メルカートで、出逢い ー続編ー | 私のイタリア時間

私のイタリア時間

イタリアに住みはじめて、20年もの月日が経ちました。
イタリアでの何気ない日々。流れる時間の中で起こる、ふとした出来事や思い。
このブログでは、そんな日常を1枚の写真と共に書き綴っています。





トニーさんは、

ヨットに乗っている...

そういうと、

大金持ちみたいに思うが、

昭和の、仕事も安定しない時代に育った、

苦労人である。


いつも、

就職するまでの苦労話や、

初めて来たローマで騙された話など、

いろいろ語ってくれた。


そんなトニーさんが、糖尿病を患う。

「お酒がさ、飲めね〜んだよ。」

お店にある、ワインやリモンチェッロを横目に、

恨めしそうな顔をする。


それでも、みんなとの宴では、節制しながら、楽しんだ。


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翌年、

ゲソっと痩せたトニーさんが、お店に現れた。

「どうしたんですか?」

聞くと、

「胃の中に、癌が見つかってさ、3分の1、取っちゃったんだよ。だから、食べれなくってさ。」

術後、安定期に入って、すぐにイタリアにやってきたのだった。


それだけ、イタリアを愛していた。


「笑っちゃうんだよ。胃の手術したときにさ、胃の周りについてる脂肪とっちゃったわけ。ガンよりさ、大きいんだもん。」


私たちの心配をよそに、

笑いながら語るトニーさん。


傍ではいつも、ノリさんが、

「全く、人の言うこと、聞きゃあしない。あ〜〜また、こぼす!」

お母さんのように、見守っている。


この二人が結婚したのは、

イタリアに来るようになって、2年目である。


私が出会った当初は、別性を名乗っていた。


こんなに素敵なカップルもいるんだな...

何となく、そう思った。


紙きれでは左右されない何か、もっと強いもの。


再び、トニーさんがやって来た時、

首に大きなコブを抱えていた。


トニーさんに襲った、ガンの再発は、

トニーさんを異様に怖がらせた。

「俺、死ぬのは怖いよ・・・」


「何言っているんですか?また、来年、ご飯一緒に食べましょうよ!」




それが、最後となり、

抗がん剤治療に入って、間も無くして、

トニーさんは還らぬ人となった。









⬇︎ いろいろの出会い...

  



最後までお付き合い、どうもありがとうございます。