本と特急列車 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 ずっとプラットホームのベンチに腰を落ち着けて本を読み耽っていたのだが、俄に周囲を行き交う人々の数が増えてきたように感じられたので腕時計を確認してみると、まだ私が座席を予約している特急列車が到着する時刻ではなかった。

 場内にアナウンスが流れ、次に発着する電車は急行列車であると告げられた。すると、一段と周囲の雑踏が騒々しくなり、たくさんの足音が聞こえてきた。しかし、ちょうど本の内容が面白く感じられてきたところだったので私の視線は活字を追い続けた。

 どうやら急行列車が発着したようだった。それを知らせるアナウンスが場内に流れていた。周囲の喧噪が最高潮に達した。しかし、その間も私は集中を乱されなかった。書物の内容が心地良く頭に入ってきていた。

 ふと、静寂が訪れた。妙に感じたので目線を上げて周囲を見回すと、プラットホームはがらんとしていて人気がなかった。駅員の姿さえ見当たらなかった。

 いつの間にか夜になっていたが、照明装置はしっかりと灯っていて力強い光線が場内を隅々まで照らしていた。腕時計を確認してみると、まだ特急電車が到着する時刻にはなっていなかった。私は乗り過ごしたわけではないらしいと安堵し、また書物に目線を戻した。続きが気になって仕方がなかった。

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