プラットホームに立って電車を待っていた。雨が降っていて人々が屋根がある場所に密集しているので私はずっと息苦しさを感じていた。しかも、濡れた傘が衣服と接触しないように常に周りの人々との距離を保っておかなければならなかった。それも気詰まりの原因だった。
雨の影響で列車の到着が遅れるというアナウンスが繰り返して場内に流れていた。かなりダイヤが乱れている様子だった。屋根の下の人口密度は増していくばかりだった。
アナウンスは何度も遅延を詫びていた。本当に列車が到着するのかと心配になってきたが、既に駅構内はあまりにも混み合っていたので脱出にも苦労しそうだった。雨も一向に降り止む気配がなかった。衣服に染み込んでくる湿気のせいで全身がひんやりと冷たくなってきていた。
周囲に佇む人々も一様に意気消沈していて、幽霊のように顔色が悪くなっていた。私は彼等をまじまじと観察した。すっかり生気が抜けているように見受けられたので遠慮はしなかった。冷蔵庫に置き忘れられて表面が結露しているガラス容器の底に溜まった沈殿物を想起した。
電車が到着する気配はなかった。私は永遠に今の膠着した状況が持続するわけではないと自分自身に言い聞かせていたが、確信を持てているわけではなかった。
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