犬と友人の名前 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 夕食を先に食べ終えた夫が妻に話し掛けた。

 「今朝、公園の前で隣の家のおばさんと挨拶をしてね。おばさんは犬の散歩をしているみたいだったけど、あれは最近になって飼い始めたのかな?君はあの家で犬が飼われていると知っていたか?」

 「いいえ」

 「だったら、やはり最近になって飼い始めたのかな。それで、ちょっと気になったから犬の名前を尋ねてみたのだけど、どんな名前だったと思う?君は憶えているかな?僕達の結婚式にも出席していた学生時代の友人なのだけど、眼鏡を掛けた若白髪の男がいただろう?おばさんが連れている犬の名前があの友人と一緒だったんだよ」

 「そうなの」

 「まったく驚いていないみたいだね。当たり前か。君はあの男の友人ではないからね。だから、反応が薄くても仕方がないのかもしれない。でも、隣の家で友人の名前を付けられた犬が飼われていると思うと変な気分だよ。本人が聞けば驚くだろうね。そういえば、ここのところ連絡を取り合っていなかったな。どうしているのかな?まさか隣の家で飼われているわけではないだろうし」

 「当たり前でしょう」

目次(超短編小説)