ディケンズ「少女瑠璃子」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
みずすまし亭通信-0544

チャールズ・ディケンズ「少女瑠璃子」昭和12年、戦前にヂッケンズ物語全集全10巻/第4巻として発刊された。原題は「骨董屋」ディケンズの初期(1840年)傑作である。ちょうど江戸時代天保の頃。訳は松本泰・恵子夫妻、共に国産ミステリの黎明期に活躍した。主人公ネル(瑠璃子)の祖父トレント(富田老人)、敵役の高利貸クウィルプ(桐生谷吉)などと和名に変えてある。お金の単位は“両”、地名などはロンドンのままだが適当にぼかしてある。

結局、朝方まで寝ずに読んでしまった。冷えきった鋼鉄のココロを持つ私にして、ラストは泣ける。少女もの「おしん」のルーツはここにある。見返し裏に整った文字で「岩手高女二ノ一 浅沼アキ」併せてローマ字で署名が入っている。戦前幾度も読み返したと思われる岩手の女学生浅沼さんは、歳からいえば戦前にご結婚されて夫は応召、仙台で軍務に就き下関から北支南支と出征。はたして戦後は帰国をされて幸福な家庭を築かれただろうか、などと余計なことを考えてしまう。生きておられれば90歳くらい。

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県内ワインメーカーのブライダル用ラベルのためのイラスト。10年ほども仕事をさせていただきました。ここのラベルはほとんど手がけたのですが、数年前にすべてリニューアルされましたね。