日本語学校から学生が進学する「つなぎ」専門学校と「かまし」専門学校。 | 管理職日本語教師の、相当深~いつぶやき。

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私たちの可能性は、こんなもんじゃない。

いよいよ本格的な受験シーズンですね。


特に昨今増えている、日本語力ゼロで入国した非漢字圏の学生。

どこの学校も、中韓と比べて受験結果が出にくいとピーピー言っているようです。


でも非漢字圏の留学生は年々増加傾向。

でも日本語教師は未曾有の不足。

ましてや受験指導できる先生は、とても限られてくる。


どうすりゃいいんだ?!


という学校のお悩みに答えるように、最近専門学校ではこんな学校、学科が増えているようです。


「かまし」の専門学校と「つなぎ」の専門学校。


この2つの特徴は


①どちらも留学生専門のクラスで、日本人クラスとは分かれている。


②どちらも非漢字圏学生を、積極的に取っている。


③だからどちらも、日本人が行く専門学校より、若干選考基準が甘い。

 (クラスに日本人が混在する専門学校は、入学時JLPTの「N2相当」を要求されるが、これらの専門学校は「N3レベルでも可」としているところが多い。)


④どちらもほとんどが授業料分納可


です。


ではこの「つなぎ」と「かまし」、どこが違うのでしょうか?


実は「大違い」なんです!


まず「つなぎ」専門学校。

「つなぎ」とは、ビザを繋ぐ、という意味。


ビザだけは繋いでやるけど、勉強とか就職とか、そのほかの事は期待しないでね。

というスタンスの学校が多いようです。


私がこのブログでもたびたびご紹介しております「いらっしゃいませ専門学校」と呼んでいる学校がこれです。


一度私、この「つなぎ」専門学校の代表みたいな都内の学校に「授業を見せろ」とねじ込んで、授業を拝見した事がありました。(それは2014年頃、このブログでも報告しましたが。)


いや~、ひどかった。


授業と呼べるものではなかったです。


もちろん学生は、楽しそうでもなんでもなく、寝てるか、話してるか、死んだような目で虚空を見つめてるかでした。


加えて、就職率ゼロ。

就職率は?との質問に、「ほとんどゼロですね。」と平気な顔で答える担当者の方の神経を疑いました。


じゃ学生は2年終わったらどうするのか?との質問に、「当校の○○専攻科に再入学する学生がほとんどです。」だって。

・・・つまり学費2度取り。


「説明会?そんなもん開きません。でも12月には毎年定員いっぱいに「なりますから。」

との担当者の方の言葉に、いちいちムカついたのを覚えています。


でも、他の専門学校では考えられないようなレベルの低い学生でも、入学させてくれる。

そして、そんなつまらない授業でも、出席さえしていれば、ビザ更新できる。

課題とかはほとんどないので、空いている時間は好きなだけ(週28時間)バイトできる。

留年もしない。


まあ2つの専攻科をまたいでの、合計4年間、勉強はしないけど、アルバイトで稼いで4年終わったら国へ帰るという計画で入学すればいいのです。


これが日本の高等教育機関か?!

と、当時自分のブログで、文句いっぱいの記事をUPしたのを覚えています。


ビザさえ繋がればいいのか?

これには賛否両論ありますね。


こういった「つなぎ」専門学校、10年前なら入学式も終わった4月に、まだ定員割れで募集を継続してたりして、日本語学校から「誰が行くか。そんな学校。」と馬鹿にされてました。(あのころは中韓の学生が全盛でした。)


でも最近は、こんな「つなぎ」専門学校でも、願書受け付け開始と同時に出願が殺到し、すぐに申し込み締め切りになる学校もあります。

競争率も跳ね上がっています。


日本語学校の教師も、上記に書いたような「つなぎ」専門学校の内状をよく知っているから、できれば行かせたくない。

でも日本語学校の2年間は短く、時間がない。だから日本語力が足りない。

学生のお金も厳しい。

でもお客様(学生)のこれだけは!という要求、つまり「ビザを繋ぐ事」は最低でもかなえてあげたい。


結果、こういう学校に出願させることを許してしまうのでしょう。

そのお気持ち、よくわかります。


片や「かまし」専門学校。


「かまし」とは「噛ます」の意。


「動かないように隙間に押し入れる。  くさびを~~す。」(広辞苑 第六版)


つまり、日本語学校での教育を終えて、専門学校での本来の専門的な勉強、(「車」だったり「料理」だったり「IT」だったり)の前に、日本語学校では足りなかった日本語の勉強を1年ないし2年し行い、それと並行して専門的な勉強をさせてくれる。

そして更に「つなぎ」じゃない専門学校へ入学するための受験指導までしてくれて、本来学生がしたかった勉強ができるまでの橋渡しをする学校。


これを私は「かまし」専門学校と読んでいます。


この専門学校のかまし方には2通りあって、


①かまし期間のみ在籍して、他校を受験して答えが出たら1年で修了(最長2年在籍可)


という主に受験指導を専門にする学校と、


②1つの専門学校の中に「予備科」(名前はいろいろです)的な準備クラス(いわゆる「かまし」クラス)がある。

例えばN3レベルで入学した学生が、1年目は「車」や「料理」の専門的な勉強の基礎の部分と同時に、日本語の授業で日本語を強化し、1年でN2相当まで実力をつける。

そして、2年目から2年間、本来の専門分野の勉強をするという、全部で3年かけるコース。


この2種類。


我々日本語学校が本来であればもっていきたかったけど、時間がなくて持っていけなかったところまで、それを引き継いで、代わりに面倒を見てくださる。


すごい手間暇だと思いますよ。

私も専門学校の専任講師を、少し勤めた事がありますから、いろいろ制約があるあのシステムの中で、それなりに答えを出そうと思ったら、結構なマンパワーで、時間と労力をかけなきゃ結果は出ない。


でも、日本語学校より資本力がありますから、データーを蓄積して管理したり、設備的にも充実させたり、クラスを細分化したり、指導人員を増やしたりなど、うまくやっている良心的な学校は日本語学校より強い部分がたくさんあります。


ありがたいです。本当に。

「つなぎ」とは大違いです。


ところであなたは、非漢字圏を積極的に受け入れている学校を見て、「ここはつなぎ」「ここはかまし」と見分ける事ができますか?


中には

「かまし」のフリした「つなぎ」という学校、

「かまし」を目指していたけど最近「つなぎ」に堕落したという学校、

というのもあるんですよ。


では、この「つなぎ」と「かまし」、どこで見分ければいいのでしょうか?


それは・・・ずばり、進学率、就職率です。


どちらの学校も合同説明会などに行くと、パンフレットを用意していて、いろいろ説明してくださいますが、私は必ず

「進学率は?」

「就職率は?」

「リタイア率は?」

この3つを質問します。


しかもそれは必ず留学生だけの数字(日本人は含まない数字)でなければなりません。


まず、この質問に答えられない学校、


「日本人を含む、学生全体のパーセントしか出してないです。」


「ちょっと今日は資料を持ってきてないですね。すみません。」


「まあ指導はしていますので、がんばった学生はそれなりに・・・。」


なんて答えしかできないところは論外。

留学生の指導は期待できません。


また、リタイア率とは、学生が入学生から卒業までにリタイアする率。

パーセントが高いところは、当然リタイアの理由も聞きます。

それを「さあ、ちょっとわかりません。」という学校も×。


学生がリタイアしたんですよ。

普通その学校では大きな問題でしょ。

理由から何から職員全員が知っておかなければならない。

同じような学生が出ないように、職員全員で、問題を解決していったり、取り計らっていかなければならない。


それを、学生が辞めた理由もわからないなんて、リタイアする学生が多すぎるか、学生を大事にしていないかどちらかです。


次に。


当然、いい学校は「就職率」「進学率」に関しては、高い数字を出してくる。


でも考えてみてください。


入学時に日本語レベルがあんまり高くない学生、つまり日本での情報獲得能力がまだ弱く、自分で次々になんでも進められる学生じゃないのに、就職や進学までこぎつけるには、何か学校側の相当な努力や、独自の方法や、秘策がなければ、普通の(中韓と同じ)方法では無理です。


じゃそれは何なのか?

質問しましょう。その取り組み内容を。


そういう特別な事をやっている専門学校さんや大学さんは、この質問をするやいなや「待ってました!」とばかりに、

こんな事も、

こんな事も、

あんな事まで

やってます!


と、得意げに話し始めて止まらない。

(中には40分以上聞かされた学校もありました。)


しかし、取り組みなんかしないで、数字だけでっち上げてる学校は、

「就職率を上げる事ために、いろいろ御尽力されている事とか、あると思うんですが。」

「そうですね、就活を早めにやらせてます。」

・・・・・・・・・(シーン)・・・終り。


こんな感じ。

一問一答。


ねっ。

たかが説明会。されど説明会。

こちらに聞き出す力があれば、10分程度の話でも、いろいろな事がわかってくるんですよ。


結論!


●数字を具体的に上げられない専門学校や大学は、論外。留学生を大事にしない学校と思え。


●入学時、日本語が下位だった非漢字圏学生が、それなりに結果を出すには、何か特別な取り組みがあって然るべき。それを探り出せ。取り組みがあれば「かまし」。「なければ「つなぎ」。


●学生は入れれば「つなぎ」だろうが「かまし」だろうが、どちらでも構わないと思っている。どちらの学校に入るかで、この先の人生がこんなに変わってくるんだよ!と教えてあげられるのは、我々日本語教師しかいない。


●学生が「かまし」に入りたいと思っても、どの学校が「かまし」で、どの学校が「つなぎ」かはわからない。「つなぎ」担当者は、学生ぐらい巧妙に言いくるめられる。

教師が調査して情報を得たり、または他の日本語学校進路担当者と情報交換して、留学生専門クラスがある専門学校の内状を探るべし。


●前は「かまし」だった学校も、トップが変わったり、教務主任が変わったりするだけで、1年で簡単に「つなぎ」に堕ちる場合がある。教師は知っている学校でも毎年説明会に行き、堕ちてないか内状を探れ。


●逆に「つなぎ」だった学校が「かまし」に変わるには、相当な時間がかかるし、相当力のあるトップが上に来ないと、変わるのは無理である。でも中にはそういう学校も出てくるかもしれない(相当確率低いが)。進路指導担当の教師なら、先入観で見ないで、その年のその学校の状態を見抜く力を持て。


●説明会だけど、説明を聞いて終わりじゃない。探れ!


以上です。


ところであなたは、大学、専門学校の説明会へ行って、担当者と話した事がありますか?