ブッシュ大統領のヤルタ協定批判 | 読書は心の栄養

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主に自分の最近読んだ本の忘備録

2005年5月7日、ブッシュ大統領はバルト三国の一つであるラトビアの首都リガで、
1945年の「ヤルタ協定」を徹底批判するスピーチを行った。
これは歴史上、極めて大きなアクションでしたが、日本では全く触れられなかった

ハーバード大学のサイトからスピーチを抜粋すると、
As we mark a victory of six days ago—six decades ago, we are mindful of a paradox,’ stated Bush. ‘For much of Germany, defeat led to freedom. For much of Eastern and Central Europe, victory brought the iron rule of another empire. VE Day marked the end of fascism, but it did not end oppression. The agreement at Yalta followed in the unjust tradition of Munich and the Molotov-Ribbentrop Pact. Once again, when powerful governments negotiated, the freedom of small nations was somehow expendable. Yet this attempt to sacrifice freedom for the sake of stability left a continent divided and unstable. The captivity of millions in Central and Eastern Europe will be remembered as one of the greatest wrongs of history.

私の拙訳

60年前の勝利を記念するにあたり、我々はパラドックス(矛盾)に十分気がついている。
ドイツの多くにとっては、敗北が自由をもたらした。
しかし、東欧と中欧の多くにとっては勝利は別の帝国(ソ連)の鋼鉄の支配をもたらした。
VE Day(ヨーロッパ戦勝記念日)はファシズムの終焉を意味したが、それは抑圧の終わりではなかった。
ヤルタ協定はミュンヘンと独ソ不可侵条約の不公平な伝統に従った。
さらには、強大な政府が交渉した結果、小国の自由はある程度犠牲にされた。
しかし安定のために自由を犠牲にしようとする試みはヨーロッパ大陸を分割し、不安定にした。
中欧・東欧にいる数百万人の束縛は歴史上最悪の出来事の一つとして人々に記憶されるだろう。


藤井厳喜さんの「騙される日本人」によるスピーチ全体の要旨
「ヤルタ協定」は、安定のために自由とデモクラシーを犠牲にした邪悪な協定であり、
その点において、独ソ不可侵条約(モロトフ=リッペントロップ条約)や、ミュンヘン宥和
と同じような不正の伝統に連なるものである。
この安定という目的のために自由を犠牲にしようという企ては、結局、
ヨーロッパ大陸を東西両陣営に分裂させ、不安定なものにしただけであった。
中央ヨーロッパそして東ヨーロッパにおいて、何百万人もの人々が自由を失い、
捕らわれの身となった事実は、歴史上最大の不正(過ち)の一つだった。
第二次大戦後、アメリカ国民は自らこう問わねばならなかった。
我々は、ヨーロッパを武器を持って対立する両陣営に分裂させるためだけに、
犠牲を払って戦ったのだろうか?
やがて、アメリカと同盟国は新たな決意を固めた。
我々は、とてもヨーロッパの半分の解放だけでは満足できない。
そして、我々は「鉄のカーテン」の向こう側にいる友人を忘れないと決意した。
我々はギリシアとトルコの自由を護り、封鎖されたベルリンに空輸で物資を供給し、
ラジオで自由のメッセージを伝えた。
我々は(鉄のカーテンの向こう側で)自由のために抵抗する人々を支持し、
壁を壊すために(共産主義)帝国に挑戦し、外部からの圧力と、
それ自身の内部矛盾のために、徐々に共産主義は崩壊を始めたのである。
長い忍耐の年月の間も、アメリカは(ソ連)帝国によるバルト三国の占領を拒否し、
本国で違法とされていた自由ラトビア、自由エストニア、自由リトアニアの国旗は、
アメリカにおける各国外交団の上にたかだかに翻っていたのである。
バルト三国の人々は、人間の鎖をつくって独立のための抗議行動を行い、
ついに(ソ連)帝国は崩壊し、ヤルタの遺産は永久に葬られたのである。
・自由は疲れたり足踏みしているわけではない
いま、イラク、アフガニスタンでも中東でも自由とデモクラシーへの運動が展開しつつあり、
アメリカはそれを熱烈に支持する。
自由が勝利すれば、テロリズムは敗北する。
自由は前進を続けている。
この秋、エジプトでも、国際監視団を受け入れて、初めて真に自由な大統領選挙が行われる。
・我々は「ヤルタ協定」で行ったような過去の過ちを繰り返してはならない。
専制政治、独裁者を宥和しようとしたり、見せかけの安定のために自由を犠牲にするのは
重大な過ちである。
いかなる国、何者の自由も犠牲にしてはならない。

長期的には、真の自由を追求してこそ、真の安定も生まれるのである。
・全ヨーロッパの自由は勝ち取られた。
しかし我々はそれに満足すべきではなく、我々の視点をより高くして、
さらに遠方にある偉大なゴールを目指すべきである。
それは全世界からの専制政治の駆逐である。
今再び我々は、(自由という)原則の下に団結して、
他国、他人の自由をも我々自身の自由と同様に尊重しなければならない。
そして再びわれわれが自らの役割を果たしさせするならば、自由は必ずや勝利するのである。