四苓湯 と五苓散 | 漢方1日1歩のブログ

漢方1日1歩のブログ

1日生きるとは1歩進む人生でありたい(by湯川秀樹)の言葉のように、傷寒論や類聚方広義、勿誤薬室方函を参考に1日1歩づつ漢方医として成長していきたいと思っています。(実際に患者に処方するにあたっては添付文書を参照され、自らの診断と責任でご処方ください。)

 四苓湯と五苓散の違いは桂枝の有無でである。桂枝が抜かれたのは、時代背景があり五苓散が主に寒邪による障害により生じた傷寒を論じた『傷寒論』を出典としているのに対し四苓湯では熱(温)邪による障害を論じた『温疫論』を出典としていることに関係している。桂枝の薬能として辛温解表(温めて寒邪を除く)があるが、この作用が熱邪に対して不適なため四苓湯では桂枝が除かれて立方されている。また桂枝は薬能を上部に引き上げるとされ下部の疾患では桂枝の配合を嫌う場合がありこのようなときも四苓湯は便利である。

 医療用漢方製剤の四苓湯は、大杉製薬のみが発売しており、取扱い医療機関は少ないが私の臨床では、下肢の浮腫はもちろん、他の薬方への加味などなくてはならない薬方である。しかも大杉製薬の四苓湯は生薬末であり、湯液でない本来の四苓散の効果を実感できる。浅田宗伯の『勿誤薬室方函口訣』では


四苓湯は雀目(鳥目)を治す


と記載がある。苓桂朮甘湯や五苓散が眼科に応用できることは周知の事実であるので効果があると想像できるが、私自身は鳥目に四苓湯を使用した経験がない(眼科でないのでそんな患者が来ない)。症例をお持ちの方がおられましたら教えていただけたら幸いです。
 吉野ヶ里遺跡と同時期にできた五苓散と江戸時代にできた四苓湯が現代漢方では同等の価値を持ったものとして治療に役立てられている。この2つの処方成立の年月の差が京都遷都から現代までより長いことに漢方の懐の深さを感じずにはいられない。



参考文献 勿誤薬室方函口訣釈義 長谷川弥人 創元社


毎日7時に更新中。応援していただける方は1日1クリックお願い致します。


にほんブログ村