冬は遠い | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 寒かった。空気が凍て付いていた。私は繁華街を歩いていた。大勢の人々と擦れ違ったが、周囲の人口密度が高いわりには寒さがまるで緩和されていなかった。

 なかなか約束の場所に辿り着けないので私は焦燥感を覚えていた。冬が大きな塊となって目の前に立ち塞がっていた。とても冷たかった。それは雑踏の中で衝突した人との間にさえ厳然とした距離を生じさせていた。ひょっとしたら指先で直に彼等の肌に触れたとしても体温を感じ取れないのかもしれなかった。

 私はあらかじめ計画しておいた道順を忠実に辿っていた。ロボットになったかのように余計な躊躇を差し挟まずに待ち合わせ場所を目指した。寒さのせいで意識が縮まっているので鷹揚な態度でじっくりと時間を掛けながら道に迷っているような余裕がなかった。永遠に目的地に到着しないのではないかという疑念が生じ、そろそろ心が挫けそうになっていた。

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