何でこの人の小説はこんなに読み易いんだろう。
「剣客商売」にハマってけっこう読んでいた時期があった(全部制覇したわけではないけど)。
その後他へ興味が移ったこともあって、この人の本からは離れていた。
今回久しぶりに読んでみたら、まあ面白いこと…・・
織田、豊臣、徳川に至る戦乱の世を槍術の腕ひとつで渡り歩いた「渡辺勘兵衛」。その世渡りのヘタさ加減は群を抜いている。だが主人の器量を見極め、合わぬと見れば何の未練もなく(多少の後悔も噛みしめながら)次の旅へと向かっていく。
ネットで「渡辺勘兵衛」をキーワードに調べたら、これがけっこう面白い人物像。池波氏も目のつけどころがイイ。
天下統一を目指した武将の周辺で、こうした多少マイナーな男たちに光をあて、あざやかにその生き様を描く。この「味」はやはり池波氏独特のものだろう。
「士は己を知るもののために死す」。主は部下の功労を、あるべきタイミングで披露してやることがいかに大切か。それをすることが主自身の評価を高める。これは今の世にも十分通用する教訓。