黄と青の朝 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 カレンダーを捲る。今日の表示は背景が黄色で、数字は青色である。私はそれに合わせて服を選ぶ。黄色のシャツを着て、青色のズボンを履く。

 通学途中の電車内で黄色と青色の衣服を着用した乗客を十人以上も見掛ける。ありきたりな組み合わせなのかもしれないが、半分近い割合なので不自然なまでに高い確率である。彼等の人相は毎朝のように同じ車両で乗り合わせるので大半に見覚えがある。私は記憶を精査して彼等が昨日はそれぞれ異なる色合いの衣服を着用していたという事実を確認し、自分と同じカレンダーを参照しているわけではないという結論に達する。つまり、偶然の巡り合わせによる重複だったのである。

 ふと、残りの半分に当たる乗客達が赤色と緑色を組み合わせた衣服を着用しているという事実に気付く。車内をよく見回してみたが、どうやら例外はいない。混在しているので最初は気付かなかったが、確かに乗客は黄青と赤黒のグループに二分されている。

 私はそこに静かな対立が生じていると直観し、それどころか自分自身も知らぬ間にその抗争に巻き込まれた格好になっているのではないかと考えて愕然とさせられる。一触即発の気まずい緊迫感を察して鼓動が高まっていく。反射的に視線を伏せて肩身を狭くする。双方の陣営が大喧嘩を始めた場合にどのような手段で自分の安全を確保するかという思索に没頭し始める。

 電車は普段と同じ風景の中を走り抜けていく。私は一刻も早く下車したいと願い、学校の最寄り駅への到着を今か今かと待ち遠しく感じている。

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