デパケンとミトコンドリア | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 片頭痛予防薬としての抗てんかん薬・デパケン


 バルプロ酸は脳内でグルタミン酸脱炭酸酵の活性化と GABAアミノ基転移酵素阻害によりGABAレベルを増加させ,神経細胞の興奮性を抑制することから,片頭痛や難治性の慢性頭痛患者において検討がなされてきました.片頭痛には約20年間の使用経験が蓄積されており,米国では,β遮断薬,アミトリプチリンに並んで,片頭痛予防薬の第一選択薬のひとつとして記載されています.バルプロ酸以外の抗てんかん薬では,古くはバルビタールやカルバマゼピンなどが使用されていた時期もありましたがエビデンスに乏しく、最近はgabapentinやtopiramateなどが有効性の高い予防薬として期待されています。
 てんかんの治療薬というと抵抗を持つ人もいるかもしれませんが、バルプロ酸という薬は、発作回数の多い人やキラキラが前兆として起こる人に効果を発揮します。この薬についてもはっきりとわかっていませんが、脳細胞の安定化をはかる作用があると考えられています。

 また、この薬は特に妊娠中は使えません。
  片頭痛発作の発症抑制に対する,小児における安全性及び有効性については,現在までの国内外の臨床試験で明確なエビデンスが得られていないことを知っておく必要があります。


デパケンで体重が増えてしまう 


  ではなぜデパケンで体重が増えてしまうのでしょうか。
 
 これは今のところ、次の2つの作用が原因だと考えられています。
 
Ⅰ.食欲中枢への作用

 
 デパケンには様々な作用がありますが、その1つにGABA(ɤアミノ酪酸)の活性化が挙げられます。
 GABAは神経をリラックスさせる方向にはたらかせる物質で、これによりデパケンは気分安定作用が得られるのではないかと考えられています。
 同じようにデパケンは、脳の視床下部の神経からもGABAの放出を促します。視床下部には食欲をつかさどる「食欲中枢」があり、ここにGABAが影響することで食欲が上がったり下がったりし、その結果デパケンで体重が増えたり減ったりといった副作用が生じるのではないかと考えられています。
 
Ⅱ.L-カルニチンの減少

 
 デパケンはL-カルニチンという物質を減少させる事が知られています。
 
 L-カルニチンは脂質を代謝させるはたらきをもつ物質です。これはつまり、カルニチンがあると脂肪が分解されやすいという事です。L-カルニチンは脂質を分解することで脂質からエネルギーを取り出すはたらきがあり、この効能からサプリメントなどにもよく配合されています。
 デパケンによってL-カルニチンが減少すると、脂質が分解されにくくなります。そうなれば余分な脂質は体内に貯蔵されることとなり、これは体重増加につながります。
 

デパケン(バルプロ酸)とカルニチン欠乏


 カルニチンは1905年肉エキスから単離されたベタイン構造有するビタミン様物質です。ビタミン様物質というのは、ヒトでは微量ですが、リジンから生合成されるからです。カルニチンの語源はラテン語の「肉」で、主に骨格筋や心筋に分布し、エネルギー代謝に必須の物質です。脂肪酸のβ酸化はヒトを含む真核生物ではミトコンドリア内で行われますが、長鎖脂肪酸アシルCoAはミトコンドリア内膜を通過することができないので、カルニチンがアシル基キャリアとして作用しミトコンドリア内への運搬を行っています。ミトコンドリア内ではアシルカルニチンからCoAにアシル基が転移され、再びアシルCoAが生成されβ酸化を受けます。カルニチンはミトコンドリア内で生じるアシル基と結合して、これらをミトコンドリア外へ排出するキャリアとしても働きます。
 カルニチン欠乏では、①脂肪酸β酸化の抑制、②ミトコンドリアからのアシル基除去抑制によるミトコンドリア機能障害が起こります。
 ところで精神科でよく使われるバルプロ酸はカルニチン欠乏を招く危険性があります。 バルプロ酸はカルニチンと結合して、バルプロイルカルニチンとなりカルニチンが尿から排泄されてしまいます。バルプロ酸は中鎖脂肪酸なので、その一部はβ酸化されます。 バルプロイルCoAがミトコンドリアに取り込まれる際にカルニチンと結合し、カルニチンが消費されます。カルニチン欠乏状態では、有毒なバルプロ酸代謝物質が蓄積し、アンモニアが上昇します。さらにバルプロ酸はグルタミン酸の腎代謝を増加させ、アンモニアを生成します。


 草津病院(広島県)の中村らは、精神科臨床でバルプロ酸投与がアンモニア値やカルニチン組成にどのような影響を与えるのか検討しています。バルプロ酸の投与は用量依存的に血中のカルニチン組成を変化させ、アンモニアの上昇に寄与していました。バルプロ酸投与下ではアンモニアの上昇に注意しなければなりません。またアンモニアの上昇を認めない症例でも、カルニチン組成に変化をきたしますので注意が必要です。さらに、中村らはバルプロ酸による高アンモニア血症の症例にカルニチン補充(Levocarnitine;エルカルチン®の投与)が有効か検討しています。約半数の症例でアンモニアが低下し改善を認めています。アンモニアの低下とカルニチン組成の変化が相関し、一部では精神機能の改善を認めています。下記アドレスを入力すれば、ネットで全文を読むことが可能です。


http://innovationscns.com/the-effect-of-carnitine-supplementation-on-hyperammonemia-and-carnitine-deficiency-treated-with-valproic-acid-in-a-psychiatric-setting/]
 このような精神科薬物療法が物質レベルの変化を誘発する研究は少ないですが、非常に重要な研究です。精神科薬物療法の安全性を高めるからです。


バルプロ酸服用患者におけるミトコンドリアの機能に与える影響について

 
 金山 学1),  杉山 成司1),  森下 秀子1),  石川 達也1),  和田 義郎1),  秋山 正2) 
1) 名古屋市立大学医学部小児科 2) 順天堂大学医学部伊豆長岡病院小児科


  バルプロ酸 (VPA) 服用患者におけるミトコンドリアの機能に与える影響をみるため, 血中のアンモニア, カルニチン, 乳酸, ピルビン酸, アミノ酸, 3-ヒドロキシ酪酸, 遊離脂肪酸値の変動について検討しました.
 対象38名 (2~17歳) をバルプロ酸 VPA単独服用者9名 (単剤群), バルプロ酸 VPAと他の抗てんかん薬との併用者11名 (併用群), 他の抗てんかん薬のみの服用者18名 (対照群) の3群に分け, 比較しました.
 結果: バルプロ酸 VPAは単剤群で16.2±3.8mg/kg/day, 併用群で19.7±6.5mg/kg/dayの比較的少ない投与量でしたが, 対照群に比し, 乳酸, ピルビン酸, アラニンが単剤, 併用の両群で上昇し, 更に併用群ではカルニチンの低下とアンモニアの上昇も伴っていました.
 以上から, バルプロ酸 VPA服用者は単剤群, 併用群に拘らず, ミトコンドリアの機能に悪影響を受ける可能性のあることが示唆され, ことに併用群でその傾向が目立ちました.


バルプロ酸による脳内代謝変化とその薬理的メカニズムに関する研究


 近年、抗てんかん作用に加えて、気分安定薬としての有用性が注目されているバルプロ酸 の脳内代謝活動への直接的な影響について、ラット新鮮脳切片を用いて評価しました。 バルプロ 酸(≧10mM)投与により、対照群に比べてポジトロン核種^<18>F を含むグルコースアナログ ([^<18>F]FDG)の取り込みが増加しました。またバルプロ酸(≧30mM)投与により、対照群に比べ ミトコンドリア機能(テトラゾリウム塩WST-1の還元能)が有意に低下しました。以上の結果よ り、バルプロ酸によってミトコンドリアでの好気的糖代謝が低下し、代償的に嫌気的糖代謝 が亢進したと考えられた。これら脳内代謝活動の変化が、バルプロ酸の薬理作用および中枢 神経系副作用(ライReye症候群などの代謝性脳症やパーキンソン症候群など)の発症機序に関与 している可能性が示唆されました。


デパケン(バルプロ酸)の薬理作用と脳内代謝機能に及ぼす影響


 これまで、バルプロ酸の薬理作用と脳内代謝機能に及ぼす影響に関する研究としては、
 

 The pharmaceutical action and the effect against brain metabolic function of valproate
   Research Project Number:21791121
 

 バルプロ酸の臨床作用機序を、バルプロ酸のglycogen synthase kinase3β(GSK3β)に対する阻害作用に注目して検討しました。実験動物の海馬歯状回におけるGSK3βの発現を抑制したところ、強制水泳試験および尾懸垂試験において抗うつ様効果観察されました。 従って、バルプロ酸のGSK3β阻害作用が、バルプロ酸の臨床作用機序と関係している可能性が示唆されました。
 次に、バルプロ酸の中枢神経系における副作用の発症機序を、脳ミトコンドリア機能への直接的な影響に注目して検討しました。
 実験動物の脳切片にバルプロ酸を投与しますと、ミトコンドリア機能は低下しました。従って、バルプロ酸はミトコンドリアを傷害して中枢神経系副作用を引き起こす可能性があることが示唆されました。
 

 これとは、別に、薬剤性パーキンソニズムの機序について、以下のように指摘されていました。
 バルプロ酸でも、薬剤性パーキンソニズムとなる報告があります。

 一報告だけですが(Armon etal, 1996)、12 ヶ月以上、バルプロ酸を投与されていた患者36 例中33 例でパーキンニズムが出現したと言っています。ただ、中止とともに3 ヵ月から12 ヶ月で消失し、経過は良性であるとしています。これの報告以外にこれほどの頻度の報告はなく、まれな病態と考えられています。抗てんかん薬による副作用の機序としては、元々小さい病変を持っている患者で、しかもある医薬品に特異的な反応を示すという機序で出現する場合と、いわゆる薬物中毒という機序で出現する場合、さらに両者の機序が合わさって起こっている場合があると言われます。バルプロ酸での頻度の高い報告をした著者らは、バルプロ酸がミトコンドリアの機能障害を誘発したためと推測しています(Armon et al,1996)。
 

「ライ症候群」とミトコンドリア


  「ライ症候群(Reye syndrome )は、1963年にオースラリアの研究者による報告が、その由来です。報告者の名を取って、その名称があるのです。


 その典型的な経過は、まず風邪の症状があり、それがやや回復した時点で、 嘔吐と痙攣とが起こり、それから急速な意識障害が起こって、 治療をしなければ、最悪は死に至る、というものです。


 この病気は、一見脳の炎症のように思われますが、 脳以外の場所に特有の所見があります。
 それは肝臓の異常です。この病気は通常著明な肝臓の障害を伴うのです。
  肝臓の細胞の中に、脂肪が溜まります。
 それも、極めて小さな脂肪の塊が、殆ど全ての肝臓の細胞に溜まる、という特徴的な変化を示すのです。これは一種の脂肪肝です。
 しかし、通常の脂肪肝がある程度の年月を経て、 形成されるのに対して、この病気ではそれが数時間のうちに生じるのです。そして、肝臓の機能は急激に低下します。

 血液のデータで見ると、 血糖が低下し、血液のアンモニアが上昇、 肝臓の細胞が破壊されている指標である、GPT (ALT )という数値も上昇します。
 それでいて、黄疸は起こりません。これらの数値は、肝臓の働きが、 何らかの原因で急激に低下したことを示しています。 通常の急性肝炎とはまるで質の違う、 一種独特かつ急激な変化です。
 (急性の肝炎では、ほぼ間違いなく黄疸が起こるのです)


 肝臓の働きが悪くなると、 血糖が下がる、というのは、ちょっと意外に思われる方がいるかも知れません。
 しかし、血糖をいつもほぼ一定に維持しているのは、肝臓がブドウ糖を造って、それをじわじわと血液の中に送り出しているからなのです。
 もし急激な低血糖が起これば、その栄養を最も必要としている脳が、短時間でその機能を失います。


  「ライ症候群」では、急激な肝機能の低下と、 脳の浮腫(むくみ)や壊死が起こります。
 肝臓と脳という、一見無関係な臓器に、 同時に深刻な状態が急激に起こるのが、この病気の深刻な特徴です。


 では何故、こうしたことが起こるのでしょうか?


 その原因は長く謎のままに時が過ぎました。


 次にこの病気が注目されたのは、1970年代のアメリカです。
 インフルエンザと水疱瘡の回復期に、 「ライ症候群」の事例が頻発しました。
 インフルエンザの感染は、何故か殆どがB型でした。
 1974年の流行時には、4歳から12歳児のおよそ1700人に1人が、「ライ症候群」を発症し、7割が死亡した、とのデータが残っています。これはかなりの高率です。
しかも、生存者の3割には神経の後遺症が残りました。

 1980年代になり、インフルエンザや水疱瘡の時の熱に対して、アスピリンなどのサリチル酸製剤を、 解熱剤として使ったお子さんの方に、使わなかったお子さんより高率に、「ライ症候群」が発生している、との複数の研究結果が、報告され論議を巻き起こしました。
そのため、インフルエンザに対して、アスピリンを使用するな、というキャンペーンが張られ、その結果として、数年後には「ライ症候群」は激減したのです。


 この劇的な効果からみて、 少なくともアメリカで一時期頻発した「ライ症候群」の原因が、アスピリンであったことは明らかです。


 では何故、アスピリンが「ライ症候群」の原因になったのでしょうか?


 それは、アスピリンがミトコンドリアへの毒性を持っているためだと一応考えられています。


  「ミトコンドリア」というのは、 人間の細胞の中にあって、ソラマメのような形をしていて、 細胞が酸素をエネルギーとして使用するのに、 重要な役割を果たしている小器官です。
 これは元々は人間の細胞にあったものではなく、 一種の寄生体が入り込んで、そのまま一体化したものだ、と考えられています。

 ミトコンドリアはそもそもは人間と別物なので、 自己免疫等の原因により、容易に障害を受け易い部分だ、という事実です。
 実際にミトコンドリアの異常が、 多くの代謝疾患の原因として考えられています。

 「ライ症候群」の肝臓の組織を細かく見てみると、ミトコンドリアが腫れ上がり、アメーバみたいに変形している、という特有の所見が認められます。
 要するに、「ライ症候群」で障害されていたのは、脳や肝臓ではなく、ミトコンドリアだったのです。
 「ライ症候群」とは急激に発症するタイプの、ミトコンドリア異常症のことです。


 お子さんにウイルス感染が起こると、まだ未熟な免疫系が活性化されます。
すると、本来異物であった「ミトコンドリア」は、免疫の攻撃を受け易い状態になるのです。
 ここで、ある種の薬剤の影響が加わると、ミトコンドリアはより障害され易くなり、 「ライ症候群」が発症すると考えられています。


 アスピリンに代表されるサリチル酸製剤は、 幾つかの経路で、ミトコンドリアの働きを妨害する、と多くの研究で確認されています。
 通常その作用は強いものではないので、 一般の使用には問題はないのですが、お子さんがウイルス感染に罹った時に使用すると、 「ライ症候群」の原因となり易い訳です。

 それ以外に長鎖不飽和脂肪酸という油の一種や、 抗痙攣剤のバルプロ酸(商品名デパケンなど)も、 同様にミトコンドリアへの毒性を持っています。
 特にバルプロ酸は現在てんかん以外にも、 気分障害の治療薬として多用されており、その使用には充分な注意が必要です。


 「ライ症候群」の現時点での一番の問題点は、「インフルエンザ脳症」との関連性です。


 そもそもは「インフルエンザ脳症」と「ライ症候群」は、 別個に考えるべき病態ですが、 実際には統計によって、 「インフルエンザ脳症」の中に「ライ症候群」が含まれ、 同一のものとして議論されているケースもあります。
 (厚生労働省の脳症の研究班も、その立場に立っているようです)


 「ライ症候群」と診断するためには、 肝臓の組織の所見が必要になります。
 しかし、実際には行なわれないことが多く、 症状のみからその診断がなされている場合が多いのです。
 また、日本では「ライ症候群」の特徴とされている、「嘔吐」が初期に起こる事例は極めて少なく、本当に日本で診断された「ライ症候群」が、 海外の事例と同質のものなのか、 疑問に感じる点もあります。


 1999年に脳症の研究班が、 解熱剤のメフェナム酸(商品名ポンタールなど)や、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレンなど)と、 脳症との関連を示唆するデータを出し、 大きな問題となりました。
 ここには、明らかに「インフルエンザ脳症」と、「ライ症候群」とを同一視する視点がありました。

 これは本当に目を覆うような酷い話で、上の2つの薬剤は、実は海外ではお子さん向けには、使用されていなかったにもかかわらず、世界的な製薬会社であった筈の、ノバルティスもボルタレンの座薬を売りまくり、日本では小児の解熱剤で最も使用されていた薬であったのです。
 1980年代には「ライ症候群」の研究班が存在していたにもかかわらず、専門家も行政も、誰もそのリスクを指摘することはなかったのです。
 とことん酷い、ブラックジョークのような話です。

 ただ、その時点では日本のインフルエンザ脳症の原因は、解熱剤では、という観測があったのですが、実際にボルタレンやポンタールの使用が中止されても、日本における「インフルエンザ脳症」の発生に、それほど劇的な変化は起きていないのです。

 実際、日本で検証されたインフルエンザ脳症のうち、間違いなく「ライ症候群」と言える事例は少なく、 両者は明確に分けて考えるべきではないか、と思います。
 ことさら薬の副作用に目を瞑る姿勢も、何でもかんでも薬の副作用で説明しようという姿勢も、共に誤りだと思うからです。
 いずれにしても、ウイルス感染時の薬の使用には、充分な注意を払う必要があり、常にそのことを心に刻みつつ診療に当たりたいとは思っています。
 「インフルエンザ脳症」そのものの原因については、今後の検討を待ちたいと思います。


 このように、デパケンはミトコンドリアへの毒性が指摘されています。


片頭痛治療でのデパケン

 

 片頭痛の体質を有する患者は、小児期より脳の過敏性が高いことが論じられています。 特に片頭痛発作時は、視覚野である後頭葉内側に始まった興奮波が大脳の前頭葉に向かい波及していくが、後頭葉での興奮症状は閃輝暗点と呼ばれる視覚前兆として出現します。 毎回出現するこのような興奮症状を的確に抑制し、片頭痛発作を鎮静化するのがトリプタン製剤の概略的な作用です。
  片頭痛は一言でいいますと、頭痛の際に脳が異常な興奮症状をきたす頭痛であり、その興奮症状のために、痛み以外に光や音、さらにはにおいなどの外界の刺激に敏感に反応する頭痛とされます。市販の鎮痛薬は、この片頭痛の際の頭の痛みは取り去っても、水面下の脳の興奮状態は放置されたままとなっていると言われます。ですから、市販の鎮痛薬で痛みのみをごまかし続けると、水面下の脳の興奮状態が徐々に蓄積されて行き、ついには、はちきれんばかりの興奮状態が持続するようになると言われます。このような状態に陥ってしまうと、つねに光を敏感に感じ取り、太陽の光のみならず、室内の蛍光灯でも眩しがるようになります。診察室でも何となくまぶしそうに目を細めてしかめ面をされ、これを「脳過敏」と表現されます。


 小児の場合、こうした「脳過敏」をあらかじめ抑制させる必要があり、このために、片頭痛発作時にはトリプタン製剤を、さらに抗てんかん薬のデパケンを服用すべきと、されています。

 しかし、デパケンのミトコンドリア毒性を考慮すれば、このような子供の時期から投与すべきではありません。


  子供と慢性頭痛   http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12282125961.html


 小児片頭痛の予防薬としての第一選択薬は、シプロヘプタジン、アミトリプチン、ロメリジンである(ただし、いずれの薬剤も妊娠中もしくは妊娠中の可能性のある女子に対しては避けるべきであるので妊娠の可能性については常に充分注意すべきである)。小児片頭痛にバルプロ酸が予防薬として使用される場合は次のⅠ、Ⅱのいずれかの場合に限られる。


Ⅰ 生活支障度が高く、バルプロ酸以外の予防薬で効果がない場合
 生活支障度が高いと考えられるのは
 1) 回数は多くはないが毎回嘔吐を伴う、寝こんでしまうなどの強い頭痛
 2) 回数が多い(月に10日以上鎮痛薬を必要とする)
Ⅱ 脳波上にてんかん波がある片頭痛(あるいはてんかん関連頭痛)


 小児片頭痛にバルプロ酸を使用する場合には、内服開始前に血液検査(血算、生化学、アンモニアを含む)を行い、開始後2週間をめどに上記検査とバルプロ酸血中濃度を測定する。バルプロ酸による片頭痛発作の改善度を評価するために、頭痛ダイアリーの記載を勧め、次回外来通院を必ず約束し漫然と使用しない。思春期女子には妊娠中、妊娠した可能性が少しでもある場合には避けるべき薬であることを説明し、必要に応じて葉酸の併用内服を考慮する。
 小児てんかんにおけるバルプロ酸の維持量は15-50mg/kg、1回の増量幅は5-10mg/kg、治療域の血中濃度は50-100μg/mlとされているが、小児片頭痛においては、これよりも低用量で有効である可能性がある。


 このように学会でも、「バルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン」で厳格に制限されています。専門医のなかには、安易にデパケンを処方される方々がおられますので、注意が必要です。


 さらに、「脳過敏症候群」を治療するために抗てんかん薬のデパケンを使用すべきとされます。


         未だに、ネット上で幅をきかす脳過敏症候群
       
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12281301551.html


 このように、片頭痛治療の場面では、デパケンは極めて安易に使われています。
 このように、抗てんかん薬のバルプロ酸(商品名デパケンなど)の「ミトコンドリアへの毒性」が懸念され、片頭痛とミトコンドリアの関連性が示唆され、これまでマグネシウム不足の改善とビタミンB2の投与が推奨された時期もあったようですが、現在では、片頭痛の予防薬として「バルプロ酸(商品名デパケン)」が認可されているということは、何なのでしょうか?
       
 このように単純に、脳過敏の原因がどこからきているのかを一切、考察をすることなく、単純に、「脳過敏」を抑制することを目的で使われているということで、まさに子供並みの単純な発想でしかないということです。
 このことは、現在、片頭痛が後天性ミトコンドリア病と考えられているにも関わらず、これを容認しないための結果でしかありません。
 そうなれば、まさに真逆のことをしていることになります。
 学会でも容認されているのかもしれませんが、これは国際頭痛学会が容認しているだけのことであり、ここでは繰り返さないことにします。

 日本の学会は、自ら検証もすることなく、国際頭痛学会に追随しているだけのことでしかありません。


 今後、こうした薬害が表面化しないうちにブログ上で警告を発しておく必要があるようです。
 ここでも、私達の身・体は、自分達で守っていく必要があるようです。


 デパケンには、ミトコンドリア毒性のあることを忘れてはなりません。特に、子供に服用させる際には、相当の覚悟をもって服用させなくてはなりません。親としての責任は重大です。このようなデパケンを服用する前にするべきことがあるはずです。このことは、「子供と慢性頭痛」で述べたことです。

 

 このように、片頭痛研究の世界は、諸々の問題点が山積しています。しかし、こうしたことを、まったく問題視されることはありません。