ちょっとしたいい映画ですよ。
ウディ・アレンの作品では、『アリス』にも出ている。あまり重要な役じゃないけどね。
そういえば黒澤明の『隠し砦の三悪人』で、雪姫の上原美佐が敵を欺くために、口の利けない女になりすますという話もあったわね。
『ギター弾きの恋』では、ジャズメンたちが集まってアパートに集まって演奏して、食事するなんてシーンがあるけど、貧乏人が集まって食事するっていいね。わたしは正直言って、高級なところで、気取って食べるご飯というのは好きじゃない。
どちらかというと、和民みたいなところとか、ガードレール下とか、狭いアパートに集まって、鍋をしたり、ポテトチップス食べながらとか、宅配ピザとかで、みんなでお酒を飲むのが好きかな。
北京のスラム街でちょっと滞在していたときは、家の外にあるガスコンロで料理をして廃材で作ったようなテーブルでみんなでご飯を食べるんだけど、あれは楽しかったな。気兼ねないからね。
でもね、世の中にはそういうのが絶対イヤっていうひともいる。それはそれでいいんだけどね。
しかし、わたしは日本人にそういうのがイヤとか言われるとちょっと腹が立つんですよ。だって、日本っていう国は、貴族社会がない国だからね。基本的にみんな一緒で、日本で金持ちとか、ある程度の水準のレストランじゃイヤっていうひとだって、世界で見れば小金持ちってところなんです。
ヨーロッパみたいに貴族社会の伝統があって、その貴族出身で、根っからの貴族っていうひとが、そんな安っぽいところで食べられないっていうのは理解できる。しかし、日本人なんて、金を持っていてもね、所詮成金なんです。伝統的金持ちじゃなわけよ。
そんな伝統のない小金持ち程度に「ちょっとわたしはそういうところは…」なんて言われたくない。
だから、女性誌なんかで言われる「セレブ」とか笑っちゃう。あんなのただの成金だって。本当のセレブってヨーロッパを見るとわかるけど、あんなんじゃないって。
つまり、日本人のセレブ気取りって、たかだか、東京の多少有名なレストランでご飯食べてリッチだって思っている水準なわけ。でも、それで自分たちにステイタスがあるって思っているひとって結構いる。
だから、外食では和民というのは、実に日本的な水準でいいと思うのよね。そう思うから、わたしは和民ばかり行くんだけど。
ともかく、わたしは安っぽいところで、ちょっと柄の悪いところのほうが好きね。
そういえば、ウディ・アレンの『おいしい生活』で、クッキーのフランチャイズが大当たりして、大金持ちになった夫婦が毎日フランス料理ばかり食べる生活になっちゃうんだけど、そしたら夫役のウディが、「チーズバーガーを食べたい!」ってね。
金持ちの生活なんだけど、昔の仲間と集まって煙草の煙ムンムンなところでポーカーやったり、中華料理食べたり、ピザ食べながら家で映画観たりして、元の柄の悪い生活を堪能するの。
あの気持ち、わかるなってね。ウディ・アレンというのは、高級と場末と両方知っているわけ。それで、その両方の良さを知っているのね。だから、映画の中で、よくシャトー・オーブリオンが出てきたりしますよ。
でも、ウディ・アレンは、高級なものの本当の良さをわかっていないのに、セレブ気取りするのことに対しては痛烈に描くのね。だから、わたしはウディ・アレンが大好きなんだけどね。
よくね、ブログなんかで、昨日は某レストランでドンペリ飲みましたとか、有名なお寿司食べましたとか、ケータイの写真入りで報告しているひとがいるけど、ああいうの見ると、ぶん殴りたくなるよね。
ならない? わたしはなるけど。
ドンペリ飲んで、わざわざブログで報告している時点で、ヨーロッパから馬鹿にされる極東アジア人なんだって。ただの成金で、文化がないってね。
そもそもマジな金持ちは、ドンペリくらいフツーだから、わざわざ写真なんか撮らないって。
ところで、わたしは守備範囲が狭いって言うのはよくないと思うのね。
つまり、安っぽいものだけだといけないし、高級なものだけっていうのもいけないと思う。なぜなら、社会にはいろいろなひとがいるからね。安っぽくてそんな汚いところなんかでご飯食べるのイヤって思っていたら、そういうのが平気なひととは付き合えないし、安っぽいものばかりだと、高級なところで勝負するチャンスがなくなるでしょう?
守備範囲が差別なく広いほうがいろいろなひとと出会えるからね。それに範囲が狭いと、そこでだけの常識しか身につかないから見識が狭くなるんですよ。
わたしがいつも言う「若い人は外国を観ておけ」っていうのは同じ理由なわけです。見識が狭いまま年を取って、中年を過ぎるとね、もうこればかりは煮ても焼いても食えないですよ。もう何をどう言っても無理。
まあ、今の日本企業が世界で出遅れまくっているのは、経営者がそんなひとが多いからなんですよ。
ともかく、世の中にはいろんな国があり、いろんな社会があり、いろんなひとがいるわけなんだけど、つまりはね、
「万物は流転する」(by ヘラクレイトス)
~ウーマンウエーブで連載“オンナがわからない男の七不思議”~
~結月美妃の着付け入門教室 受講者受付中!~
~結美堂 着付けとキモノの話 “お着物、着ましょ!”~
~結月美妃の“ミッドナイトアドバイス”~
今朝はね、ウディ・アレンの『ギター弾きの恋』を観てたんだけどね。これもいい映画で、1930年代の雰囲気がすごくよくてね。
あの時代のキャバレーというのは、衣装や装飾、照明もアール・デコでね。今と違ってとてもヒューマンな感じがする。
あの時代を描いた映画はたくさんあるけれど、例えばチャン・イーモウの『上海ルージュ』ね。1930年代の上海は魅力的でね。すごくヤバい感じがいい。でも、同時にアール・デコで美的なのね。
単にヤバいだけっていうのは良くないわね。ところがね、ヤバさに美的なものが加わると、これがとってつもない魅力を発揮するものなの。ヤバさっていうのはスパイスでね。エキサイトするものってどこかヤバさがありますよ。ドキドキするよね。
まあ、今でも上海は魅力的な街ですよ。とても自由な空気があるしね。そして、ヤバさだってあっておもしろいね。上海はとにかく色っぽい街ですよ。北京は色っぽくないけどね。
『ギター弾きの恋』は天才ギタリストの話だけど、口の利けない唖の女との恋をしてしまうんだけどね。あれを観ていてね、ああ、この映画はきっと『ペーパームーン』だって思った。
主人公が三日月の模型に乗って登場するっていうシーンがあるのね。今では三日月にひとが座っているっていうのは珍しくないけど、有名になったのは『ペーパームーン』という映画じゃないかな。
これはモノクロフィルムで撮った映画だけど、なかなかいい映画でね。詐欺師の男と少女の話なんだけど、だから、ウディ・アレンもあれを意識したんだと思うよね。
口の利けない女の話では、『愛は静けさの中に』というまあまあいい映画があったね。随分昔だけど、ロードショーされて映画館に観に行きましたけどね。
ウィリアム・ハートが主演でね。きれいな映画だった。耳の聞こえない若い女に、バッハの無伴奏か何かを体で表現しようとするんだけど、それがうまくいかないのね。
ウィリアム・ハートは名優でね。若い頃の映画だけど、『蜘蛛女のキス』はすごくよかったなぁ。
それから、『偶然の旅行者』。これも昔、映画館に観に行って、家にもビデオで持っているけど、シンプルでキレイな映画でね。ちょっとしたいい映画ですよ。
ウディ・アレンの作品では、『アリス』にも出ている。あまり重要な役じゃないけどね。
そういえば黒澤明の『隠し砦の三悪人』で、雪姫の上原美佐が敵を欺くために、口の利けない女になりすますという話もあったわね。
『ギター弾きの恋』では、ジャズメンたちが集まってアパートに集まって演奏して、食事するなんてシーンがあるけど、貧乏人が集まって食事するっていいね。わたしは正直言って、高級なところで、気取って食べるご飯というのは好きじゃない。
どちらかというと、和民みたいなところとか、ガードレール下とか、狭いアパートに集まって、鍋をしたり、ポテトチップス食べながらとか、宅配ピザとかで、みんなでお酒を飲むのが好きかな。
北京のスラム街でちょっと滞在していたときは、家の外にあるガスコンロで料理をして廃材で作ったようなテーブルでみんなでご飯を食べるんだけど、あれは楽しかったな。気兼ねないからね。
でもね、世の中にはそういうのが絶対イヤっていうひともいる。それはそれでいいんだけどね。
しかし、わたしは日本人にそういうのがイヤとか言われるとちょっと腹が立つんですよ。だって、日本っていう国は、貴族社会がない国だからね。基本的にみんな一緒で、日本で金持ちとか、ある程度の水準のレストランじゃイヤっていうひとだって、世界で見れば小金持ちってところなんです。
ヨーロッパみたいに貴族社会の伝統があって、その貴族出身で、根っからの貴族っていうひとが、そんな安っぽいところで食べられないっていうのは理解できる。しかし、日本人なんて、金を持っていてもね、所詮成金なんです。伝統的金持ちじゃなわけよ。
そんな伝統のない小金持ち程度に「ちょっとわたしはそういうところは…」なんて言われたくない。
だから、女性誌なんかで言われる「セレブ」とか笑っちゃう。あんなのただの成金だって。本当のセレブってヨーロッパを見るとわかるけど、あんなんじゃないって。
つまり、日本人のセレブ気取りって、たかだか、東京の多少有名なレストランでご飯食べてリッチだって思っている水準なわけ。でも、それで自分たちにステイタスがあるって思っているひとって結構いる。
だから、外食では和民というのは、実に日本的な水準でいいと思うのよね。そう思うから、わたしは和民ばかり行くんだけど。
ともかく、わたしは安っぽいところで、ちょっと柄の悪いところのほうが好きね。
そういえば、ウディ・アレンの『おいしい生活』で、クッキーのフランチャイズが大当たりして、大金持ちになった夫婦が毎日フランス料理ばかり食べる生活になっちゃうんだけど、そしたら夫役のウディが、「チーズバーガーを食べたい!」ってね。
金持ちの生活なんだけど、昔の仲間と集まって煙草の煙ムンムンなところでポーカーやったり、中華料理食べたり、ピザ食べながら家で映画観たりして、元の柄の悪い生活を堪能するの。
あの気持ち、わかるなってね。ウディ・アレンというのは、高級と場末と両方知っているわけ。それで、その両方の良さを知っているのね。だから、映画の中で、よくシャトー・オーブリオンが出てきたりしますよ。
でも、ウディ・アレンは、高級なものの本当の良さをわかっていないのに、セレブ気取りするのことに対しては痛烈に描くのね。だから、わたしはウディ・アレンが大好きなんだけどね。
よくね、ブログなんかで、昨日は某レストランでドンペリ飲みましたとか、有名なお寿司食べましたとか、ケータイの写真入りで報告しているひとがいるけど、ああいうの見ると、ぶん殴りたくなるよね。
ならない? わたしはなるけど。
ドンペリ飲んで、わざわざブログで報告している時点で、ヨーロッパから馬鹿にされる極東アジア人なんだって。ただの成金で、文化がないってね。
そもそもマジな金持ちは、ドンペリくらいフツーだから、わざわざ写真なんか撮らないって。
ところで、わたしは守備範囲が狭いって言うのはよくないと思うのね。
つまり、安っぽいものだけだといけないし、高級なものだけっていうのもいけないと思う。なぜなら、社会にはいろいろなひとがいるからね。安っぽくてそんな汚いところなんかでご飯食べるのイヤって思っていたら、そういうのが平気なひととは付き合えないし、安っぽいものばかりだと、高級なところで勝負するチャンスがなくなるでしょう?
守備範囲が差別なく広いほうがいろいろなひとと出会えるからね。それに範囲が狭いと、そこでだけの常識しか身につかないから見識が狭くなるんですよ。
わたしがいつも言う「若い人は外国を観ておけ」っていうのは同じ理由なわけです。見識が狭いまま年を取って、中年を過ぎるとね、もうこればかりは煮ても焼いても食えないですよ。もう何をどう言っても無理。
まあ、今の日本企業が世界で出遅れまくっているのは、経営者がそんなひとが多いからなんですよ。
ともかく、世の中にはいろんな国があり、いろんな社会があり、いろんなひとがいるわけなんだけど、つまりはね、
「万物は流転する」(by ヘラクレイトス)
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