宴会場でたまたま隣りの席に鳥人間が座ったので私は日頃から抱いている空への憧れを率直に吐露してみた。自由に広大な空を飛び回れる鳥人間の能力が羨ましいと告白した。
しかし、鳥人間はゆっくりと首を横に振ってから愚痴を言い始めた。
「それはよく言われるのですけどね、実際に飛んでみると空はさして広くもありませんよ。なにしろ宇宙にまで飛んでいく能力は私にもないのですからね。あなたのような飛行能力がない動物にとっては自分の頭上がすべて空であり、果てしなく広大であるように見えているのかもしれませんけど、私にとっての空は大地と宇宙に挟まれた限定的な隙間でしかありませんよ。しかも、空から眺めていると街まで小さく見えてくるから救われないのです。あなたは鳥人間になってみたいと思っているかもしれませんが、きっと一年も経たない間に飽きるはずですよ。なにしろ鳥人間にとって世界はあまりにも狭いのですからね。世界を広いと感じたいのであれば蟻や蝸牛にでも憧れるべきですよ」
顔全体にびっしりと羽毛が生えているので表情がよくわからなかったのだが、鳥人間はどうやら不機嫌になっているようだった。元から鋭かった目線がさらに険しくなってきているように見えたので私は恐縮しながら鳥人間の意見を聞いていた。
目次(超短編小説)