「硫黄島」の映画2題 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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監督:クリント・イーストウッド
第二次大戦を扱ったものを観るのは多分「パール・ハーバー」以来か(「アビエーター」もちょっと引っかかってるけど)。日本の最後の砦であった「硫黄島」の攻防に改めて光を当て、それもアメリカ側の視点と日本側のそれとを対比させた「2部作」という設定に興味があった。


 

「父親たちの星条旗」 2006年


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出演:ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ

 

戦争も終盤に入って、アメリカ国内でも戦争の継続に対する費用負担が国民に重くのしかかっていた頃、日本本土を叩く拠点として「硫黄島」に総攻撃をかける作戦が敢行された。この攻防劇で勝利の象徴とされた「米国旗」掲揚の時に撮られた写真をめぐってドラマが展開する。
最初は5日間で陥落出来ると楽観視されていた「硫黄島」が30日以上にも亘って抵抗を続け、最後に占領の証拠として兵士数人が国旗を掲揚する場面が写真に撮られた。それは米本土で新聞、雑誌等に掲載され、大いに国威発揚に貢献した。
掲揚に関わったとされるメンバーのうち、生還した3名は英雄として米国内各地を巡業し、国債購入のための、コマーシャル媒体の役割を担わされた。

 

まず、登場人物が多くてかなりまごついてしまう。また話が、帰国した3名のセレモニーに出演させられる場面から始まったのは、組立て上の効果を狙ったものかも知れないが、素直に主人公の父親が亡くなる前辺りから始める方が無難だったか。
戦争シーンの迫力は、今まで観た戦争映画の中でもかなりのものであり、日本人が知略の限りをつくして抵抗した様子がキチンと描かれている。

 


 

「硫黄島からの手紙」 2006年


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出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童

 

戦局がどんどん悪化する「硫黄島」に降り立った栗林陸軍中将。彼は本土防衛の最後の砦であるこの地を死守するべく派遣されたのだった。防衛の基本である海岸線での守りを捨て、摺鉢山に坑道を掘り、要塞化する事で長期戦に耐える作戦とした。
物語は若い下級兵士「西郷」を軸とした最前線と、栗林を代表とする参謀の様子が描かれる。

日本側から描かれたこちらの作品、「嵐」の二宮和也が出演することで、若い人たちにも広く観られる映画となった。
単なる「君臨」タイプではなく、下級兵士といえども貴重な戦力という観点から、意味のない懲罰、自決等を禁じた栗林の人間性が良く描かれている。ただし史実に基けば、栗林がいかに戦略的に徹底した作戦を立て、36日間にも亘る抵抗が可能であったかの筋立てがあまりにも貧弱。戦闘が始まって中盤以降の日本軍は、ただ逃げ延びるだけの展開しか描かれず、どうも心情的なものに流されてしまった様だ。
主演の西郷(二宮)を殺さず捕虜にしたのも、日本のファンに対するサービスかも知れないが、ちょっと緊迫感には欠けた。

 

ただし、アメリカ人の監督としてこの「硫黄島」での戦いを非常に冷静な目でとらえ、戦争末期のアメリカが抱えていた危機状況についての記述、勝利者としての驕りを排除した構築は、非常に好感が持てた。

 

ウィキペディア にこの件が非常に判り易く記述されています。

(直リンク不可なので、キーワード「硫黄島の戦い」で検索)