2010年10月18日 初単独行 六甲・黒岩尾根 | ハーピン・ジョーの山フォト日記

ハーピン・ジョーの山フォト日記

HARPIN’JOEの山登り写真です。
photo by tiny

2010年
10月18日(月)
初単独行
布引~黒岩尾根~摩耶山~山寺尾根


八ヶ岳の余韻がまだ残る中(今でも思い出す)、山へ。六甲山系・摩耶山(698m)を目指す。今回は初の単独行だ。
過去に生駒山には一人で登った事が何度かある。
バイクで枚岡神社まで行ってそこから中腹辺りまで登って夕空を見て、といった程度で、登山という意識はなかったし、登山などと言うようなものでもなく、山のそばに暮らす人が散歩がてらぶらりと登っていった感覚に近かった。


山に入ると、中年から年輩者の方を中心にちょくちょく単独行の人がいて、前々から興味があった。
単独行は先ずは馴れた山から始めるのだが、生駒山はあまりに馴れすぎていて物足りない。
そこで、都心から近くて安全な、行ったことの無い山にと考え、幾つか候補を挙げ、摩耶山にした。

摩耶山くらいで単独行がどうだとか、何を大げさなことを言っておると、山登りのベテランは思うかも知れんが、やはり初めてというのは、ドキドキ感、ワクワク、不安と期待がいつもよりも大きい。

たいてい山登りの前夜はワクワクしすぎて寝つきにくいことが多いのだが、今回は一睡も出来ないまま朝が来た。


山行記がたまりまくっているのでとにかく記録をつけていこう。


@5:00起床
前日に準備した装備をチェック、ストレッチをして朝食を済ませる。


@6:05自宅出発

@6:20
地下鉄阿倍野駅より東梅田駅へ

@6:53
阪急梅田駅より神戸線通勤特急に乗り三ノ宮駅へ
通勤ではないが通勤特急に乗り込む。車内は平日の朝とあってサラリーマンやOLが。
場違いな恰好をしているので少々恥ずかしい。なんだか所在ない。


@7:32
神戸市営地下鉄・西神駅より山手線谷上行きに乗り新神戸駅へ。

通勤の方々と修学旅行の学生たちで溢れかえる車内。新幹線に乗り換えるのだろう。


@7:35
新神戸駅到着。
登山口を探し、しばらく迷う。

@7:50
新幹線の乗り場となる新神戸駅のターミナルに到着。
高架下をくぐると大きな登山案内板が。


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@8:05
明治33年に造られた砂子橋という小さな橋を渡り、公園で一息。
少し肌寒いピンと張り詰めた朝の静けさ。鳥の囀り。
心地良い、寂し気持ちいい孤独感と緊張感。ストレッチをして地図を確認。煙草を一服。

@8:15
入山。いざ出発。
公園の上にある長い階段をゆっくり登る。
ここは布引の滝やダムで有名なルート。紅葉の時季などは観光の方々も沢山やってくるらしい。
目指す摩耶山は徳川道なんかもあって大変歴史のある山。摩耶道や天狗道~六甲縦走路と、メジャーな一般ルートも含めて山頂までのルートがいくつかあるがどれも急登が多くなかなかハードなようだ。

摩耶山と決めた数日前、さて、どのルートで行こうかと地図と睨めっこ。
いつも一緒の相方も僕も、人のあまり多く無い静かな山道が好きだ。今日は平日。しかも月曜日。どこをどう歩いたって大して人気は無いだろうが、
どうせなら人のいない破線ルートを行ってやろうと考えた。

破線ルートとは、危険な箇所があったり道が荒れていたりであるとか、迷いやすい、整備されていないなどの道の事で、山の地図では点線状で記されている、あまり行かない方が良いというルートを指しているのだ。
反対に一般的なルートは実線で記されている。


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@8:25
布引渓流、雌滝、雄滝。
想像していた以上にダイナミックで美しい。思わずおおっ!と声をあげてしまう。

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雄滝を左に見ながら整備されたコンクリート道を登ると休憩所が。土日のみ開いているようだ。

そのまま登ると展望台へ。神戸市街地と神戸港を見下ろす。


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まるでお屋敷の門構えのような古い門を通りしばらく整備された道を進む。
山らしい雰囲気はまだあまり無いけど静かでなかなかに心地良いですね。


@8:41
五本松かくれ滝
布引貯水池・ダムの手前。
この名前は一般公募により決まったそうだ。

@8:45
布引貯水池ダム。小休止。
しかしまだまだ暑い。


ダム右側の細い橋を渡り市ヶ原を目指す。貯水池沿いの長閑(のどか)な広い山道を抜け、茶屋が並ぶ通りに出る。
紅葉茶屋、あけぼの茶屋、櫻茶屋が並ぶ。どれも土日しか開いていないようだ。いやひょっとしたらまだ朝早いので昼前には開いている茶屋もあるのかも。
『これからどちらまで?』
年輩の地元の方と思われる山散歩のおじさんが声をかける。

『このまま地蔵谷出合で黒岩尾根に行って摩耶山まで』

『わぁ。そら大変やで。ワシはよう行かんわ。もう年やしここまででええわ。気いつけてな。』

『分かりました。ありがとうございます。気をつけて行ってきます。』
岩場とかいった危険箇所は無いはずなので山道自体が厳しいのだろう。これは楽しみだ。

ここまではトイレや自販機もあり、道も整備されていて観光ムードが漂う。しばらく行くと右手に廃屋が出てくる。


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こんな張り紙が。六甲らしい?

でも、額面どおりに受け取ってもいいのかしら・・・女子としてはちょっとコワイ。



@9:12
市ヶ原分岐
このあと一気に山間の雰囲気に。
うんうん、いいぞいいぞ、山らしくなってきた。


@9:27
地蔵谷出合(分岐)
左へ伸びるトゥエンティ・クロス(川を渡りながら歩く名物ルート)~市立森林植物園方面へのルート側にある砂地にて小休止。誰か飯でも作ったか、焚き火のあとが。

平日とあってか、入山してから数人しか出会っていない。茶屋通りにあるトイレ横の休憩所でお話しした年輩の方を最後に、ぱったりと人の気配無し。


@9:37
地蔵谷出合を右に、いよいよ破線ルートである、黒岩尾根ルートへ。入り口からして既に薄暗く、急登で荒れている。
登山者の間では有名なこのルート、山と高原地図には破線ルートで記されているが、国土地理院発行の地形図には黒岩尾根と書かれているだけでルートは記されていない。
登り始めから急登が続く。
多少荒れているところや藪々した雰囲気があるが山道は踏み固められていて歩きにくい事は無い。

しかし整備は余りされていないので山道両側の木々が鬱蒼としている上にしょっちゅう蜘蛛の糸が道を遮っている。こんなに蜘蛛の巣や糸があるということは余り人が通らない証拠だ。


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僕は背が高いのでしょっちゅう屈んで通り過ぎなければならない。時々上手くいかなくて蜘蛛の巣が顔やら頭やらにまとわりつく。黄色と白黒の色が不気味な女郎蜘蛛があちらこちらに。

山道は急な登り下りが次々連続する。こりゃ大変だ。
途中でたまらずストック(トレッキングポール)を取り出す。
ストックのお陰でマシにはなったが、こりゃあハードだ。
グンと登り詰めたと思うとまた下り坂、急な登っては下りを繰り返す。
人っ子一人いない山道をただただ歩く。なんだか怖くなってくる。猪なんかが急に出て来やしないだろうか。
クマはいないはずだが、極々稀に生息地域を逸脱して現れる場合がある。万が一って事に遭遇したらどうする?
もしいつの間にか迷っていたら?果たして本当にこの道で合っているのか。気がつけば周りは見渡す限り山、山、山。

転倒して怪我をしたらどうする?独りきりでこんなめったに誰も来ないところで滑落でもしたらえらい事になるぞ。

ルート確認・方位確認は分岐点や、迷ったかどうか不安になった時だけでなく、常に定期的に間隔をおいて地形図や地図とコンパスで確認してはいるものの、独りきりの上、昼間でも薄暗い場所があるこういった山道なの、不安になる。いつもより足早になる。

クマ出没はまず有り得ないので猪対策として時折『ヘイッ!』とか『オッ!』とか声を出したり、ストックを叩き合ってカンカン鳴らしたりしながら歩く。人間って、いや、僕は、こんなにも臆病なのか。情けない情けない。
突如、『バサバサッ!』と頭上で音が!
うわぁ!なんや!(ビクビクッ!)
カラスが飛んでいく。
頼むわほんま!血の気が引く。
もう帰りたいわ。アカンアカンこんなところまで来て帰るに帰れんやないか。いやはやなんとも情けない。


@10:22
市境標石が道に。標高およそ609m。



しかししかし。ふと気がつけばこの山々の中。独りきりの山道。静寂。風に揺れる木々の音。鳥の声。
時折現れるカラスには驚かされるけど、なんと心地良いことか。不安と恐怖と孤独感が入り混じった、しかしそれは自然界と一体になったからこそか、と言えば大げさだが、この得も言われぬ心地良さ、清々しさはなんだ。

単独行の魅力がほんの少し分かったような気がする。いや、これはいいぞ。ひょっとしてたまらないぞ。

単独行と言えば、兵庫出身の伝説的な登山家、加藤文太郎を思い出す。彼もここを歩いたに違いない。しかもスイスイホイホイと楽しげに山々の静寂に浸りながら。


不安と孤独感と怖さもあるけど、この山に囲まれた中、山の存在を心底心地良く味わいながら歩く。
誰もいないのを良いことに、
ええなあ、きれいなあ、しかしきついなぁこの尾根道はなど独り言を言ったり、猪除けに掛け声出しながら、歩いていたら、林業のお兄さん二人が前方の少し開けたところで休憩していた。
こんにちは、ご苦労様ですと挨拶を交わす。
独り言やらを聞かれていると思うとちょっと恥ずかしい。


@11:11
アドベンチャーコースとの分岐点に。標高659m。
摩耶山山頂までもう一息。


@11:20
摩耶山山頂と桜谷出合分岐。
舗装された林道を横切り山頂ルートへ。

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@11:30
摩耶山山頂(698.6m)
見晴らしは良くないが祠もあり、歴史を感じる。

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@11:43
掬星台(山上広場)にて大休止。昼食。
ここは見晴らし台的なところ。神戸市街地、港、山々が一望出来る。大阪平野や和歌山方面も見えます。
遠足の子供たちや、登山者、ケーブルカーでやってきた観光客たちがちらほら。
暫しのんびりして下山。


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掬星台(摩耶山公国定園)からの展望


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@12:47
山寺尾根より下山。
急坂。転んだらゴロゴロ落ちて大怪我しそうだ。下り、下山が最も事故が多い。それでなくても膝を痛め易いのでゆっくり注意深く下りる。
しばらく急坂が続いたあと、岩がれた山道も少々。


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摩耶山下山ルート・山寺尾根の急坂



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山寺尾根・突如鉄塔(この後ももう一つあった)


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山寺尾根終わりに近づき長峰霊園あたりにあった。綿花か




@13:55
そま谷峠と長峰台の分岐。
暫し休憩。
徳川道ハイキングコースも交わる。その名の通りお殿様の為に造った道。

※"そま"という漢字は"木"偏に旁(つくり)が"山"と書く字だが、携帯だとどうしても出てこない。八ヶ岳山行でも"そま添"という場所があって困った。

ちょくちょくかなりの急坂がある尾根道だ。登りもきついだろうなあ。摩耶山へのルートはどのルートも急坂が多くてキツいと聞いています。ちょっとしたピクニック気分で行こうと考えている方はケーブルカーをご利用下さいね。
相変わらず独りきり。少し開けた場所で一服。小鳥たちが沢山いる。ああこの静けさよ。たまりません。
14:14、再出発。下山ルート、長峰台方面へ。


@14:18
下山。長峰台。徳川道ハイキングコース入り口と記した看板が。あれ?もう終わったのか!休憩したとこなのに。地図読みの勉強がまだまだ足りませんな。
橋があり、もう目前は如何にも山の手らしい高級な住宅が並ぶ。橋の手前に山の水が流しっぱなしの水場があったので、有り難く使わせて頂く。そばにいた地元のオジサンと暫し腰痛や膝痛に効果的なサポートタイツの話しで盛り上がる。

@14:38
長峰坂を下り阪急六甲駅方面へ。
都会に出た途端に迷いまくる。人に道を尋ねる。


@15:10
ようやく六甲駅に辿り着く。
登山靴での町中歩きは疲れます。駅にて休憩。
15:29乗り込む。

@15:58
梅田駅。さっきまでの静寂が遠い過去に。

@16:25
阿倍野到着。
16:35 自宅到着。


△△△
最標高:摩耶山(698.6m)
全歩行距離:約13km
(布引入り口~六甲駅)

全歩行時間:7時間5分
(休憩・食事・駅までの迷い時間含む)

使用地図:山と高原地図No.48/六甲・摩耶


△△△
単独行。こりゃ良いですね。また行くぞ。


△△△
下山ルートの山寺尾根途中で地図に無い小さな分岐点らしき場所があった。山道かどうかの目安は尾根筋かどうかだが、写真を見てどちらが正しいルートか分かりますか。

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正解は左です。この写真からだけだといかにも道筋がしっかりした、踏みしめられた感じの右がルートのようですが、こういう時、方位を確かめ、地図で確認(等高線など)して見定めます。
定期的にルート確認と方位確認をしているので右側は気にせず左にすんなり進んだが、試しに右へ行くとすぐに行き止まりで、繁みになっており、覗き込むと崖とまではいかないがかなりの急斜面。
今回の場合なら右に行ってしまってもホンの数メートルで行き止まりだし、生い茂っているので無理に進んで斜面を滑落する事もまず有り得ないが、
ルートによってはまるで山道のようになっていたりして迷ってしまったりする。場合によっては命に関わってくる。
やはりどんな山であれ地図とコンパスは装備しておきたい。