産科医解体新書(108) ヘルペス感染にご用心 | 横山歯科医院

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[産科医解体新書(108) ヘルペス感染にご用心]

(産経新聞  2010年10月5日)


今年の夏、僕は12日連続当直の後、お尻に帯状疱疹ができてしまいました。
帯状疱疹はものすごく痛く、いすに座るのもつらかったです。
帯状疱疹の原因は水ぼうそうのウイルスで、これはヘルペスウイルスの一種
です。


ヘルペスといって多くの人が思い浮かべるのは、唇の辺りにポツッと水疱が
できて痛みを伴う「口唇ヘルペス」でないでしょうか。
これは、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染することで起こります。
お尻や性器など下半身にできる「性器ヘルペス」もHSVによるものですが、
唇にできるのは1型、下半身にできるのは2型が多いといわれています。
感染は粘膜や皮膚が直接接触することで起こります。

そのまま放置しても2週間ほどで自然治癒することもありますが、重症化
すると大変です。
僕の働く病院では1年に1人くらいは排尿もできないほどの痛みで入院を余儀
なくされる方がいらっしゃいます。
尿道にカテーテルを入れて痛みが治まるまでしばらくベッドでの生活です。

症状がなくなっても、ウイルスは神経節の中に潜んでいて、風邪をひいたり
疲れがたまったりするなど免疫力が低下したのを契機に再発を繰り返します。
これ自体が命にかかわるような病気ではないとはいえ、注意が必要です。
薬を使えば早く治癒するので、症状が出たらひとまず医療機関に相談すると
よいでしょう。


妊娠中にヘルペスに感染しても、ほとんどは心配ありません。
ただ、10カ月近くになっての初感染で、産道の近くに潰瘍ができた場合は
慎重に扱わないといけません。
産道を通っての出産では胎児が感染しやすいので、帝王切開を勧めることに
なります。
分娩間際にたまたま感染した妊婦さんから、「この程度でおなかを切りたく
ない」と激しく拒否されたことがありますが、こればかりはタイミングが
悪かったとあきらめていただくしかありません。
胎児が感染すると重症化しやすく、生命にかかわることもあるからです。

(産科医・ブロガー 田村正明)


http://sankei.jp.msn.com/life/body/101005/bdy1010050730003-n2.htm