フェイジョア苗の販売にあたって | ゆたか農園のブログ

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新規就農した夫婦のブログです。「ゆたか」は妻、夫、息子の名前の頭文字を1文字ずつ取って名付けました。「ゆたか」にはrich、wealthy、fertileといった意味だけでなく、家族3人で力を合わせて頑張ろうという想いが込められています。

2023年9月5日現在、日本で種苗法登録品種(PVP)になっているフェイジョアの品種はなく、唯一「エディーブッシュ」という品種が「出願中」となっています(出願番号35733)。どんな品種か気になるところですが、「作物区分」が「果樹」ではなく「観賞樹」となっていますので、どうやら収穫目的というよりは観賞目的の品種みたいです。「出願中」であってもPVP品種と同様に苗の増殖などには注意が必要です。ただ、「エディーブッシュ」なる品種の苗はまだ販売されていませんし、私も持っていませんので、うっかり出願中の品種を殖やしてしまう心配はないと言えます。

 

それ以外のフェイジョアの品種については、苗の増殖、販売は一切問題ないと理解していますが、私の考えがもし間違っていたら大変です。そこで念のため農林水産省に確認してみました。対応してくださったのは「輸出・国際局知的財産課」です。その結果、PVP出願中の1品種(エディーブッシュ)を除き、フェイジョア苗の増殖、販売は法的には一切問題ないとの見解をいただきいました。「法」ですから、国際法の1つである国際条約も含まれると、いちおう国際関係論を専攻していた私は解釈しました(担当者さんがそこまで含意して回答くださったのか分かりませんが)。たとえ海外でPVP登録されている品種でも、日本で登録されていなければ日本国内で権利行使をすることはできないというお答えでした。私が苗を買った種苗会社との間で、何か条件付きの栽培契約を結んだわけでもありませんし、私法の原則(特に所有権絶対の原則)からしてもこれは至極当然なご回答です。

 

念には念のため、関西のある地方でこれからポポーとフェイジョアの栽培を本格的に始めようとしている私の知人(以下、Uさん)にも相談してみました。関西の有名国立大学の大学院で植物の光合成について研究をされた後、ご実家の農業を継いで野菜や果樹を栽培している人です。昨年の夏にわざわざ泊りがけでブルーベリー狩りに来てくださり、ブルーベリー園なら関西にもたくさんあるでしょうにと、Uさんに話を伺ったら、これからポポーやフェイジョアの栽培もやりたいとのこと。私たちの畑を見学がてらのご来園でした。すでに何本か栽培しているそうですが、この秋には私が殖やしたフェイジョアの挿し木苗も買っていただけることになっています。Uさんも私と同じ見解でしたが、Uさんが住む県の農業試験場で新品種の開発に携わっているお知り合いがいるというので、その方にも確認していただいたところ、ルール上は問題ないとの回答だったそうです。やはり海外のPVP品種であっても日本でPVPになっているかどうかがポイントだということです。私が農水省からいただいたご回答とまったく同じでした。

 

「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)」という条約があって、日本も加盟しています。ただ、農水省によるとこの条約は「新しく育成された植物品種を各国が共通の基本的原則に従って保護することにより、優れた品種の開発、流通を促進し、もって農業の発展に寄与することを目的とする」とありますので、共通のルールによって新品種の保護ができるよう加盟国に対して法整備を求めるものであると理解しました。つまり、ある加盟国でPVP登録されたからといって、そのまま無条件でほかの加盟国でも保護の対象になるわけではないと。その証拠に、同じく農水省のサイトにはPVP登録の出願をする人に対し、「海外であなたの品種を守るには、国内出願に合わせ、速やかに海外にも出願することが重要」と注意喚起がされています。もし、海外でPVP登録されている品種だから日本でも増殖や販売はNGだと言う人がいたら、その人はすべての国のPVP登録品種を調べ尽くしたうえで、100%登録されていないと確認してからでなければ挿し木や接ぎ木はできません。もしかしたらマンモスやトライアンフといったフェイジョアの古い品種だって、どこかの小国でPVP登録品種になっているかもしれません。極端な話をすれば、北朝鮮にも種苗法があるのか知りませんけど、日本にいながらにして「あなたが殖やした品種は北朝鮮のPVP登録品種で、北朝鮮の法律に違反している」なんて言われ、北朝鮮の法律で裁かれ処罰されることがあったら、もう挿し木や接ぎ木は怖くてできませんね(笑)。

 

あと、種苗法とは関係ありませんが、一部のフェイジョアの品種名が商標登録されているので、苗を販売する際には権利侵害がないよう気を付けなければなりません。私が把握している限り、「アハート」(登録番号第5696814号)、「バムビナ」(登録番号第5702100号)の2品種が登録商標(マルR)です。この2品種については権利者に無断で品種名を使用することができませんので、苗の販売時には別の名称を用いたいと考えています。

 

当園では日本の法律に従ってこれからフェイジョアの苗の販売を始めます。農水省などからは上記のご回答をいただいていますが、もし間違っている点があればコメント欄からご指摘をお願い致します。もちろん苗の販売について、最終的に私個人の責任であるのは言うまでもありません。

 

話は変わりますが、ポポーやフェイジョアを10年ちょっと栽培していると、実は色々と困ったことも発生しています。誰かに相談しようにも周りにポポーやフェイジョアを栽培している先輩農家はいませんし、農研機構や愛知県の農業試験場などに問い合わせても「ポポーやフェイジョアに詳しい人がいないので分からない」という答えしか返ってきません。インターネットで調べてもマイナー果樹で情報が少ないのを良いことに、勝手な想像や思い込みによる荒唐無稽な情報が散見されます。Uさんが大学院で植物の専門的な研究していた経歴を見込んで、彼にはこれまでの私たちの経験をすべてお伝えしました。なかでも、今後もフェイジョア栽培を続けていくために、そして日本でフェイジョアを普及させるために、どうしても原因究明しなければならない深刻な問題を抱えており、現在Uさんと協力して調査、研究を進めています。調べると、まさに「死活問題」とも言えるこの問題は私たちの農園に限ったことではなく、他所でも発生していてお困りの方は少なくないようです。この問題に関して、一部の人たちの間で定説になっている「空説」があります。それは間違いだというのがUさんと私たちの共通認識で、まだ状況証拠の段階ですが、複数の理由から私たちの間でこの説はほぼ否定できています。私が相談した愛知県農業試験場の果樹担当の職員さんも問題の原因は分からないとしながら、この空説に関しては「植物のことを知らな過ぎる」と一笑に付していました。かといって私たちも原因究明には至っていませんので、大口を叩くようなことはしませんが、現在Uさんとは整合性のある2つの仮説を立てていて、互いの圃場で検証中です。来年にはある物(農薬ではありません)を使い、一部のフェイジョアの木で検証する準備もしています。Uさんは植物のスペシャリストですし、文系とはいえいちおう私たちもかつては研究者の端くれでした。仮説段階で何ら検証できていない不確かな情報を発信して、フェイジョア栽培者を混乱させることだけはしたくありません。実際に、以前に私たちのお客様で、上記の空説を信じたばかりに高額なフェイジョアの苗をあっけなく枯らしてしまった人がいました。私も分からないことや困ったことがあればまずインターネットで調べますし、他にこれといった情報がなければ信じてしまうのも無理はありません。だからこそ思い付きや勝手な想像だけで検証できていない情報を発信するのはフェイジョア農家としてあまりに無責任だと考えています。ただ、植物の研究は年単位の時間を要します。それに、私たちには研究のための設備や予算があるわけでもありません。どれだけ時間がかかるか分かりませんし、結局私たちの力では解明できないかもしれません。それでも何か明らかにできましたら、ここで皆様に報告したいと思います。

 

今年のフェイジョアの鉢上げはもうすぐ600本です。1鉢に4本挿して、4本すべてが成功しているのを見ると嬉しくなります。

 

スリットからは発根した根が見えます。

 

鉢から抜いてみるとこんな感じです。

 

せっかく発根した根を切らないよう、慎重にほぐします。

 

まだ鉢上げできていない挿し木が200本くらいありますので、最終的に今年は全部で800本前後となりそうです。2500分の800として、成功率32パーセント。およそ3分の1です。苗の販売を軌道に乗せるにはまだまだ低いですね。それでも今年もフェイジョアの挿し木で新たな発見がありました。来年以降は成功率50%に届くようにしたいです。

 

もう来月下旬には今年のフェイジョアの挿し木を始めます。まだ昨年の鉢上げもすべて終わってないのに・・・。挿し木をしたら毎日の水やり。こんなことをしているから相変わらずどこにも出かけられません。

 

昨年の挿し木で今日までに鉢上げできた品種と本数を載せておきます。

アハート 7本
アントアネット 3本
アポロ 3本
ウィキトゥ 63本
エミール 12本
オパールスター 10本
カカポ 55本
クーリッジ 23本
グレース 122本
ゴールデングース 58本
ダフィー(Duffy) 3本
デンズチョイス 74本

トラスク 26本
ナザメッツ(Nazemetz) 45本
ニキタ 2本
パインアップルジェム 16本
ポウナム 1本
ホワイトグース 33本
マリアン 12本
ユニーク 13本

 

一部は私たちの畑の品種更新のために残しますが、上記の苗も来年以降に販売する予定です。

 

~2023年9月9日追記~

私と同じ大学の農学部の大学院を卒業して種苗会社に勤めている同級生の友人も、この投稿を読んでくれたみたいで、私の理解で問題ないと、LINEでメッセージを送ってくれました。彼の会社で交配したいくつかの品種がPVP登録されていて、彼はその品種の国内外でのPVP登録申請業務に携わったことがあるそうです。そんな彼が言うのだから間違いないでしょう。私が農水省から得た回答、そしてUさんが農業試験場の職員さんに確認してくださった内容、さらにこの同級生からのメッセージ。PVP出願中の「エディーブッシュ」以外の品種については、増殖や販売などは法的に問題ないという理解でやはり正しいようです。お二人ともありがとうございました。ただその友人からは、PVPになっていない品種でも、品種名が商標登録されているケースがあるから、その点は気を付けるよう注意をいただきました。PVP登録はされていないけど、品種名が商標登録されている・・・。ブルーベリーだと「スパルタン」や「ダロウ」、「ラヒ」などがそうですし、ポポーだと「ピーターソンポポー」の品種がそれに該当しますね。「アハート」と「バムビナ」の苗の販売時には気を付けたいと思います。

 

関西の農家さんもそうですし、この友人もそうですが、やっぱ理系の大学院ってカッコイイ!!キラキラキラキラキラキラそれに引き換え、文系の私が大学院時代に学んだことなんて、百姓になった今となっては何の役にも立っていません・・・泣

 

 

以下どうでも良いことですけど、必要な書類があって久しぶりに実家に帰りました。帰省といってもクルマで10分の距離です。遠いとなかなか帰省できませんが、近すぎても用事がなければわざわざ行くことはないものです。目的の書類を探していたら岡田家の家系図が出てきて、そこには私の曽祖父のさらに祖父母の名前までが載っていました。ともに長生きだった曽祖父母は私の記憶に残っていますが、その上となるとさすがに面識はありません。曽祖父母の名前は「岡田佐市・みつ」、もちろんここまでは知っています。でも、高祖父が「粂吉」で、さらにその父親が「佐平治」というのははじめて知りました。岡田佐平治さんは明治7年没となっています。粂吉さんや佐平治さんはどのような人だったのか、自然と思いを巡らせてしまいます。私と同じように百姓をやっていたのでしょうか。曽祖父が8人きょうだいの次男坊だったこともはじめて知りましたし、9人きょうだいだと思っていた亡祖父が実は10人きょうだいで、「紋次」さんという弟を幼くして亡くしていたとか、近所の家が遠い遠い親戚だったなど、色んな発見がありました。著名人の家系を調査するNHKの「ファミリーヒストリー」という番組をよく観ていますが、私のファミリーヒストリーも少し知ることができ、改めて多くのご先祖様がいて自分が存在するということを認識できました。