5-5 国外脱出できるか!? 2 | 夢、成る瞬間

夢、成る瞬間

ダグラス・コマエ物語

「こういう非常事態だから、すぐに連絡がつくような場所におってもらわんと困る。なんで黙ってホテルを引き払ったりするんだ。勝手な真似はするな」
 例の役人が目ざとく寄ってきて吐き捨てるように言い、そのまま向こうへ行った。

 猛烈に腹が立ったが、とりあえず怒りをこらえることに努めた。
 ここで初めて大使とも会った。きつい太陽が照りつける中でもきちんとネクタイをしめ、汗をかきながら全体に目を配っていた。
 わざわざぼくらにも言葉をかけてくれた。それだけで安心感が湧き上がってきた。奥さんもとても優しくて素敵な人だった。
「なにも心配はいらないわよ」
 奥さんはぼくら一人一人に言った。
 この奥さんも一緒にニュージーランドの空軍輸送機に乗って、ソロモンを脱出することになっていた。

 自分の主人と離ればなれになるのがつらいと言い、目にうっすら涙がにじんでいた。

フランシス(物語は2000年のことだが、写真は2013年のもの)
 

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