ディケンズ「漂泊の孤児」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 水原勇気

水島新司「野球狂の詩」水原勇気はもちろん日本では唯一のサウスポー・アンダースローで、その華麗な“サブマリン”フォームは実は(大好きだった)阪急ブレーブス・山田久志とそっくり。男性でも難しいとされる左アンダースローゆえ、実写版の木之内みどりでは当然ながら無理。そこで山田久志のフォーム左右を反転、長い手足は水島新司マンガを参考に、顔は木之内とツギハギして描いたが、さすがにちょっと無理か。

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 ディケンズ:漂泊の孤児(オリヴァー・トゥイスト/昭21)不破書房

松本泰・恵子夫妻による共訳による「漂泊の孤児」原題は「オリヴァー・トゥイスト」である。戦後の仙花紙本だが、初出は昭和の初期に編まれたディケンズ全集から、適せん抄を省いて出版したものだろう。戦前から戦後しばらく松本恵子訳で英スタンダード小説の多くが翻訳されており、気がつかないままお世話になっている人が多い。松本泰はミステリも書いていているので、そちらの分野でご存知かもしれない。

さて、孤児のオリヴァー・トゥイスト(織部捨吉)の流浪の苦難と出生の秘密をめぐる物語だが、戦後短縮版は下巻冒頭にちょっと展開に飛躍があるが、テンポ良くしかも好訳だと思われる。スリの一味に紛れ込んでしまった捨吉君に「こいつが袂叩き(たもとたたき←スリ)にならねぇのは惜しいもんだな」などと言われてキョトンとするシーンなど、下層の会話が活きいきと描かれている。和名・織部(上流の出身ながら)捨吉(捨てられた)感じがよくでている。

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 ディケンズ:漂泊の孤児 口絵・宮本三郎

ちくま文庫版・小池滋訳「オリヴァー・トゥイスト」には原著のものと思われるG.クルックシャンクによる挿絵がかなり入っている。そうした英国の雰囲気を漂わす、宮本三郎の口絵が上下巻各一葉づつ挿入されている。可もなく不可もなくというところ。私的には、ちくま文庫小池全訳版より松本版をお勧めしたいところだが。2冊で500円。