笑い声の風邪 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「今年の風邪は笑い声が聞こえてくるらしいですよ」と秋が深まってきた時期に会社の同僚が教えてくれた。

 それ以来、私は起床する度に今日こそ笑い声が聞こえてくるのではないかという予感を覚えながら耳を澄ませている。どのような声なのだろうかという興味を持っている。

 冬が到来して気温が低下し、風邪を引き易い季節になってきたが、実際に笑い声を聞いたという人間にはまだ出会っていない。根も葉もない噂だったのではないかと疑いたくなっているのだが、それでいて職場などで笑い声などが聞こえてくると私は咄嗟にその方向を見遣って幻聴ではないと確認する。その瞬間だけは背筋がひやりとする。一日の間に何度も耳を澄ませている。今にも静けさの向こう側から笑い声が聞こえてくるのではないかという危惧を抱きながら日々を過ごしている。


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