ゲーム理論の中に非協力ゲームと呼ばれるパータンがあり、時間の経過や相手の出方に沿って意思決定のツリーが展開していきます。たとえば、参入障壁を作るために相手が出店すると、敵対側は相手が嫌がる地域に出店する、値下げセールをする。しかし、相手が挑戦を控えれば、対応を緩和するという飴と鞭型の展開となります。
ゲーム理論の入門書などでも必ずと言っていいほど紹介されていますから、ツリーを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
さて、私たち日本人には中国の防空識別圏は実に唐突に映り、「なんでまた、この正月休みが接近している中でそういう困ったことをしてくれるんだろう? 海外旅行に出にくいだろうが・・・」と困惑しますが、中国にしてみれば、ゲーム理論の非協力・時間経過とともに対応を変える意思決定を展開しているだけ、かもしれません。
中国にしてみれば、尖閣周辺は太平洋側に出る軍事的、商業的にも重要な航路です。
そこを盛んに日米同盟を口にして、国有化してしまったのは日本でした。
聞くところによると当時の胡錦濤主席はわざわざ当時の野田総理と直接話す機会を国際会議の席で待っていて、野田総理を見つけるや、
「野田さん、尖閣を国有化しないで下さいよ。今まで通り、ゆるゆる管理でいいではありませんか」
と言ったとか。
その3日後に尖閣国有化されてしまったので面子をつぶされた中国側は日本製品不買運動のデモで怒りを示したと言われます。
さて、その後、登場した自民党・安倍総理のもとでなされているのが日銀・黒田総裁のもとでの国債買い上げ政策。中国にしてみれば日本はお金が必要になればいつでも日本国債という名の借金ができ、それを市中の金融機関が運用目的で購入しても、日銀が国民の税金でいつでも買い上げてしまうので、借金し放大が可能。
これで日本の銀行は運用対象を米国債等に広げざるを得なくなり、結果、得をするのは財政難のアメリカだとも見えているのかもしれません。
しかも証券税、消費税の大増税で世界一金持ちな国民からの税収アップを図り、日米同盟を強化し、国家安全保障局を創り、特定秘密保護法案も国会で可決したとなれば、中国側には、財政の崖を抱えてお金のないアメリカに代わって日本が戦費調達をしているとしか見えないのではないでしょうか。
当のアメリカは二枚腰。
中国の防空識別圏に対し、アメリカの民間機には飛行計画書の提出を求めていますが、でも、防空識別圏は容認していないという玉虫色の政治姿勢を示しています。
表面上、アメリカは中国と敵対はしないし、できない。理由は中国が現在、米国債を大量に保有しているし、外貨準備も豊富だからでしょう。
中国国内では理財商品償還不能となれば、金融波瀾が起こりかねないので、中国もことは荒立てたくはないでしょう。
しかし、隣の国・日本の動きがあまりにも露骨なので、ならばゲーム理論の非協力・展開型でこう出ればこうする、こう出れば、ああすると場面場面で石を打っているのだと思います。その一環で向こうにしてみれば特定機密保護法に対応しての防空識別圏設定なのかもしれません。
ちなみに展開型ゲームでは双方が妥協するほうが妥当な利得が得られます。
この均衡をどう破ろうかと計画を練っているのが国際紛争が高まれば高まるほどもうかる企業体でしょう。
ちなみに証券税は来年から特定口座・一般口座ともに大増税(10%から20%)です。税収をアップしたい日本としては証券市場の活性化は大歓迎。
日本の投資家がこのあまりにもウツクシク描かれ過ぎた羊道に本能的に食傷気味と感じても、ドル高円安が登りにくい坂道を後押ししてくれるでしょう。
ドル円、日本株はちょっと面白い景色が続きそう。
まだもう少し周囲は明るくて。
日本の政治を民主党が3年3か月担当していた期間にどうしたら大きな反対をされずに様々な日本の現状を改変できるのかと飴と鞭作戦で練りに練られた世紀の国際政治大転換の場面をよく見て、私たちもゲーム理論展開系で対応したいものです。
欲で膨らんだ重たいお荷物をたっぷり、背負って下り道でけつまずかないように、気を付けながら。
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