「百年読書会 」
10月のお題 「砂の器」
松本清張については、就職してまもなく発売された全集48巻を毎月2冊ずつ購入するというパターンで、最も親しんだ作家だ。
当時乱立気味だった「○○殺人事件」という推理小説の中にあって、トリックや謎解きに頼らず、殺人の動機という面を深く掘り下げている。
世話になった三木を殺してまで守りたかった和賀英良の前半生の悲惨さ。
ただ、加藤剛が主演した映画も過去に観ているので、そちらの記憶に引張られていたのだが、今回改めて読んだ小説では和賀の行っている数々の工作が何か矮小な感じがして、映画での和賀の方が好感を持てる。
また、和賀が属していた「ヌーボー・グループ」。設定では新進気鋭の若者集団を象徴したものだが、当時の時代背景を考えてもちょっと懐古的なイメージであり、この言葉が出るたびに「何とかならんか」と思ってしまった。