「バベル」2007年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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babel

 

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、役所広司、菊地凛子、二階堂智

 

 

 

モロッコをバスツアーで旅するアメリカ人夫婦。その妻の肩を突然銃弾が突き抜ける。

撃ったのは山羊飼いの手伝いをしていた兄弟。父親が、ガイドをしていた知人から買った銃を子供に与えていた。そしてその銃は日本人ハンターがそのガイドに譲ったものだった。

 

 

 

ネットでもいろいろ賛否両論ある様ですが・・・

映画である以上、それなりの高揚感とか「こみ上げて来る」感情というものが欲しかったんだけど、けっこう「淡々」と流れる感じで気持ちが入らなかった。

 

 

 

銃を譲ったハンターという事で日本が関わることになるが、その関連性は希薄。ハンター(ヤスジロー)の娘チエコが聾唖の高校生であり、そのハンデからコミュニケーションの事で悩むという設定は、それはそれで悪くはない。

ただ、聾の人間をバケモノ扱いしたからといって「本当のバケモノを見せてやる」とノーパンでスカートをめくり上げて男を挑発するところは、日本の女子高生(もしくは聾唖者)が皆そんなノリだと思われそう。覚せい剤をウイスキーで飲む場面もしかり。

終盤、チエコの母親が銃を使い、彼女の目の前で自殺した事が明らかになるが、それも説明不足すぎて、気持ちがついて行かない。

 

 

 

バベルに関する説明

「旧約聖書 創世記11章」の記述。

  遠い昔、言葉は一つだった。
  神に近づこうと
  人間たちは天まで届く塔を建てようとした。
  神は怒り、言われた。
  ”言葉を乱し、世界をバラバラにしよう”
  やがてその街は、バベルと呼ばれた。


 

結局「コミュニケーション」をテーマにして4つのオムニバスが1つに収斂されて行くというドラマを作りたかったという事か。

チエコに関して言えば、クラブでのシーン。チエコを写している場面では音が出ているが、チエコが見ている部分では音がカットされている。この交互を経験してみると、無音の世界がいかに欠落感を抱かせるものかという事が痛感される。

衝撃的なことも、無音の下ではさほどの印象なく過ぎ去っていく。チエコがクラブでハイになっているさ中、好意を持った男が他の女性とキスをしているところを見て急速に醒めていく時の感情変化は、無音の世界ならではの表現か。

ただ、聾唖者の耳にも少しは聞こえているという話も聞くし、無音というのは間違いかも。

チエコの内面の闇を表現するにも、歯医者では医師の手を取って自分の股に突っ込んだりした後、刑事の前で裸になって泣くというのは、どうも葛藤劇の「お約束」を見せられている気がしてシラける。

 

 

 

様々な解釈で「この映画は素晴らしい」と言うことはある意味簡単。ただし映画は観てナンボの世界。無条件で涙が出たり、胸にグッと来るものがあったりという、同一体験が映画の醍醐味だとすれば、ちょっと今回については「イマイチ」でしたかねー。

*26歳のチチは、やっぱり多少ムリがあったかも。日本人は幼く見えるからイイじゃん、と言っても、ナア(笑)。