【障害児園ドタバタ奮闘記】天使達に囲まれて…… -4ページ目

085:30分が限界

練習が始まった。


とは言っても、今までの園生活を崩さず……

それでいて割ける時間といえば1日あたり約30分ほど。


でも案外これぐらいが丁度よかったりする。


うん。

コレは幼稚園時代の経験則なのだが……子供の集中力が持つのは、せいぜいそれくらいのもの。


ましてや興味の無い事には、全く見向きもしない子供がたくさんの我がカニ組。


そして場所は小さな園庭。


いやいや。

小さいと言っても当然教室よりも広いし、危険もハプニングもきっとたくさん待っている。


正直職員達の集中力だって、30分が限界だったりする。




「じゃ……とりあえず慣れるまでは、かけっこの練習。

 それから、ムカデ競争の練習って段取りで。」




え?

かけっこの練習って、走るだけじゃないの?


いやいや、そんな事はない。


まず、入場門から、かけっこスタートラインまでの行進。

そして待機。


うん。

ここまででもすっごい大変。


おかん先生と林先生が先頭の両サイドについて、後ろ歩きで誘導。

ワタシと青井先生が、後ろ後方ではみ出さないように、遅れないようにガード。


ま。

当日は真横に、プラスお母さんとかボランティアちゃんが更に加わってくれる予定なのだが……

それでもやっぱり自力で歩いて、観客席に笑顔の一つも振りまいて……


ピッピッピッ!!


笛の合図でビタっと止まって整列&着席って理想だよね!!




「じゃ、1回やってみましょか!!」


おかん先生の掛け声に

給食室から無理矢理借り出された「大橋さん(32歳)」が、CDラジカセにて行進曲をスタート。


1・2・3…4……。

リズムを取るおかん先生と林先生。


入場門に見立てた木々の間を通って2列でヨシヨシ……


と思った……次の瞬間。


ダダダダーっ!!

アハハハハーっ!!


わっ!!

ちょっ!!ちょっ!!ちょっとちょっとっ!!


飛び出した子供達は、まるでお誕生日のクラッカーのよう。


勢いよく飛び出して、真っ直ぐ走り出す子供もいれば

途中で目標を失って、クルクル回りだす子供。


そして、スタートさえ切れずに、現在位置でボーっとしている子供。

(いや……正確には、ボーっとしてる子が正解なんだけど……。)


必死になって両手を広げ、とりあえず2人は捕まえてみるものの……


ああ残念。

手は2本。


それはおかん先生も林先生も青井先生も一緒でさ。


もう一旦堰を切った子供達は……もう止めよう無し。


ピッ!!ピッ!!ピーッ!!


おかん先生の笛が虚しく響き渡る。


うは……。


全然ダメじゃんっ!!







「えー。じゃあ今日はココまでで……。」


5回ほど繰り返した入退場。


散った子供達を追い回し、捕まえて集める。

整列させて、音楽GO。

子供達、三々五々で走り回る。

散った子供達を追い回し、捕まえて集める。

整列させて、音楽GO。

子供達、三々五々で走り回る。


はい。

コレの繰り返し。




ヘトヘトになったのは先生。

集中力どうのじゃなくて……体力的にも30分が限界だった。




---つづく---





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084:練習開始

「さーて!!今日から運動会の練習するよ!!」


子供達がそれぞれ自分の遊びに没頭する中……おかん先生は


「パンパン!!」


と手を叩くと、教室中に聞こえ渡るほどの大声で言った。




今日の朝礼で、前もって聞かされていた「運動会の練習」。


とは言っても出し物は……


1.かけっこ

2.おゆうぎ

3.むかできょうそう


それからそれから……


4.ちゃんと座って観戦する事。




ええ……。

きっと4番が一番大変だと思います。

間違いありません。


でも頑張ってそれらを

今日から約1ヶ月掛けて……練習するのだ。




「はいはいっ!!みんなお片付けっ!!お片付けっ!!」


でも……


おかん先生が何度手を叩いても

おかん先生がどれだけ大声を出しても


子供達は反応なし……。




完全無視で「ヒモ通し」「ミニカー」「お絵描き」「ブロック」に大没頭。


「ちょっとっ!!ちょっとっ!!青井先生もユミコ先生も協力してよっ!!」


ええ……そりゃもちろん協力するつもりですよ。

ええ……そりゃもちろんお片付けしようとするつもりですよ。


でもね……


無理矢理引っ剥がしたら、パニックになっちゃうでしょ。

無理矢理片付けだしたら、そりゃもう怒る怒るでしょ。


だって子供達には子供達のペースがあって。

だっていつもは30分くらい遊んでから、親との合同保育になったり……

だっていつもは1時間くらい遊んでから、片付けしてトイレして給食だったり……。


それがたった15分でお片付けじゃあ……


イレギュラーに弱い子供達は、納得しないっちゅーの。




「今日からねーっ!!運動会の練習だからねーっ!!」


まだ半分も出来上がっていないキヨシ君の「ヒモ通し電車」。


おかん先生の熱過ぎる視線に照らされて、必死で転がったビーズを、箱に片付け始めるワタシ。




でも……


ガサガサ……(ワタシの片付ける音)

ガサガサガサ……(キヨシ君の取り出す音)

ガサガサ……(ワタシの片付ける音)

ガサガサガサ……(キヨシ君の取り出す音)

ガサガサ……(ワタシの片付ける音)

ガサガサガサ……(キヨシ君の取り出す音)


だーーーーっっっ!!(ワタシの心の声)

だーーーーーーっっっ!!!(キヨシ君の叫び声)




はい!!

おかん先生!!


はい!!

園長先生!!


ワタシ勤めてほんの数ヶ月ですけど……提案があります!!


いっそ事、夏休み明け1日目から練習始めちゃった方が良かったと思います!!




ええ。

その日の帰りの事です。


職員室で


「どうだった?運動会の練習?」


と聞かれてワタシはサッパリ言っちゃいました。




そしたらね……


「そりゃ、お泊り保育やハイキングに出て来れる、軽度の子達は『園』に馴染んでるからいいんだけどね……。


 40日の夏休み期間。

 そこから『園』に馴れさせるのにも、そもそも日数が要るのよ。」


とバッサリ斬られちゃいました。




うぬぬぬ……。

完璧にワタシの方が浅はかだった……。




---つづく---





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083:覚えててくれた

まず一番の不安。


子供達が、ワタシの事を覚えてくれているかどうか


だってゴールデンウィーク明けから勤め始めて5月・6月7月……。

正味2ヶ月ちょっと。


やっとワタシの顔というか存在というか……。

それを認識してくれた大半のカニ組諸君。


でも突入しちゃった夏休み40日。


絶対忘れてるだろうなー。


そう思っていた。




いやいや、でもね……意外や意外。


子供達はワタシの事を、ちゃんと覚えててくれたんだよー!!


ええ!!感動してますっっっ!!!!!




とはいえ……まぁ……ユミコセンセーとかユーセンセーとか呼んでくれる子は極わずか。

(えー。夏休み前でも、極わずかでしたが……。)


でも、とりあえず「壁」とか「鎖」とか「繋ぐモノ」とか……。

そういうノリではなくて、少なくとも「センセー」として「人」として見てくれている。




うん。

自閉の子&学習障害の子が大半の我が小鯵園。


でもね、障害児なんていわれてるけど……

決して頭が悪いワケじゃないんだよ。


(それに気付かされたのも……ココに来てからなんだけどね……。)




いろんな個性。

いろんな子供がいるけどね……


簡単に言うと、彼・彼女達は、全体の傾向として……


覚えるのは大変なんだけど……でも逆に覚えた事は、なかなか忘れない


んですよ。




だから、小鯵園の事も忘れてない。

だから、ワタシ:ユミコ先生の事も忘れていない。

だから、一日の流れも忘れていない。




はぁ……。

これが大問題だったんだなぁ……。




---つづく---





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082:夏休み明け

あっという間に終わっちゃった夏休み。

イチロウもイチコも学校・幼稚園が始まり……そして我が小鯵園も、それから2日ほど遅れて始まった。




休み中。

小鯵園は、どんなだったかというと……


お泊り保育

お泊り保育

ハイキング

保護者慰安会 (要するに上記行事の打ち上げ)


などなど。


(あとで、おかん先生から聞いた。)




そしてワタシは、どんなだったかというと……


家事

育児

家事

育児

家事

育児

実家で羽伸ばし

友達と買い物

店の手伝い (少々)


と……まぁこんな感じだ。




さて。


夏休み前。

イロイロな先生に聞いていた。


「夏休み明けからは運動会の準備一色だよー!!」


と。




言われたとおり……慣らし期間:2~3日が過ぎた頃から……小鯵園は運動会一色。


絵・図工選科の青井先生は、日がな一日……


晴れの日なら入場門から退場門

雨の日なら玉転がしのタマからお遊戯のカブリモノまで。


通常の保育から外れて、職員室の横の小部屋で、独り黙々と作業に没頭。


いや、ホント。

普段の仕事より、目の玉をイキイキとさせて……心を躍らせて作業に超没頭の青井先生。


でも、何もかも放っといてでも、皆がお願いするだけの事はある。

幼稚園・保育園で、散々壁面・工作をしてきたワタシが見ても、結構イイモノを作るのだ。


うん。

明日から、青井先生の事を心の中で「小鯵ノッポさん」と呼ぼう!!


え???歳が判るって???

だまらっしゃいっっっ!!!




さてさて。

冗談はさておき……。


サクッと始まった運動会準備。

ワタシの保育に関する、直接やらなきゃいけない事は……


うん。

とりあえず練習。


でもコレが……


「とりあえず」


じゃ、すまなかったんだなー。




---つづく---





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第5章を書き終えて

なんだか予想以上に、とっても長くなっちゃったケントママ編。


短編短編で「こんな事」「あんな事」を書よりも、グイっと入り込めるかなーっと思いながら書きました。

いかがでしたでしょうか?




保育園。

幼稚園。

小鯵園。


いえいえ……どんな仕事であっても


「教える側」であるはずの人が「教わる側」の人から学ぶ


って結構よくありますよね。


人と接する仕事であれば尚更。

ワタシも本業、飲食店やってますが……ホント毎日そんな感じです。




それに加え、トラブルとかハプニングって……案外マイナスばかりかと思いきや

そのお陰で仲良くなれたり、結束が深まったり。


雨振って地固まる

ピンチはチャンス


なんて言葉がありますが……まさにその通りだと感じる事は多々あります。


で、結局その根本にあるのは何か?


と考えると……


やっぱプラス思考かな


と。




誤解を恐れずに「案外・意外」という言葉を使っちゃいますが……


小鯵園の話をイロイロ聞いていると……

障害児のお母さん達って、案外・意外にプラス思考の人が多いです。




なにかの時にユミコが、あるお母さんに


「すっごい前向きですね!!」


って言った事がありましてね……。


その時、笑って返された言葉が……


「そりゃ前向きにいかにゃ、やっとれんがな。」




そんな会話を聞くと……ワタシ達、健常者は、その言葉のもう一歩奥に……


「苦労があるからな」

「大変だからな」


なんて、余計な詮索を入れてしまいがちですが……


いやいやホント。

額面通り。


ひょっとしたら、健常なワタシ達よりも子育てを楽しんでいる。


そんな笑顔をするんだそうです。




さて。

次は夏休み明けから運動会の話でも書こうと思います。


日常のちょっとした変化にも敏感な自閉症の子達。


運動会という一大イベント。

そしてその練習。


いったいどうなるんでしょうね。




これからもどうぞよろしくお願いいたします。



                                                          山田タロウでした。





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