1 広太郎先生のお話
今日、蛙野広太郎先生が、校外学習をするって言ってたけど・・・・・・なにするんだろ。あ、そうだ。相手の心がわかる魔法、使おうかな。
「相手の心よ、我に伝われ!」
攻撃の魔法と呪文が違うから、難しいけどね。
『カエルノコウタロウセンセイノ、ココロヲヨミトリマス。
・・・・・・コウガイガクシュウデハ、ソラヲトンデ、モリヤハヤシ、マチニイキマス。』
はいはい。よく分かりました。で、空を飛ぶってことは、ほうきが必要なわけで。ぼく専用のほうき、実家なんだよね。あ、そうだ。こういう時こそ、瞬間移動魔法使おう。
「我の心体よ。実家に動け!」
ふう、着いた着いた。あ、お母さん。
「あら?しゃぼゲロ?まさか瞬間移動したの?」
はい!そうです。瞬間移動魔法で、ほうきを取りに来ましたよ。
えっと、ほうきは・・・・・・あそこだ。
これを持って、魔法学校に戻らなきゃ。
「我の心体よ。魔法学校寄宿舎に戻れ!」
2 三人で遊ぼう
「今日は、校外学習です。持ち物、揃っていますか?自分のほうき、魔力が無くなった時に使う魔力回復アメ、ロープ、ランプです。そして、今日は、空を飛ぶための特訓です。」
「はーい。」
ふーん、そうなんだ。一応、全部揃っているけどね。魔力回復アメ、いる?ロープは「ロープ魔法」を使うときに使うんだよね。ランプも、いらなくない?
「それでは、バスに乗ってください。」
バス、いらないでしょ。瞬間移動魔法、使えばいいでしょうが!も。全く。広太郎先生って非常識。
そして、到着!しかし、酔ったぁ。こんな酔うなら瞬間移動魔法使った方がマシぃ。ねえ、「我の心体よ。校外学習のところへ動け!」って言えばねぇ。
「それでは、十時に広場に集合。」
はぁ!?広場、どこ?
「しゃぼゲロくん、わっちゃんと一緒に行動しよ。」
わっ。びっくりした。わたゲロくん、いたの?
「あ、あと、ふさゲロくんも。」
「しゃぼゲロくん、一緒に遊ぼ・・・・・・」
うん!大歓迎!
「じゃ、空、飛ぼ。」
「え・・・・・・」
どしたの?
「ぼく、空の飛び方知らない。」
大丈夫。今、教えるから。
「ほうきにまたがって、指を鳴らして。」
ふさゲロくん、ぽあぁっと宙に浮いた。
「降りるときはもう一回。」
すると、ふさゲロくん、降りてきた。
「じゃ、もう時間。広場に行かなきゃ。」
と、言ったんだけど、どこ?
「こっち!」
あ、わたゲロくん、助かる。
3 みんなで空を飛ぼう!
「では、空を飛ぶ方法は、ほうきにまたがり、指を鳴らします。」
それ、ぼくがふさゲロくんに言いました。もちろん、わたゲロくんも知っています。なので、心配ありませんよ~!
「では、一回やってみましょう。」
もうぼくとわたゲロくんとふさゲロくんは一回やりましたけど。
もうみんな無我夢中で空を飛んでいるような・・・・・・
「じゃあ、実際に進んでみましょう。行きたい方向は、大体魔法がわかってくれます。」
みんな広太郎先生と一緒に飛んでいますけどね。広太郎先生、操ったでしょ。
そんなの、バレバレですよう。
「ここで、みんなと魔法で戦ってみてください。しかし、本気にはならないように。」
「はーい!」
「あれ?ふさゲロさんがいませんね。どこでしょうか。」
あ、本当だ。いない。
「相手の居場所よ、我に伝われ!」
わお。聞いたこと無い呪文。でも、すぐ出来そう。ラッキー。またひとつ覚えちゃった。
「まさか!」
え?どしたの?じゃ、ぼくも行こうかな。
「先生、どうかしたんですか?」
4 まさかのハプニング
「しゃぼゲロさんはここで待ってなさい。」
「いや、どうしたんですか?って聞いてるだけです。」
んもっ。「相手の心がわかる魔法」、使えっ。
「ふさゲロさんが、飛ぶ時、失敗してコントロールが効かなくなっているんです。助け出さなければ、一生、ここをさまよいます。」
わっ!それは大変。じゃなくて、そんなこと言っている場合じゃないんだよ。助けに行かなくちゃ。
「いえ、行ってはいけません。危険ですから。」
気がついたら、ふさゲロくんを救いにぼくはほうきに乗っていた。
「しゃぼゲロさん!ダメです。」
うるさいっ。このしゃぼゲロをナメるなっ。
絶対にふさゲロくんを救い出して見せる!
よーし、行くぞ――――――!
ぼくは魔力回復アメをポケットに入れ、ふさゲロくんのもとへ!そこでまた広太郎先生の声が聞こえた。
「しゃぼゲロさん、無茶なことをしないで下さい!あなたは生徒ですよ!まだ未熟ですよ!」
未熟で悪かったねっ。今度から広太郎野郎って呼ぶぞっ。ぼくの大事な親友を見捨てるもんですか!あんたなんか、大事な生徒を見捨てているくせに!あんたにそう言える価値は無いぞっ!
「あ・・・・・・!」
ぼくは、思わず声をあげてしまった。だって、ふさゲロくん、時速八十キロぐらいでビューンって飛んでいるんだもん。こんなんじゃ、自分で止められない。コントロールさえ、出来ない。それでもぼくは絶対に・・・・・・
5 ふさゲロくんはどうなる?
それじゃ、まずはどー考えても「速度を落とす魔法」でしょ。あ、ふさゲロくん、この魔法、知らないのかも。
「そなたの早さよ、遅くなれ!」
自分にかける時は「我の早さよ、遅くなれ!」だけど。
すると、やっぱり遅くなった。でも、これだけじゃ救えない。こうなったら、「時間停止魔法」でしょ。そして、ふさゲロくんの怪我が無くなるように、「治療魔法」をかけるんだ。
「この世の時よ、止まれ!」
やっぱり、この世の時間は止まった。もちろん、ふさゲロくんも。
よし!次は「治療魔法」だ!
「そなたの傷よ、癒され!」
あ、でも、これでも救えない。もう一度、「速度を落とす魔法」をかけるべき。今度は、ゆっくりにしよう。
「そなたの早さよ、遅くなれ!」
あ、でも、「時間停止魔法」、解除しなきゃ。
「この世の時よ、動き出せ!」
――目の前には、ふさゲロくんがいた。
「しゃぼゲロくん、ありがとう・・・・・・」
「ごめん。ちょっと遅れちゃった。」
「ううん。大丈夫だよ。」
ふぅ、良かった。ふさゲロくん、行こっ。
「で、広太郎先生はどこ?」
あ、もしかして、広太郎先生、怒っているかもしれない。あの優しい広太郎先生が、初めて怒るかもしれない。ぼくが、第一号?
――どうか神様!広太郎先生が怒っていませんように!
6 広太郎先生の初めての姿
ああ、やっぱり。広太郎先生、怒っていた。でも、怒りとありがたみが、混じっていた。
「しゃぼゲロさん!あれだけ言ったのに、何で行くんですか!あなたはまだ未熟です。危険です。しかし、ふさゲロさんを助けてくれたことだけ感謝します。」
「しゃぼゲロくん、すごい!今度わっちゃんに「心の映像魔法」、見せて。」
「心の映像魔法」は、そのときの見たもの、聞いたもの、心の様子が映像で伝わってくる。
でも、広太郎先生に怒られたことを見るなんて・・・・・・わたゲロくん、変わっているような・・・・・・でも、そう考えたら、ぼくも危険なことをしたんだから、変わっているのかも。
すると、わたゲロくんは、「心の映像魔法」の呪文を唱えちゃったんだ。『今度』って言っていたのに、今なのか!
「相手の思い出よ、我に伝われ!」
ああああああ~。やめてー。
映像をみているわたゲロくんは、何だか状況が分かっていないけど・・・・・・
わたゲロくん、見終わった後、すごいこと言ったんだよ。それがもう衝撃。だって、「しゃぼゲロくん、意外と腹黒いんだね。」って言ってたんだよっ!
まあ、「うるさいっ。このしゃぼゲロをナメるなっ。」って、思ったけど。しょうがないんだよ。心のなかの言葉まで伝わっちゃうんだもん。「今度から広太郎野郎って呼ぶぞっ。」って思ったのも、伝わっちゃったんだもんね・・・・・・
ああ、これでわたゲロくんから避けられたらな・・・・・・絶望だ。
7 果たして、わたゲロは?
夕方、わたゲロくんの所へ言って、「ねえ。」って言ったら、「何?しゃぼゲロくん。わっちゃんと遊ぼ。」って普通に接してくれたんだ!絶望が、一気に希望に変わりました!
それで、わたゲロくんと、遊んだんだ。
「じゃ、勝負!」
「じゃあ、わっちゃんから。天の魂のバリヤーよ、我が身を守れ!」
あ・・・・・・「無敵バリヤー魔法」、かけましたか。これに効く魔法は、「バリヤー消去魔法」だけ・・・・・・でも、また「無敵バリヤー魔法」、かけられちゃうよ・・・・・・
あ!そうだ!「バリヤー消去魔法」と、なにか攻撃の魔法、合わせちゃお♪
じゃ・・・・・・闇!
「天の魂のバリヤーよ、我が身を守れ!、闇の祈りよ、我に操れ!、二つの魔法よ、我の魔法になれ!天の魂と闇の祈りよ、我が身を守って操れ!」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!すごい―――――・・・・・・」
ギヒヒ。勝ったぜ。あ、こういうところがわたゲロくんの言っている「腹黒いところ」なのかも。