ジェネラル・ルージュの凱旋  [海堂尊] | 花火屑

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本当に良いものはいつになっても色褪せない

ジェネラル・ルージュの凱旋/
海堂 尊

¥1,680 Amazon.co.jp

★★★★☆

やぁっと読み終えました。
いえ、読むのには時間かからなかったんですが、読む気になるのに時間がかかりました。別の事情で。

映画にもなっている今作。前に読んだ「ナイチンゲールの沈黙 」と時間軸が被ってます。
前回も思ったんですが、なぜ「沈黙」で「凱旋」なんでしょうねぇ。


表紙をご覧になっていただければ分かる通り、今作は救急救命の現場が舞台です。
究明センター長であり、愚痴外来の我らが田口先生と同期の速水部長を巡る騒動なのです。

リスクマネジメント委員会・委員長である田口のポストに匿名の内部告発が入ります。
速水部長が特定の企業と癒着し供与を受けていること、センターの花房師長がその共犯である、といった内容です。

田口は内容が内容だけに病院長に相談しますが、最近病院長はあまり存在感がありませんね。表でも裏でも全然動いてないんじゃないかしら、と思えてしまう。この人の暗躍が好きなのにさ。

リスクマネジメント委員会よりもエシックスでの論議を妥当と判断し、そちらへ持ち込むのですが、このエシックスがどうにも融通が利かないというよりも、論理武装しすぎの集団で、我らが田口先生を敵対視しているわけですな。

頭がいい人たちというのはこういう修飾語ばかり遠回り論理ばかりで、ちっとも中身のない話をしたがる人が多いんですかね。
医者だけでなく、政治家やら官僚の答弁などを最近聞く機会が多いんですが、彼らの話の中身のなさには「よくこれで生活してこれたもんだ」と思ってしまいます。
家族に対してもそんな風に話してんのかね。まさかね。

この論理的思考の持ち主ばかりが集まった中に、直情的な島津先生がいるとホントほっとします。
これこそが作中で私読者の代わりになってくれる存在ですよ。

速水部長が投げかけた波紋によって救急救命の現場の問題点や、現実と医療の理想の大きすぎる溝が浮き彫りになります。
「警察や消防と同じ」という表現が作中に出てきますが、確かにこういう職業は営利優先にはしにくいものですよね。
かといって国も地方自治体も赤字だらけ。
どこまで行っても八方ふさがりの現状を打開する事なんて、世界が滅びないと無理な気がします。

多少ドラマティックな展開もありますが、スピード感在り、姫宮という新たなドタバタありでとても面白いです。
しかし一番はエシックスでの論理攻撃に風穴を開ける、白鳥と速水の爆弾論理が展開されるシーンですかね。
もっと白鳥が攻撃に参加してくれればいいのにとも思いますが、事前のイライラが攻撃の効果を倍増させるんだろうな。
島津の案件での白鳥&速水攻撃はスカッとしました。


今後のこのシリーズ、読むかやめるかの判断が難しい。
一応スピンアウトというか枝の方は読もうかしらと思っているんですが、どれを手に取るべきか…。
姫宮の研修の成果も見たいので読む方に傾いてるんですけど。
でも映画の方は見たいです。

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