片頭痛とミトコンドリア その3 いろいろな食事の摂り方 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

ミトコンドリアと糖質制限


 糖質制限をしているひとは体外から摂取するグルコースが少ないのです。
 そのため、糖新生というプロセスで体の脂肪を分解し、グルコースを作ります。大部分のグルコースは糖新生で作られます。
 またTCAサイクルでミトコンドリアが脂肪をせっせとエネルギーを使うことで、激しい運動をしなくても痩せていきます。そこに筋トレなどの無酸素運動とゆっくりな深呼吸で休憩、これを繰り返せば、ミトコンドリアも脂肪をどんどん使います。
 

 「糖新生」と「ミトコンドリア」で”がんがん”代謝があがるので、おいしく食べながらダイエットできるのです。

 
ATPがふんだんにある場合はどうなるのでしょうか
 

 現代人のワークスタイルと食生活ではATPが不足するということにはなかなかなりません。
 炭水化物中心の生活であれば、ATPの原料であるグルコースは過剰になります。
 過剰になったグルコースは肝臓でグリコーゲンになり、貯蔵されますが、量もごくわずかです。
 さらに余ったグルコースは脂肪酸に変えられ、脂肪細胞になります。
 「内臓脂肪」や「皮下脂肪」としてどんどん蓄えられるのです。
 増えすぎた内臓脂肪は、さまざまは悪い物質を分泌して、代謝を落としたり、生活習慣病をもたらします。このことは前回述べたことです。


 解糖系とミトコンドリアのどちらを重視するかで主要エネルギー源は変わる?


  人間の主要なエネルギー源については、グルコース(ブドウ糖)なのか脂質なのかといった議論があります。


 昔からグルコースが主要なエネルギー源と言われていますが、人間は、グルコースの他にも、タンパク質と脂質もエネルギー源として利用できます。ですから、グルコースが主要エネルギー源だとする考え方では、タンパク質と脂質はおまけといった位置づけになるのでしょう。
 一方、脂質を主要なエネルギー源と考えるのであれば、グルコースとタンパク質はおまけとなるはずです。


解糖系とミトコンドリア系の比較
 

 糖質(グルコース)、タンパク質、脂質の三大栄養素のうち、どれが主要なエネルギー源かを決める前にエネルギーを生み出すエンジンには、解糖系とミトコンドリア系があることを知っておかなければなりません。このことは、これまで述べました。


 そして、解糖系とミトコンドリアのどちらがメインエンジンかを決めなければ、三大栄養素のどれが主要なエネルギー源かを決定できないはずです。ということで、まずは解糖系とミトコンドリア系の違いを知る必要があります。


 なお、以下の説明では、タンパク質は主要なエネルギー源の候補からは外します。タンパク質が分解されたアミノ酸は、糖新生によってグルコースになりますから、タンパク質を主要なエネルギー源と考えることは、グルコースを主要なエネルギー源と考えることと同じになるからです。

 
 解糖系は、グルコースを使ってアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーを作り出します。グルコース1分子から解糖系で生み出されるATPは2分子です。
  一方のミトコンドリア系は、解糖系でのグルコースの代謝産物であるピルビン酸や脂質が分解された脂肪酸がアセチルCoA(コーエー)になり、クエン酸回路で代謝されてATPが産生されます。
 解糖系は、酸素が供給されなくてもATPを産生できるので即効性があります。
 一方のミトコンドリアは、酸素がなければATPを作り出せないので、解糖系と比較するとエネルギーを作り出すのが遅いです。


 しかし、ミトコンドリアは解糖系と比較すると大量のATPを作り出せます。解糖系で代謝されたグルコースは、ピルビン酸、アセチルCoAを経てクエン酸回路に入って30分子のATPを生み出します。また、脂質が分解された脂肪酸から変換されたアセチルCoAは、100分子以上のATPを生み出します。特に脂肪酸のうちパルミチン酸は129分子ものATPを生み出します。


即効性とエネルギー量のどちらを重視すべきでしょうか

 
 解糖系とミトコンドリア系のどちらをメインエンジンと考えるかは、即効性とエネルギー量のどちらを重視するかにかかっています。これを議論せずにグルコースと脂肪酸のどちらが主要なエネルギー源かを決定することはできないでしょう。

 理想のエンジンとエネルギー源は、ATP産生速度が速く、ATP産生量が多いエンジンとエネルギー源の組み合わせですが、そのような組み合わせはありません。
 また、速度が遅く量が少ない「ミトコンドリア+グルコース」の組み合わせは、普通に考えれば主たるエンジンとエネルギー源の組み合わせにはなりません。
 そうすると、即効性はあるが量が少ない「解糖系+グルコース」の組み合わせか、即効性はないが量が多い「ミトコンドリア+脂肪酸」の組み合わせのどちらかが、「メインエンジン+主要なエネルギー源」となるはずです。
 

ライターとガスコンロのどちらが好きかで決まります

 
「解糖系+グルコース」の組み合わせは、ライターに例えることができるでしょう。ライターは、ポケットから取り出して親指でボタンを押すか、円い金具をこするかすると火がつきます。すぐに火を使いたいときはライターが便利ですが、火力が弱いといった難点があります。


 「ミトコンドリア+脂肪酸」の組み合わせは、ガスコンロに例えるとわかりやすいです。 ガスコンロを使うためには、ガスボンベをコンロに設置しなければなりません。ライターに比べると用意する時間がかかります。


 また、つまみを回して数秒間カチカチと火花が散った後、やっと火がつきます。しかし、いったん火がつくと、その火力はライターをはるかにしのぎます。


 即効性を重視するのなら、米やパンなど炭水化物(糖質)が多く含まれた食べ物を食べれば良いでしょう。逆にエネルギー量重視なら、脂質が多く含まれた肉などの動物性食品を積極的に食べれば良いでしょう。
  ちなみに産婦人科医の宗田哲男先生の著書「ケトン体が人類を救う」では、糖質エンジンは高率が悪くメインエンジンにはならないといった旨の記述があります。そして、脂質を使ったケトン体エンジンこそが、メインエンジンだと述べています。


 ほかの生物では、ケトン体の働きはもっとはっきりしています。たとえば、冬のシベリアに向かって飛んでいく渡り鳥は、どんなエネルギーで飛んでいるのでしょうか。
 これは蓄えた脂肪を燃やして飛んでいるのです。糖質エンジンは、じつは効率が悪くて、長く飛べるようなエンジンではありません。動物の身体に蓄えられるエネルギー源は、じつは脂肪である場合が多く、糖質は一時しのぎのエネルギーであって、補給を頻繁にしないとすぐに枯渇してしまいます。


 鍋料理をする時、即効性があるからとライターで温める人はいません。準備に少しくらい時間がかかってもガスコンロを使うはずです。
 それと同じで、人間やそのほかの動物も、解糖系ではなくミトコンドリア系をメインエンジンにしているのではないでしょうか。
 

 そう考えると、脂肪酸よりもATP産生量が少ない糖質(グルコース)が主要なエネルギー源になるとは考えにくいということです。


からだの中の発電所~ミトコンドリアのATP合成系について


 栄養学の目的は、生命維持に必要な食べ物の成分を明らかにし、いかに食し、健康を増進するかを考えることです。その目的の達成のためには、体に取り込まれた栄養素がどのように吸収され、利用されているのかを理解する必要があります。私たちは体を動かすのに必要な「エネルギー源になる栄養素」の利用過程(エネルギー代謝)について考えてみましょう。


1.エネルギーの元になる栄養とは


 一言で栄養と言いますが、栄養素は体の中でどのように役にたっているのでしょうか。栄養素の役割は大別して次の3つに分けることができます。


 (1)人体の構成成分となる栄養素


 タンパク質は体に取り込まれた後、筋肉や皮膚、臓器などになります。また、カルシウムなどのミネラルは骨を作ります。自動車に例えれば、ボディーやエンジンを作る鉄やプラスチックに相当するものです。このように、吸収された後、体の一部になるような栄養素がここに分類されます。

 
(2)エネルギー源になる栄養素


 自動車に例えれば、ガソリンに相当するもので、エネルギー源として日々の活動に利用されます。糖類(炭水化物)や脂肪がこれに含まれます。糖類や脂肪は、体の中で、呼吸により吸収した酸素(O2)で酸化され、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に分解されます。 その時、放出されるエネルギーが身体の活動に利用されます。糖分や脂肪の他、タンパク質もエネルギー源として使われることがあります。標準的な食事では、ご飯、パンなど(主に糖類)として摂取しています。

 
(3)からだの中で起こる種々の化学反応に利用される栄養素


 3番目の栄養素は体の中の化学反応に使われるものです。ビタミンやミネラルがこれにあたります。上にあげた、タンパク質、糖質、脂肪などの栄養素は、体に吸収された後、そのまま利用されることはほとんどなく、たいていの場合、化学反応を受けて代謝されます。


 たとえば、糖質や脂肪は連続した一連の化学反応(解糖系やTCA回路)を経て、二酸化炭素と水に分解されます。化学反応自体を行うのは酵素と呼ばれるタンパク質ですが、酵素の働きを円滑に行うためにはビタミンやミネラルが必要です(酵素を助ける役割をするので、これを補酵素と呼びます)。これを栄養素として食べ物から取る必要があるのです。
   このなかでも、マグネシウム、鉄は重要になっています。


ひとの栄養素とその役割


 これら、3種類の栄養素ですが、一日に取らなければならない量は、大きく異なります。 たとえば、体を作る栄養素の代表であるタンパク質の一日の所要量は、60~70グラムですが、ビタミン類は、一日に数ミリグラムから数十ミリグラムあれば足ります(1ミリグラムは1グラムの1000分の1)。


 これに対して、エネルギー源になる栄養素は、成人女子で約2000キロカロリー必要です。 これは澱粉に直せば約500グラムに相当し、他の栄養素に比べればかなりたくさんとらなければならないことがわかります。エネルギー源になる食べものは「主食」とも呼ばれるように、最も大切な栄養素なのです。ちなみにこれらエネルギーになる栄養素の栄養価には、カロリー(cal)というエネルギーの単位を用います。


2.栄養素から摂取したエネルギーはATPに変換された後、使われる


 では、このようにして摂取されたエネルギーは体の中でどのように利用されるのでしょうか。私たちの体に取り込まれた糖や脂肪は、呼気の酸素(O2)で酸化され、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に分解されます。この時、放出されるエネルギーを使って人間は活動しています。しかしながら、この酸化によるエネルギーを人体はそのままでは利用することができません。まず、酸化によって取り出されたエネルギーはATP(正式名はアデノシン-3-リン酸)という化合物に蓄えられます。すなわち、酸化のエネルギーを使って、まずATPが作られるのです。


 栄養素から摂取したエネルギーはATPに変換された後、使われる(ATP回路)

 
 ATPは分解して、ADP(正式名はアデノシン-2-リン酸)とリン酸になりますが、この時、蓄えられたエネルギーが放出されて身体の活動に使われます。すなわち、運動や思考、体を作る各種の合成反応などに利用されるのです。ATPの分解により生じたADPとリン酸は再び酸化のエネルギーでATPに再生されます。
 体の中では毎日いろいろな化学反応(代謝)が起こってますが、そのうち、ATPの合成、使用に関わる代謝を特に「エネルギー代謝」と呼んでいます。
  このことは、前回述べたばかりです。


3.ATPは細胞のミトコンドリアで作られている


 人の体では、ATPの大部分は、細胞にあるミトコンドリアという小器官で作られています。ミトコンドリアは細胞の中にあるとても小さな器官で、外膜、内膜という二枚の膜に包まれた構造をしています。糖質や脂肪の酸化が起こるのは、マトリックスという、一番内側の部分です。


 その酸化のエネルギーを受けてATPを作るのは、内膜にあるATP合成酵素です。


 ミトコンドリアはよく火力発電所に例えられますが、ATP合成酵素がATPをつくる仕組みは、どちらかといえば、水の流れのエネルギーで電気を起こす、水力発電に近い仕組みであることがわかってきました。この水力発電のタービンに相当するのがATP合成酵素ですが、この酵素には、タービンの逆回転を防止するブレーキにのような部分のあることがわかりました。遺伝子操作をもちいた実験から、このブレーキは、摂取した糖質や脂肪のエネルギーが無駄なく効率よくATPに変えられるための仕組み(エネルギーになる糖や脂肪を節約するための仕組み)であると考えています。

 
脂肪が燃焼するとケトン体ができる


 ブドウ糖が枯渇した状態で脂肪酸が燃焼するとき、肝臓ではケトン体(アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸)という物質ができます。このケトン体は脳にエネルギー源を供給するために肝臓で作られる物質です。
 通常、脳はブドウ糖しかエネルギー源として利用できません。脂肪酸は血液脳関門を通過できないので、脳は脂肪酸をエネルギー源として利用できません。体はブドウ糖が枯渇したときに脳のためにエネルギー源を作らなければなりません。そこで、肝臓では脂肪酸を分解する過程でケトン体を生成するように進化したのです。
 ケトン体は水溶性で細胞膜や血液脳関門を容易に通過し、骨格筋や心臓や腎臓や脳など多くの臓器に運ばれ、これらの細胞のミトコンドリアで代謝されてブドウ糖に代わるエネルギー源として利用されます。特に脳にとってはブドウ糖が枯渇したときの唯一のエネルギー源となります。
 通常は、細胞が必要なエネルギー(ATP)は、グルコースが解糖系からピルビン酸とアセチルCoAを経てTCA回路(クエン酸回路)へと代謝され、さらに酸化的リン酸化によって産生されます。
 一方、脂肪酸からエネルギーを産生する場合は、脂肪酸が分解(β酸化)されてアセチルCoAになり、このアセチルCoAがミトコンドリアのTCA回路で代謝されてATPを作り出します。
 脂肪酸の酸化で作られるアセチルCoAの多くはTCA回路(クエン酸回路)に入りますが、絶食時などブドウ糖が少ない状況ではアセチルCoAをTCA回路で処理する時に必要なオキサロ酢酸ができないため、TCA回路が十分に回りません。そのためTCA回路で処理できなかった過剰のアセチルCoAは肝臓でケトン体の合成に回されます。


 TCA回路の最初のステップはアセチルCoAとオキサロ酢酸が結合してクエン酸になる反応で、オキサロ酢酸はピルビン酸からできるので、ブドウ糖が制限された条件では、アセチルCoAはケトン体合成へ振り分けられます。長鎖脂肪酸がミトコンドリアに入る場合はL-カルニチンが必要ですが、中鎖脂肪酸の場合はL-カルニチンは必要ありません。
 すなわち、肝細胞では、脂肪酸が分解されてできたアセチルCoAの一部はアセトアセチルCoAになり、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)を経てアセト酢酸が生成され、これは脱炭酸によってアセトンへ、還元されてβヒドロキシ酪酸へと変換されます。このアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3つをケトン体と言います。


 グルコース(ブドウ糖)が枯渇した状態で脂肪の摂取を増やすと、肝臓では脂肪酸のβ酸化が亢進されて生成されたアセチルCoAはケトン体の産生に振り分けられます。アセト酢酸とβヒドロキシ酪酸は血液を介して他の組織や細胞に運ばれて、アセチルCoAに変換されてTCA回路でATP産生に使用されます。


 脂肪酸と違ってケトン体は水溶性であるため、特別な運搬蛋白質の助けがなくても肝臓からその他の臓器(心臓や筋肉や腎臓や脳など)に効率よく運ばれ、細胞内でケトン体は再びアセチル-CoAに戻され、TCA回路で代謝されてエネルギー源となります。この際、エネルギー産生に使われるのはアセト酢酸のみで、βヒドロキシ酪酸はアセト酢酸に変換されて初めてエネルギー代謝に使用され、アセトンはエネルギー源にはならず呼気から排出されます。


 肝臓で生成されたケトン体(アセト酢酸とβヒドロキシ酪酸)は肝臓以外の組織の細胞に運ばれミトコンドリアのTCA回路と電子伝達系でATP産生に使われます。すなわち、βヒドロキシ酪酸からアセト酢酸への変換時とTCA回路での反応でNADHやFADH2に捕捉された電子は電子伝達鎖で受け渡され、最終的にATP合成酵素によってATPが合成されます。
 肝臓はケトン体を作り出しますが、ケトン体をエネルギー源として利用できません。肝臓はケトン体を他の臓器・組織のエネルギー源として供給するための工場で、作ったケトン体を自分で消費しないように酵素が欠損しているためです。
 飢餓(あるいは絶食)時やインスリン欠乏による糖尿病などでグルコースが利用できない場合、ケトン体が重要なエネルギー源となります。脂肪酸は血液脳関門を通過できませんが、ケトン体は通過できるので、グルコースが利用できない場合の脳の唯一の代替エネルギーとなっています。
 ケトン体は一部のアミノ酸からも産生されます。蛋白質はアミノ酸に分解されてから代謝されますが、アミノ酸ごとに代謝経路が異なります。アミノ酸のうち、脱アミノを受けたのち、その炭素骨格部分が脂質代謝経路に由来して、主として脂肪酸やケトン体合成に利用されるものをケト原性アミノ酸(ketogenic amino acid)と呼び、一方、TCAサイクルに入って糖産生に利用されるものを糖原性アミノ酸(glucogenic amino acid)と呼びます。 アミノ酸は細胞内で蛋白合成の材料としてだけでなく、グルコースや脂肪酸が不足してエネルギー源がなくなると、蛋白質もアミノ酸に分解され、グルコースやケトン体に変換されてエネルギー産生に利用されるということです。

 

インスリンの作用が正常ならケトン体は無害


 ケトーシス(ケトン症:ketosis)は血中のケトン体が増加した状態です。ケトン体のアセト酢酸とβヒドロキシ酪酸は酸性が強いので、ケトン体が血中に多くなると血液や体液のpHが酸性になります。このようにケトン体が増えて血液や体液が酸性になった状態をケトアシドーシス(ketoacidosis)と言います。
 糖尿病性ケトアシドーシスは主に1型糖尿病患者に起こり、インスリンが不足した状態で脂肪の代謝が亢進し、血中にケトン体が蓄積してアシドーシス(酸性血症)を来たし、ひどくなると意識障害を来たし、治療しなければ死に至ります。
 このように糖尿病の人では血液中のケトン体濃度の上昇は糖尿病の悪化を示すサインとして知られていますので、ケトン体は体に悪い物質と思われる方が多いと思います。しかし実際は、インスリンの働きが正常である限りケトン体は極めて安全なエネルギー源です。

 
 肝細胞と赤血球(ミトコンドリアが無い)を除く全ての細胞で利用でき、日常的に産生されているからです。糖質を普通に摂っている人での血中ケトン体(アセト酢酸とβヒドロキシ酪酸の合計)の基準値は26~122μmol/lです。絶食すると数日で血中ケトン体は基準値の30~40倍もの高値になりますが、インスリンの作用が保たれている限り安全です。一時的に酸性血症(アシドーシス)になることもありますが、血液の緩衝作用によって正常な状態に戻ります。
 つまり、ケトン体の上昇が怖いのは、インスリンの作用不足がある糖尿病の場合で、糖尿病性ケトアシドーシスはインスリン作用の欠乏を前提とした病態です。断食や糖質制限に伴うケトン体産生の亢進の場合は生理的であり、インスリン作用が正常であれば何の問題もないと言えます。


夜遅い時間の食事を避けることの効果


 私はだいぶ前からインターミッテントファスティングのファンです。それにはいくつか理由があり、長寿や健康のため、そしてガンの予防と治療効果も得られるかもしれないのです。その仕組みは絶食がミトコンドリアに与える効果と関係があります。


 このようなミトコンドリアが関係する電子の移動による大きな副作用は電子伝達系から電子が漏れて酸素と反応し、フリーラジカルである超酸化物を形成してしまうことです。
 スーパーオキシドアニオンは、酸素分子が一電子還元されたもので、活性酸素の前駆物質であり、酸化の連鎖反応を媒介します。このような酸素のフリーラジカルは、細胞膜の脂質、タンパク質の受容体、酵素、DNAを攻撃し、ミトコンドリアを破壊します。
 フリーラジカルには身体に良いものもあり、細胞が適切に機能するためには必要なものです。問題となるのは、フリーラジカルが大量に産生される場合です。これは、多くの人に起こっていることで、様々な病気、特にガンの原因となります。この問題の解決策は、二つあります:


 •抗酸化物質を増やす
 •ミトコンドリア内のフリーラジカルの発生を抑える。


 ミトコンドリア内に産生されるフリーラジカルを減らすには、過剰な栄養を摂らないことです。カロリー制限 は一貫して多くの治療効果があり、これには議論の余地がありません。食べても良い時間帯を設け、自動的に摂取カロリーを制限できるので、インターミッテントファスティングは効果的なのです。


 特に、就寝中は代謝が最も低い時間帯なので、寝る前の数時間は食べないようにするとより効果的です。
 少々複雑に聞こえるかもしれませんが、つまり、寝ている時はカロリーの消費が最も少ないため、寝る前に食べるのは避けた方が良いということです。この時間帯に過剰な燃料を蓄えると、過剰なフリーラジカルが産生され、細胞にダメージとなり、老化を加速、そして慢性疾患のリスクを増してしまうのです。


ミトコンドリア機能改善のための絶食方法


 絶食により、エネルギー産生の材料が脂質と蓄積脂肪だけになると、細胞は結果的にミトコンドリアを使うしか無くなるのです。
 身体中で脂肪からエネルギーを産生する仕組みはミトコンドリアにしかありません。そして絶食するとミトコンドリアを活性化するのに役立つのです。
 インターミッテントファスティングやケトン食療法、ミトコンドリアを活性化させる特定の薬剤がガン細胞を死滅させる仕組みにおいてミトコンドリアの活性が多大な役割を果たしていると考えられます。


 また、活性酸素が爆発的に合成されると状況が一変し、ガン細胞を死滅させるのです。


ミトコンドリアに栄養を与える

 

 栄養面では、ミトコンドリア酵素が適切に機能するために必要な重要な補助因子として、以下の栄養素が重要になります。

 
   •コエンザイムQ10、ユビキノール(誘導体)
   •L-カルニチン。脂肪酸をミトコンドリアに運びます。
   •D-リボース。ATPの原料です。
   •マグネシウム。
   •オメガ-3脂肪酸
   •リボフラビン、チアミン、ビタミンB6などのビタミンB群。
   •α−リポ酸(ALA)


 様々な理由から、自然食品からできるかぎりの微量栄養素を摂りたいと思っています。吸収を助ける繊維と一緒に摂ります。各栄養素が、適切な比率で含まれています。過剰摂取はあり得ないことになります。バランスが適切です。そして、おそらくまだ発見されていない栄養素も含まれています。
 注意点としては、幅広い種類の食品を食べ、適切な微量栄養素を摂るようにしましょう。 このような理由から、ビタミンB群のサプリメントを摂ると良いと思います。
 年を重ねればビタミンB群を充足させるのは簡単ではありません。細胞膜が固くなってくるせいです。このせいでビタミンB群が細胞内に取り込まれる方法が変わります。ビタミンB群は水溶性なので、脂肪中には蓄積できません。過剰摂取による副作用もありません。あったとして、いつもより尿が増えるくらいです。ですが、それも良い効果だと思います。


運動でミトコンドリアの若さを保つ


 運動は、ミトコンドリアの健康を促進し、ミトコンドリアの活動を促します。ミトコンドリアの活動が活発になると、シグナル分子として機能する活性酸素を合成するという副作用が起こります。


 そのシグナルの一つが、ミトコンドリアの合成を伝えるシグナルです。運動すれば、身体がエネルギーを必要とするため、それに反応してミトコンドリアが合成されます。


 老化は避けられません。ですが、身体年齢は実年齢とはかなり異なるものです。そして、身体年齢を左右するのがミトコンドリアの働きです。身体年齢の進行に個人差があることを示す最新の研究結果があります。


 研究者グループは、22歳時、23歳時、38歳時のテロメア長、DNAの損傷、LDLコレステロール、ブドウ糖の代謝、インスリン感受性など12以上の様々なバイオマーカーを測定しました。


 この結果わかったのは、38歳の人がバイオマーカーの状態によって、肉体的に10歳若く見えたり、10歳上に見えることもあると言うことでした。同じ年齢でも、肉体的な老化のスピードは違っていたのです。


 実際、老化のスピードが違う人の写真を知らない人に見せて実年齢を推測してもらうと、面白いことに(これも本の中身ですが)、実年齢ではなく肉体年齢の方が答えとして多かったのです。
  実際の年齢とは関係なく、見た目の年齢は生物学的バイオマーカーに対応しており、それを決定づけるのはミトコンドリアが健康かどうかです。大切なことは、老化は避けられなくても、年の重ね方をコントロールすることは可能ですし自信にもつながります。重要なのは、ミトコンドリアの働きを良い状態に保つことです。


  「若さ」というのは実年齢のことではなく、自分自身の感じ方であり、身体がしっかり機能しているかどうかです。


 「認知機能や身体機能を最も良い状態に保つにはどうすれば良いのか知りたい。人生に若いと感じる年月を増やしたい。90歳を超えたい。元気に外に出て、20歳の時と同じようにサンディエゴでサーフィンを楽しみたいのです。他の人と同じような速さで衰えて生きたくはありません。衰えなんて蓋をして人生に若いと感じる年月をできるだけ長く保って生きる喜びを感じたいのです。


 なお、片頭痛とケトン食については、先日、以下で述べたばかりです。


         物忘れが多い人にはケトン食
          
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12277700825.html