終わらせます④ 荒れた時代の記憶 | 山本義幸 シルバーアクセ デザイナーブログ

山本義幸 シルバーアクセ デザイナーブログ

シルバーアクセサリーのデザイナー&彫金師。F.A.Lにまつわるあれこれを書き残しておきます。


 


荒れた時代に突入するのはVenom Glowのはじまりからすぐのことでした。



第4回目です。

 


なによりも忘れもしない会社の始まりの出来事は

 

会社の設立にたいして、



オレはデザイナーになりたくて今の仕事をはじめたわけだから


経営に時間は割きたくかったし


社長にはなりたくないと。

 



会社の代表取締役は


設立前から営業を担当してくれていたのりちゃんについてもらい


法人としてのVenom Glowが始まりました。



ただ、


彼はもともと幼少のころから糖尿病を患っていて


会社の一年目を終える直前で脳梗塞になってしまったんです。

 

幸いなことに一命は取り留めたものの


容体は全身の半分が麻痺状態。


 

全員がパニックになり会社も止まるほどの危機的状況でした。

 

そんなのりちゃんも半年ほどの


リハビリで動けるようになったものの

 


会社としてもっとしっかりやったほうのがいいのではないのか?


みたいな問題は山積み。


張り詰めて仕事をしている環境に戻るつもりはないという決断を告げられることに。

 

のりちゃんがVenom Glowに戻ることがないことが決まった時期に、ギャラリーベノムグロウの店長をしていたセースケがのりちゃんの穴埋めのためのディーラーショップの営業担当にまわるしかない。

 

オレもなんの決心もできぬまま、会社の2期目から代表取締役を交代することになり、思わぬ形で再スタートを切ることになるような事態になってしまった。

 

セースケもまた、本心はギャラリーベノムグロウの店長としてもっとお客さんに喜んでもらえる接客をしたかったはずなのに、内勤と営業職に異動になることは不服だったはず。


そして、みんなのやりたかったことが少しずつズレていく。

 

 

F.A.Lを作りたかったのに経営者として業務改善に時間を割かれることになってしまった自分。

 

営業職をしたくなかったはずのセースケ。

 

F.A.Lの量産よりもMad Graffitiを作りたかったユウ。

 

 

そのタイミングで入社してくれた数名のスタッフも設立したメンバーがこんな状況では会社なんてうまく動いていけるはずもなく、

 

このときすでにもう全員の歯車はズレながらもギリギリ噛み合ってまわっていたんだと思います。

 

これが数年続きながら、自分もことあるごとに

 

F.A.Lの売られ方が気に入らないなんて感情的にセースケとぶつかったり

 

F.A.Lの量産が間に合わないのは生産部のスタッフが育たないからとユウとぶつかりながら。

 

そこにはお互いにリスペクトはなく、

 

失敗への指摘やチャレンジをすることへの恐怖感の煽りみたいなことばかりになって。


スタッフ間でも罵ることや影口、喧嘩することが当たり前みたいになっていたんだと思うほどに荒れていた。

 

 

そんな状態で、全員が20歳代から30歳代に移り変わっていく時期になれば、将来への不安も重く考えるようになるわけで、

 

F.A.L TOKYOを原宿に出店しつつ、お客さんの目線では順調に進んでるように見えているような時代であっても

 

結婚や家庭のことなど、先のことを不安に考えたセースケが退社し転職する決断をした年もあり、

 

オレとユウの2人だけになったことで、もうVenom Glowのスタッフたちとの結束なんてのもほぼ無かったように感じていました。

 

 

もちろん、スタッフ全員にそれぞれの想いの観点があって


それぞれ個人の意見が正解なはずなので


オレが言ってることなんてただの主観ですし


スタッフの誰が悪いなんて話ではなくて。

 


きっと、中途半端な覚悟で代表取締役になってしまったことで、事あるごとに感情的にしか動けなかったこと。


もっと経営者としての力があれば、荒れた時代に突入することもなく


うまく会社を作り上げられたのかもしれません。

 

この時期に働いてくれていたスタッフたちには本当に申し訳ないことをしたなと思います。

 

 


そして、単純に成長していくことへの夢とか目標とか純粋だったものが仲間内では共有できなくなっていき、

 

スタッフ間では表面的な付き合いだけが楽ければいいじゃんみたいな空気感と

 

作ってしまった物を守らなきゃいけない責任感だけで仕事をしていくような日々は

 

 成長のために必要な苦い物をできるだけ奥の方に沈めてフタをしておきながら付き合うような感覚。

 

そんな無に近い時間の流れだったようにも感じました。

 

 そんな状態であっても


Venom Glowという会社が今も続けていられるのは


その年々で業務の改善や分担や労働環境の改善

 

スタッフの育成や製作スタッフの技術指南などなど


その時代のスタッフ全員の力をかりながら


少しずつでも良い方向に作り変えてきたたわけでもあるし

 

 

そんな荒れまくっていた時代の中でも


憂は会社の改善に最後まで力をかしてくれながら

 

デザイナーとしては折れては立ち上がりを繰り返し

 

へこたれることなくMad Graffitiを創り上げていき

 

着々とMad Graffitiを育てていきながら


2018年の7月にギャラリーベノムグロウをMad Graffitiの旗艦店とするまでに成長してくれました。

 



ただ、業務や働き方の

 

荒れすぎた時代は終わっても


 

つらかったであろう人の記憶は簡単には終わらないんですよね。

 

トラウマのように。

 

 

本音で話せなくなった人の感情とか想いとかは、

 

業務改善するようにプログラムを修正すれば簡単に修復されるようなことではないんです。

 

 

みんなに植え付けてしまった

 

荒れた時代の記憶をどうしたら消せるのか?

 

どうしたら人のトラウマを取り除けるのか?


人が辞めていき忘れ去られるまで続けるのか


どこかで会社自体をやめてしまって


独りでF.A.Lだけを続けていけば良いのではないか?

 

みたいな


そんな悩みと向き合い続けなきゃならなくなっていたようにも感じて。

 

自分もどこか誰かに遠慮しながら萎縮しておこうと思うような日々が続くことになっていたのかもしれません。


 

本当はブランドなんかより会社よりも


働いてくれる人を守らなきゃいけなかったはずなのにと


後になって気が付くんですけどね。

 


 

 憂ともそんな距離感で


オレとしては何か煮え切らないような状態が続いていたような。



次回はそんな憂との関係性について。

 

 

 

→「終わらせます⑤」に続く

 

 

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F.A.Lデザイナー 山本義幸

 

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