青空に白い月が浮かんでいた。丸い骨のようだった。太陽の熱で火葬されたように見えた。既にすっかり燃え尽きて灰になっているのだった。ひどく脆そうで、強風が吹けば跡形も残さずに飛散していきそうだった。その頼りない風情を見ていて私は心細い気分になった。
ふと辺りを見回してみると、路上で人々が天を仰ぎながら涙を流していた。彼等は月の死を嘆き哀しんでいるのだった。その光景を見て私は胸中に空いた隙間を埋めるのに相応しい感情をようやく見つけられた気がした。
そこで、私は彼等に倣って慟哭した。久し振りに涙を流した。声を出して泣いた。往時の力強い輝きを思い出し、その堂々とした姿がもはや拝めないのだと考えると我が身を切られるような辛い心境になった。時として運命は残酷な場面を我々に突き付けてくるものである、としみじみ思い知らされた。
目次(超短編小説)