(TheHindu(India) 8月30日)
8月30日、日本全国で「安保法案反対デモ」が行われた。
途中から小雨まじりの天気だったにもかかわらず、主催者発表で12万人もの参加者が国会前に集結した。
■ 10万人集会
… 行ってみたらスカスカ…、なんてことないよなぁ・・。
そんな懸念はすぐに杞憂へと変わる。都心へと向かう地下鉄は明らかに混んでいた。「9条壊すな!」プラカード持った人たちが目立つ。僕は最寄り駅での混雑を避けるため、ひとつ前の駅で下車して、休日の東京を歩く。
国会前まで道筋で、もうデモは始まっていた。
報道映像には出てこないが、国会前から決して近いとは言えない場所にも、プラカードを持った大勢の人たちがいた。演説をする声がした。街はいつもあるはずの「日常感」を完全に失っている。
いい動画があるので見てほしい。
地図で位置関係を確認しよう。
日比谷公園から官庁が集まる霞ヶ関界隈、そして国会前へ。報道映像では出てこない景色を見れば、今回のデモに多くの人たちが集まった事が分かるだろう。
そして国会前へ。
「安倍はやめろ!」と叫ぶ群衆が車道へと溢れだしている。
この動画、この場面の凄さが理解いただけるだろうか。
まったく非暴力の市民が大量に溢れ、警察の規制を超えていく。
日本のデモ、それは「整然とした怒り」なのかもしれない。
迫真の場面を集めたRTの動画、世界に配信されていく。
僕は国会前を何とか通り抜け、国会議事堂の周囲を歩く。何が起きているのが、自分の目で確かめたい、そう思ったからだ。
その途中何度か、必死の思いを手書きしたプラカードを見て、涙ぐみそうになった。喧騒の興奮が、僕をリアルにさせたのかもしれない。
■ デモの意義
自分の意思をパブリックな場所で表明する、それがデモの最大の意義。人が、個人としての尊厳を守るための抗議行動だ。
今回の安保法案、ひとりでもやもやしている人は少なくない。でも、多くの人はそこから目を逸らせてしまう。「きっと、大したことないよ」と、安全神話に逃げ込んでしまう。
疑問に思ったらまずは調べる、中身を知る。自分の感性を信じて賛成か、反対かジャッジする。それだけやって、ようやく街でプラカードを持って立つことができる。この時点で、その人は勝利者だと僕は思う。
■批判する愚者
今回、多くの若者たちが中心となって行動を起こしている。マスコミでも取り上げられているので、ご存知の方も多いだろう。
そんな彼らに「あ~だ、こ~だ」と批判する大人たち多くて、僕は正直驚いた。まだ安倍晋三の手下が批判するなら理解もできるが、現実には安保法案反対者による批判が後を絶たないのだ。
相手は安倍晋三であり、自民党じゃないか。
他の人間のやり方が気に食わないないなら、自分で行動を起こして、大きなムーブメントを作って、手本を示せばいい。「こうやって、やるんだ」ってね。他人に文句を言っても、何の足しにもならない、ジャマなだけだ。
「大人たちは今まで、何やってたんだよ!」
原発が爆発した今、僕たち大人は、若者たちに対して何のエクスキューズもできない。その現状認識から始めないと、結局は僕たちも安倍晋三と同じ、「見たいものしか見ない存在」になってしまうだろう。
■ メッセージ
今回の10万人デモで最大の成果は、この絵を世界に発信出来た事だ。
日本の報道だけでは伝わらないが、今回のデモは世界中のメディアでトップで取り上げられている。
BBCは現場にキャスターを入れて、動画付きのネットニュースを何度も配信した。AFP通信の報道も早く、それを受けて世界中のメディアが日本のデモを報じた。中国、韓国だけでなく、それ以外のアジア諸国の反応が凄まじい勢いだった。
(BBC 8月30日)
「軍国主義者が国民をダマして侵略戦争した」
世界はこの「ポツダム宣言史観」で成り立っている。僕たちが、旧ドイツ帝国はヒットラー率いるナチスが残虐な戦争をした、そう思っているのと同じぐらい、この認識は世界で当たり前のこととして理解されている。
(「軍国主義と闘うために~」 と伝える中東のメディアアルジャジーラ)
こうした絵は「日本国民 ≠ 安倍晋三」を世界に訴える。
安倍晋三が重度のナショナリストであり歴史修正主義者であることは、世界に知れ渡っている。日本が戦後初めて海外で武力行使できるようになる、この政策に疑問を持っているのは決して日本人だけではない。
今回のデモには大きなメッセージになっただろう。
安保法案、自民党は予定通りの強行採決を狙っている。
楽観できる要素はひとつもないが
悲観するには、まだまだ早い。
<(31)につづく>