シングルレビューは今後、アイドル・ニューミュージック・ロックほかジャンルの垣根を越えて、 時代も70年代から今世紀まで、かなり幅広く取り上げていくつもりです。・・・ではあるのですが、取り上げる曲があまりあっちゃこっちゃ飛んでしまっても何なので、シングルレビュー第2弾も、第1弾と同じアイドル歌謡、時代もほぼ同時期で書いてみようかと。取り上げる曲は、いまマイブーム(←あれ、もしかしてこれって死語?)真っ最中の中村容子さん(以下、レビュー本文で「さん付け」するのはやめます)で行くことにします。
「ティーンエイジ・ソルジャー」(中村容子)
作詞:橋本淳、作曲:山本寛太郎、編曲:大谷和夫
[1984.3.23発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★★★]
・・・というわけで、歌手メジャー度・作品メジャー度ともに、図らずも★1つという寒ぅーい評価になってしまいました。しかーし!そんな中にキラキラと輝く名曲が潜んでいたりするところが、歌謡曲の世界が奥深く、侮れない世界である所以なのです。だから歌謡曲はやめられないんだよな・・・。
「ティーンエイジ・ソルジャー」は、中村容子の記念すべきデビュー曲です(「中村容子って誰よ?」と思った方は、12/3/31のブログに少し書いたので、そちらをご覧下さい)。典型的なテクノ歌謡でもありますね。作詞:橋本淳、作曲:山本寛太郎というコンビは、ヨッちゃんこと野村義男のバンド「The Good Bye」のデビュー曲「気まぐれONE WAY BOY」も手がけてますが、ハッキリ言って「ティーンエイジ・・・」の方が数段出来がいいなぁと思うわけです。
冒頭から、「スタア」(甲斐智枝美)や「センチ・メタル・ボーイ」(キララとウララ)を想起させるようなコズミックワールドが炸裂続いて、16ビートのシンセベースが心浮き立つリズムを奏でると、春らしく明るい未来を予感させる世界がパッと広がる。うーん、素晴らしすぎる・・・。アイドルのデビュー曲としてはこれ以上望めないレベルでしょう。で、曲があまりに素晴らしいと歌詞の方は残念なケースも多いんですが、この曲の場合、奇跡的なことに歌詞もイイのです。
歌詞の内容は、「引っ込み思案の男の子に、ちょっぴり不安な気持ちを抱えながら、女の子の方から積極的にアプローチする」という、アイドル歌謡では割と定番のテーマと言えましょう。んで、この辺り(↓)の歌詞なんかは、アイドルポップスとしてほぼ完璧の出来ですねぇ。橋本淳センセ、good job
♪君に見られると一番 魅力的な女の子になれる
春のそよ風がハートにマジック 私をこんなに変えたの・・・
恋はハプニング 私はきれいになったと思うのよ?
♪君に抱かれたら一番 刺激的な女の子になれる
だから正直な返事を聞かせて 5つの不安があるのよ
ほんの1ダース 遊びの彼女がいるって本当なの?
中村容子の歌の魅力としては、明るいフレーズは明るく、切ない内容の歌詞はちゃんと切ない歌い方ができている、というのが結構大きいと思います。これ、簡単なようで、アイドル歌手で実際にしっかりできている人ってほとんどいないんですよね。
そして、彼女の歌のもう一つの大きな魅力は、声の「抜き方」に特徴があること。爽やかな色気を感じさせる歌い方ができると言ってもいい。このデビュー曲でもこのワザ(?)が随所に現れていて、作品全体に鮮やかな色彩を与えています。その辺がいわゆる「テクニック」的に上手いアイドルというのは、例えば松浦亜弥とか藤本美貴とかいるわけですよ。この人達は、昭和のアイドルポップスの正統的な継承者として私は高く評価しているんですが、自然(素朴)な色気という点では、中村容子の方に軍配を挙げますね。最近ではすっかり、歌手=歌が上手くて当たり前、といった感じになっていますが、「昭和歌謡」では「歌のうまさ」以外に売れる要素が多岐にわたっていて、そこが昭和歌謡の面白みであり、かつ限界だったりするわけですが・・・。
そしてさらに、彼女の歌唱にはもう一つ特筆すべき特徴があって、2ndシングル「ショッキング・ドール」でいかんなく発揮されることになるのですが、その話はまた別の機会に。
・・・ん?「そんな風に完全にファン目線で書いてて、オススメ度★5つなんて当てになるのか?」だって?いやいや、それは大丈夫。別に彼女のファンでなくても、その素晴らしさが十分に分かってもらえるような作品をちゃんと選んでますってば。
【2016.3.7.追記】
長らくお待たせしました~(ん、誰も待ってないか)。ようやくCD音源からアップロードできたので(これまで散々トライしていたのですが、毎回エラーが出て頓挫…)、見事なテクノ歌謡ぶりをぜひご堪能下さいな。そして、彼女の歌唱に関して上に私が書いた細かい話が理解して戴ければ、もうこの上ない喜びです