「百年読書会 」
11月のお題 「ノラや」
自分としてペットを飼う習慣がなく、今回のお題については紙上各氏の指摘通り、この様なエッセイ集をなぜ読書会の題材に選んだのか、理解に苦しんだ。
犬は恩を忘れないというが、猫は気まま放題で、首輪はつけてもヒモで繋がれる事がそもそもない。
わずか数ケ月飼った後、いなくなったら大騒ぎをして涙を流す。
奥さんが指摘する様に、いなくなる前は特に手をかけていた訳でもなかった。
その後は延々と「ノラや、ノラや…・・」
いなくなったノラの事ばかり気になって、その後また縁があって飼うことになってしまったクルツにはほとんど興味を持たない。
この辺りは、ノラそのものに対する思い入れの強さが、今まで動物を飼ったことがなく、免疫を持たなかったための行動なのかも知れない。
作者がようやくクルツに注目する様になったのは、飼い始めてから5年以上経ち、弱りはじめてからの事だった。
もともと動物を飼う習慣のなかった者がノラ、クルツという2匹の猫との関わりで何を見つけたのか。
クルツに関する以下の一文で、この本は私にとっても忘れられない一冊になった。
「…その死ぬ前に生きてゐる時、私共と起居を共にした。さうしてこの通り深刻な感銘を残して行つた」