新聞小説「マイストーリー」(2) 林 真理子 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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マイストーリー(2)94~124(8/5~9/5)

 作:林 真理子 挿絵:三溝美知子

 続きは(3)

感想
大体、副題の単位でストーリーが完結するパターンが見えて来たので、今後はこの単位でまとめる事にする。
今回はユアーズ社に取締役として入って来た辺見を巡る話。
清掃会社社長の話はただの挿入で、ここから発展する事はなかった(肩スカシ)。辺見についてはただ何でもかんでも提案して上すべりしている様子を書き綴っているだけで、業界の実情を描くとは言っても読んでいて全く面白くない。
浦田絵里の身の上話、それはそれで興味ないとは言わないが、話だけで終わって「で、なに?」状態。
エピソードを重ねるうちに新たな展開があるのか、まだ判らないが、今のところ継続的につきあいがあるのが大手出版社の中井。

 

林真理子にしてはつまんないテーマを選んでしまったなー、というのが正直な印象。彼女ならもっと面白い新聞小説書けるはずなのに・・・・
だから挿絵もつまんなくて、アップする気にならない。

 

あらすじ

動く人々(94~124)

漆エリナの一件が落ち着いた頃、彼女を紹介してくれた老舗出版社の中井からTEL。飯の招待。中井の会社での自費出版部門のアイデア「山の上ホテルパック」(申込み者をホテルにカンズメにして原稿を取る:オプションで60万)に初めて申し込んだ人。

清掃会社を興した60代半ばの女性。
カンヅメになったはいいが、退屈で夕飯をつきあえとの催促。

原稿が書けなくてライターを探しており、そこで太田に話が来たもの。相手に興味を持ち、太田は行くことにした。

 

山の上ホテル内の店で中井と落ち合い、業界話をしているうちに、当の女性が現れた。遠藤美鈴。

3回の離婚経験、子供は5人。

飲むうちに舌も滑らかになり、会社を興した経緯など話し始める。だがいま一つ平凡な印象。それは美鈴自身が痛感していた。

自分で原稿を起こす難しさも判り、ライターを紹介して欲しいと改めて太田に依頼。

 

発注を1千部追加する話などして盛り上がった後、美鈴と別れて中井が太田に、次の店へと誘った。
中井が始めた話。中井の勤める会社の社員が太田のユアーズ者に取締役として迎えられるという。辺見といい、彼の会社で女性誌編集長をした事があったという。

辺見はその前にも情報誌を出して失敗していた。
辺見は、ユアーズ社から三顧の礼で迎えられたと言い触らしているという。ユアーズ社の社長、黒田は元々土建屋でり、この会社を興したのもも税金対策が発端。

よって「改革」と言って時々妙な人事を行うことがあった。

 

それから半月後、辺見はユアーズ社に出社した。社長、部長の前で挨拶する辺見。社長から企画部門を立ち上げる様に言われている、というと幹部の間に動揺が。

一流出版社に居たという驕りも見え隠れする。

しばらくして辺見が「堀川祐一」の本だったらいつでも出せる。と言っている事を聞く。

堀川祐一は人気絶頂のアイドルグループのメンバーだった。

 

「それって本当ですかねぇ」と疑う派遣社員の浦田絵里。

30代半ばで編集を担当していた。絵里はユアーズ社の前に別の自費出版者の編集に居た。それが判ったのは社に自分の半生記を出したいと言ってきた老人が、絵里を見て「このねえちゃんは止めてくれ」と言ったのがきっかけ。

そこで彼女はこんなつまんない本売れない、と言ったらしい。
その意味はすぐに判った。男が第二次大戦時の降伏に関する裏側の秘密を暴露したものだったが、出版が決まったとたん、男はマーケティングプランを出せ、とか十万は売れるとか勝手な事を言い出し、結局ユアーズ社として契約を破棄した。

 

その事がきっかけで太田と絵里は個人的な話をする様になった。
辺見は次々と企画を出して来た。その中の1件で女流作家のエッセイ集も出したが1万も売れなかった。

企画部門は企画書が溜まるばかり。
例の堀川祐一の写真集の話も法外な印税を請求されて立ち消えた。

 

定例の会議で辺見がまた企画を出す。連続ドラマのタイアップ。ユアーズでも社の原作となるドラマをTV局とタイアップして流し、短いCMを流した時期もあった(ユアーズアワー・涙のドキュメントドラマスペシャル)。だが双方のメリットに乏しく、このシリーズは終了した。その経緯をばっさりと断ずる辺見。
そこで連ドラだと強調。自費出版だからこそネタは無尽蔵にある。TV局のプロデューサーとも会って話しており、向こうはいい原作があればTV枠と作るという。

辺見の話は続く。秋から大手の新聞社も自費出版を始めるという。新聞記者が取材して執筆も行い、180万で出せるという。頭の中で原価計算する太田。ユアーズでは難しい値段。いくつかの有名出版社でも自費出版を始めるといい、これは「未来ある高齢者ビジネス」だと言う。辺見がユアーズ社のことを「ここ」と言った事に違和感を感じる太田。辺見にとっての「うち」は前に勤めていた大手出版社のことか。
社長の黒田が「一体どんな本が売れるんだよ」と言った言葉に、連ドラの原作になり得る本だと抜けた回答をする辺見。

 

渋谷の居酒屋で、辺見のやり方をネタに絵里と飲んでいる太田。絵里の口から少しづつ出て来る内輪話。

前の会社の事や、子供が居る事、離婚したこと等。
人生はドラマだというのは本当だと話す絵里。九十二で死んだ祖母が死ぬ間際に良く言っていたという。太田も妻に別の男が出来て逃げられた。これも十分にドラマティック。だが、近づくのを意図した様に思われるのを嫌って絵里にはその話をしなかった。
「この世で最後に残る紙の本は、自費出版の本」太田の心にこんな言葉が浮んだ。