今回も前回に引き続き、「佐藤秀峰」さんのことをお話します。
その1で書いた通り、ご自分の漫画、「新ブラックジャックによろしく」第9集のカバーイラストを描かないということになった経緯。
さあ一体、なぜそんなことになったのか?
その内容はこの下に…。
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なぜ、単行本のカバーイラストを描かないのか?そのことについて考えるのなら、このことについて触れる必要がある。
「単行本は誰のものなのか?」
一見すると単純な話のように思える。「そんなもの作者のものに決まってる」という声が聞こえてきそうだ。
実際、ボクも漫画 on web 佐藤秀峰日記 を見るまでは、漠然とだがそんなことを思っていた。
しかしそうではなかった。
確かに内容の「著作権」は作者である、佐藤秀峰氏が所有している。
しかし、単行本の「商品としての権利」は出版社が所有しているのだ。
つまり、乱暴な言い方をしてしまえば、「新ブラックジャックによろしく」という漫画の生みの親は佐藤氏であるというのに、「単行本」という商品になると彼はあくまで「単行本」という商品の一協力者でしかありえないということだ。
その証拠として、佐藤氏の日記に書かれていた内容を要約するとこうなる。
佐藤氏が出版社に「ボクは作者であるのだから本を原価で販売して欲しい」という旨を伝えたところ、出版社の回答としてこう返ってきた。
「単行本は出版社の商品ですのであなたには原価で販売できません。あくまで著者関係者ということで定価の80%での販売になります」
はっきりと「商品としての権利」は出版社のものであると明言している。
この内容自体は、別段なにか問題があるわけではない。
問題はこのあとにある。
単行本はあくまで出版社の商品。ならば単行本のイラスト、装丁などは誰がすべきか?
当たり前に考えれば、「商品としての権利」を所有している出版社がすべきことであるのは明白である。
現に装丁などは出版社がどこかに委託してるのだ。
では、単行本のイラストは誰が描くのか?
もちろんその漫画の作者である。
そして、これこそが最も問題のある部分なのである。
作者は内容においての「著作権」を所有していることは上に書いた通りで、もちろん単行本が売れた時の印税が入ってくるのは当たり前である。
しかし、出版社の商品であるはすの単行本のカバーイラストに関しては、お金、つまりギャラが発生していないのである。
作者の商品ではないはずの単行本。しかし、それのイラストを描いてもギャラが発生しないというのは本当におかしな話である。
分かりやすい言い方をしてしまえば、「ただ働き」である。
これだけで十分にカバーイラストを描かないという理由になりそうなものだが、今まで単行本のカバーイラストを描いてきた佐藤氏が、最後を締めくくるはずの本のカバーイラストを描かないと言い出すことになるとは、とてもじゃないが納得がいかない。
それは、もっと人間としての深い部分の問題が関わっているのだった。
漫画家 「佐藤秀峰」 その3に続く。
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いやあ、今回も終わらすことはできませんでした…。
このペースでいくと更にのびてしまいそうな気がしますが、お付き合いいただければありがたいことです。
もうしばらく、楽しみにしていてください。