公園の地面に穴を掘っておいたのだが、ある日、その中を覗くと一個のゴルフボールがあった。誰かが入れたのだろうと推察したが、それを落とした瞬間の得意気な笑みが思い浮かんだので私はその憎たらしい顔面に唾を吐き掛けたくなった。両手で髪を掻き乱して奇声を張り上げたいような衝動に駆られたのだが、なんとか冷静な態度を保ち、持っていたスコップを使って土を被せてボールと一緒に穴を埋めた。
自宅の近所にある公園ならば簡単に通えると考えて穴を掘っておいたのだが、まさか他人に無断で使用されるとは思いも寄らなかった。新しい穴が必要になったので誰も来ないような山中に掘ってみようかと考えてみたが、不便そうだと思われたので気が進まなかった。しばらく色々と思案を重ねてみたが、やはり公園の地面が最も都合が良さそうだという結論に達した。
そこで、私は穴を埋めた跡を念入りに踏み固めてから辺りを見渡した。なるべく落葉やゴルフボールなどが入ってこなさそうな場所に穴を掘らなければならないと考え、スコップを片手に持ったまま公園の隅々まで歩き回った。
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