オルコット「薔薇物語」松本恵訳 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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運転免許証更新の待ち時間に、オルコット「薔薇物語」は松本恵の翻訳を選んでみました。松本恵は明治24年函館生れ。青山女学院英文専門科卒業後、三年間ロンドンに滞在、同地で推理作家松本泰と結婚し、共訳で「ディケンズ物語集」を刊行したり、やはりオールコットの「若草物語」など数多くの翻訳を手がけます。児童文学というか少女文学に大きな足跡を残しました。Wikipediaには「中野圭介」の名でミステリを書いてるとありますが、初耳です。

「薔薇物語」の主人公・田舎娘のポリイは都会の上流階級の家にホームスティしますが、その慎ましく明るく飾らない性格で、その家の家族である我がままな子ども、神経質な母親、仕事にかまけてばかりの父、孤独なおばあさん達から親和力を引き出し、善良な気持ちを抱かせるようになっていきます。まぁ「大草原の小さな家」みたいな旧弊な道徳文学ですが、ポリイのような娘だったら皮肉屋のおじさんでも欲しくなります。

 オルコット「時代遅れの娘」ポリイ ながたしなみつつしみは遥か

「薔薇物語」原題は An Old Fashioned Girl の抄訳。可愛らしい装幀は洋画家の高井貞二なのに驚きました。昭和24年の出版です。

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おまけに6年後の成人して花開いたポリイの続編が掲載されています。音楽の教師として自立し、弟の大学修学資金を援助しつつ、自分らしく分にあった暮らしを心がけています。もったいなくも、上流階級のお金持ちの紳士の求愛をそれとなしに断りを入れたりしています。美しい物語を衒いなく美しく描けた時代は遠い昔となりました。

 美しき「薔薇物語」衒いなく描かれし時代(とき)遥けく遠く

 オジサンの「薔薇物語」読むてふはショートケイクの味噌味のごと

まことに乙女ココロなおじさんは、プリンの味噌ソースかけがごときスイーツなるかな。