「池袋ウエストゲートパークⅢ」石田衣良 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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親の経営する果物屋の手伝いをしながら、池袋西口周辺の様々な事件を解決して行く「真島誠」の備忘録。全て「自分」目線の一人称で物語が綴られる。


例によってノリの良いテンポで、一気に読んだ、と言いたいところだが、最終話のみ残して、しばらく放置していた。5月連休でなんとか完読。


「骨音」
馴染みのバーガーショップの店員ハヤトからバンドのライヴチケットを買わされるマコト。その後街でホームレスの男に呼び止められた。ホームレスが襲撃され、骨を折られる事件が頻発している。
ライヴで初めて耳にする異様な、全身がしびれる魅力的な音。


「西一番街テイクアウト」
サンシャインシティ・アルパの噴水前で踊る少女「香緒」。踊る時以外は読書。読むのは「サロメ」。
ある日噴水に行くと、少女は熱を出して倒れていた。ケータイで、留守電状態の母親に伝言し、少女を家まで運び込むマコト。
その夜遅く少女を引き取りに来た母親「ヒロコ」。風俗地帯の「連れ出しパブ」で働いている。
店を巡るトラブル。Gボーイズの「王様」タカシと「サル」、「マコト」で演じる「ドブ掃除」。マコトの母親もイイ仕事をしている。


「キミドリの神様」
日本で商取引に使われている「円」。これに替わる通貨として地域限定的に流通し始めた「ぽんど」。地域活性化に貢献すると見られたが、にせ「ぽんど」札が出回る様になり、事態が険悪に。裏で暴力団のブラックマネーが動いている。


「西口ミッドサマー狂乱」
「レイヴ」激しい音楽に乗せて大集団で延々と踊り狂うイベント。日本を代表するそのオーガナイザーの「御厨ソウメイ」。そしてレイヴのカリスマヴォーカリストの「トワコ」、右足にはチタン製の義足。
「レイヴ」に侵入して新種のドラッグを売りさばく「ウロボロス」。彼らを根絶やしにするのがタカシを通じてマコトに下されたタスク。


マコトの性格にも概ね慣れ、各話とも安心して読める。
BLOGを見ていて比較的評判が良いのは「西一番街テイクアウト」。

娘を抱え、連れ出しパブで働く母親。クールなタカシもマコトの「熱」に感化されて一肌脱ぐ。


ワタシ的に印象に残ったのは「西口ミッドサマー狂乱」。
何と言っても、義足で歌い、踊る「トワコ」の存在感がイイ。山頂で行われたシークレットレイヴ。その合間でSEXをするマコトとトワコ。チタンのシャフトの冷たさと、もう片方の熱さ。言葉は短いが、十分その空間を表現し切っている。
(ただのスケベオヤジかよ、とは言わないでね・・・)


「西口公園」の言葉で思い出すのは「新宿・西口フォークゲリラ」。

私たちより少し上の世代が1970年頃、新宿西口広場で繰り広げたフォークのムーヴメント。
この話はまた別の機会に・・・