◆釣行記~四半世紀のときを経て | 「 晴 釣 雨 讀 」

「 晴 釣 雨 讀 」

晴れた日は大いに釣りを樂しみ…
 雨の日は靜かに讀書や道具の手入れに耽る…
   無理をせず、焦らず、穏やかな心で渓魚との駆け引きを満喫する…

 …ある方から頂いた言葉です

  渓流ルアー釣りや関連することに触れていきたいと思います

 今年は秋田県の渓流遊漁解禁日より、2回目の週末が4/1(土)となりました。

 一般的には年度始めであり、秋田県内に22ある漁協のうち18の漁協に於ける渓流遊漁解禁日であり、秋田県のサクラマス遊漁解禁日でもあります。

 この日も私は渓流釣行するつもりでおりましたので、パートナーズの忠さん(佐藤忠雄さん)へ先々週の時点でお伺いしましたが、予定が入っていて難しいとのことで、単独行のつもりでおりました。

 しかし、週の半ばになって、忠さんから予定が急遽とりやめになったとのことで、御一緒して頂けることとなりました。

 そして、忠さんに定めて頂いた行き先は、昨年の解禁日3/21に『山女魚乃忠学校』の皆さんと入渓した旧北秋田郡内の阿仁川水系でした。

 

 目的地付近の道路の状況です。

 今年の春は、至るところに大小限らずで雪崩の危険性があります。

 

 川の状況を確認ために車を降りたところ、忠さんが道端の何気ないフキノトウ(バッケ)を指さし「ほら、今だよ」と仰いました。

 先週のネコヤナギと同様で、葉に朝日を浴びたバッケがとてもキレイであり、撮影したのですが、なるほど全てに応用が利くことが勉強となりました。

 

 山奥の高い積雪を心配しながら目的地へ到着してみると、川に近いところの林道で、伐採に伴う重機が作業していた跡があり、そこに駐車することができました。

 途中の道路でも伐木集積が見られたので、今年も伐採があった様です。

 

 今年で7年目を迎えた私のウェーダーですが、これまで全く補修要らずで過ごしたものの、本体直付けのグラベルガードのほつれがひどくなっており、今年に入って某メーカーのグラベルガードを購入しておりました。

 いざ装着を試みるも、長さが足りずにベルクロが届きませんでした。

 

 忠さんには装着できましたが、サイズの大きい私には合わず、何らかの改造が必要です。

 このメーカーの製品は、ウェーダーやフェルトソールの最大サイズも私には合わず、残念です。

 

 4/1(土) 旧北秋田郡 阿仁川水系

 天候晴れ、気温9℃、水温5℃、水位 雪代によりやや高めで濁り無し

 

 入渓点に、昨日から今朝の可能性のある新しそうな足跡がありました。

 周辺の積雪は高いのですが、足の向きを見ると、上流から下ってきたものでした。

 時刻は9時過ぎですが、果たして・・・。

 

 水量が高めのおかげで、所々で丁度良い深みが連続しております。

 序盤は魚の反応は見られずに進みます。

 

 川沿いも切土斜面では、雪崩と転石伐木落下の危険性があり、注意が必要です。

 

 忠さんが「さぁ、これは良い場所だ」としたポイントを迎えました。

 その1投目に・・・

 

 6寸ヤマメをヒットしました。

 まだサビが抜けずに痩せておりますが、オレンジ掛かった朱の入ったキレイな魚体です。

 

 対岸のロッドが指す際へ着水後、倒れかけの木の周辺の深みの底近くでヒットしたとのことです。

 

 2投目は私がキャストしました。

 1投目の忠さんの着水点を見ていなかったので、自分なりに最も深いレーンの波を捉えようと、傾いている木より少し上流のところに狙って着水させたのですが、流れに浚われて左側の少し浅いところを通ってきました。

 それでも4~5寸の明らかなヤマメがチェイスしてくれたのですが、バイトさせられませんでした。

 直後に忠さんから指摘がありましたが、今期初チェイスに焦った私は適正なアクションさせるのを忘れておりました。

 無意識の動作であり、クセと言えます。

 2年前の6月の釣行のときに、忠さんから気付きを得ておりながら、その他のできていない課題が多く、無意識で動作できるところまでは、まだまだ時間が掛かります。

 

 次に、忠さんから1投目の着水点を確認してからキャストしますが、緊張感を維持できずに何度も上空の枝へのミスキャストを繰り返してしまい、狙いの着水点に入ってもミノーとスプーンの違いもあり、底を捉えることができませんでした。

 再現性のあるキャストは入口に過ぎず、その後にアングル・レンジ・スピード等が控えており、これら全てが成立してこそ、魚を釣ったことになります。

 忠さんの釣りを近くで見ながら、今期初のチェイスと波問答に遭遇したことにより、やはり半年でボケていた昨年までの記憶が、徐々に呼び覚まされる感じを得ました。

 

 このヒットを境に、徐々に3~5寸程度の小さいながらもチェイスが見られる様になりました。

 

 初めて見る苔で、調べるとコアカミゴケと呼ぶそうです。

 草木はフキノトウしか見えず、木の芽はまだ硬そうに見えます。

 

 そして、忠さんが「ここは絶対に居そうだなぁ」としたポイントです。

 川中の倒木の根によるYですが、1投目を奥側の流れに着水させて、流れを横切らせる様にキャストすると、Yの合流の淀みのところで・・・

 

 5寸ヤマメをヒットしました。

 私の例年の初釣果はGW前後となることが多いのですが、この時期となったのは3年ぶりです。

 ヒット後は、魚体が小さく手応えがなかったので焦りましたが、バラさないようにテンションを掛け続けて必死に取り込みました。 

 

 また光を間違えそうになった私を見かねて、全て忠さんからキレイに撮って頂きました。

 小さくもふくよかでサビは見られず、消えかかった朱線がアマゴの朱点の様に見えます。 

 

 次に移ろうと歩き始めると、忠さんがこのポイントのすぐ脇を指さし「去年の8月に他の忠学生と3人で入ったときに、ここだけ草木が円形になぎ倒されていて、みんなで"熊の寝床"と呼んでいた場所だよ」とのことでした。

 このときは熊の気配はありませんでしたが・・・。

 

 未だ地表は見えず。

 

 雪代時期は沈木へルアーが引っかかることがよくありますが、先週とは違って防水ジャケット+リストガードで袖口を防水仕様に固めており、川に手を直接入れて回収しました。

 

 余談ですがスプーンについて、フィールドハンター「DO-UP」を昨年の新発売時から使い続けており、アップのみならずクロスやダウンのあらゆる流れの中で得られる、抜群の泳ぎと感度と引き心地は、忠さんが出版した『御凜書~新しいヤマメ釣り』の理論にも合致するもので、私の釣行の支えとなっておりました。.

 しかし、目視としての色のところで、私の目が以前までに使用し続けていたゴールドベース+パール系に慣れてしまっており、底石の色や光の加減によっては私の目に見づらいときがありました。

 いろんな色で試しすも、なかなか慣れず、何か手段がないかと思案していたタイミングで「DO-UP」にシェルを貼り付けた「DO-UP SHELL」が今年に新発売となり、"この見え方なら・・・"と、ハーフ蛍光レッドとハーフグリーンを注文しておりました。

 試してみましたが、私の目に合っている感じで、これに落ち着くことができそうです。

 

 さて、先程のヒットで魚の活性を期待したのですが、パタリと反応が見えなくなりました。

 

 11時20分、林道の橋が見えてきました。

 忠さんが難しいキャストを連続して決めていくのですが、全く反応が見られません。

 "入渓点の足跡の人が、ここら辺りから入ったのか・・・"などと考えながら進みます。

 

 橋を過ぎて間もなくの淵です。

 私の1投目に3~4寸のチェイスがありましたが追い気は薄く、2投目以降に反応なしです。

 

 ここでも同様でした。

 

 対岸のボサ下の深さが丁度よく、しかしサイドオンリーの、且つ立ち位置の正面に大きな枝が突き出ていて、私は全くお手上げとなる、忠さんにしか攻められないようなポイントです。

 

 サイドにより、最も深いレーンとなるように絶妙なポイントに着水させてアクションさせますが、ロッドが枝に当たりそうになって、少し浅いところを通ってきました。

 ならばと、立ち位置やロッドの高さを、これも微妙に変えた2投目に・・・

 

 6寸弱のヤマメがヒットしました。

 ミノーのベリーフックに喰わせた、正に技有りの見事な釣果です。

 

 パーマークの模様や、とても紅い朱線もヒレの朱も、実にキレイです。

 

 私のキャストで雪代時期に恒例の、何度か石・沈木・枝に掛ける場面がありましたが、川幅が大きくないので全て回収できました。

 

 12時15分、林道下のボックスです。

 ここまでイワナの姿を見ておらず、7~8寸ぐらいの魚が反応してくれるのを期待しましたが、私の1投目に反応したのが5~6寸のヤマメのチェイスで、ルアーと一定距離を保ったまま離れていきました。

 2投目以降に反応はなく、これにて退渓としました。

 

 さて、ずっと気になっていた先行者の足跡が林道に見えるのか・・・

 

 しかし、林道に足跡等の痕跡はなく、真っ白な高い積雪しか見えませんでした。

 ここには何度か忠さんと御一緒しておりますが、入渓点まで約2㎞な感じです。

 歩き始めたのが12時20分頃、果たして何分かかるのか・・・。

 

 雪道を歩くときは、先行者が付けた足跡の上を歩くと、そこの雪がある程度は固まってくれるため、後続の人は脚が沈みにくくなって歩き易くなります。

 年齢的にも礼節の上からも私が先頭で足跡を付けていくべきなのですが、忠さんに追いつくこともできず、また途中何度かの休憩後に私が先に行こうとしても、忠さんは「いいよ」と言って先に進まれます。

 私の体力とこのときの気力を見切られており、また段々と私の脚が上がらなくなっており、ただ付いていくのが精一杯でした。

 

 先程の橋を過ぎたところで、うっすらと人の足跡らしき凹みが見えましたが、入渓点にあった足跡の様な新しさはありません。

 入渓点の足跡の謎は深まるばかり・・・

 

 日なたの方が多少解けて雪が締まっているのか、足が沈まずに進むことができましたが、日陰は御覧のとおりで足が沈むため、脚が取られて難儀でした。

 林道を歩き始めて20分くらいが経過した辺りから、私の右膝が脚を上げるたびに針で刺した様な痛みが出始めておりました。

 

  私がヒットできた「熊の寝床」を少し通り過ぎたところで、円形の大きな足跡が道を横断しておりました。

 1日から3日くらい経っていそうでしたが、もうお目覚めの様です。

 地元のニュースで、3/26に秋田市雄和の国際教養大学の構内で熊が出没したとの報道もあり、どこに出没してもおかしくありません。

 

 小さい範囲でしたが、水芭蕉が出始めておりました。

 

 時間が経つにつれて、腰や右脚の付け根にも似たような痛みが出始めました。

 何度か休憩を入れながら、ゆっくりと進み、なんとか車に辿り着いたのは13時20分のことでした。

 忠さんに時刻を伝えると「やはり1時間も掛かったか。林道で2㎞くらいだから時速2㎞とすると、通常の歩行速度を時速4㎞を標準として、雪道で概ね倍の時間か」とのことです。

 私が居なければ忠さんなら時速3㎞、私のみなら時速1㎞以下だったかもしれません。

 例え林道でも舗装道でも、5~60㎝以上の積雪の上を歩くとなると、雪崩や熊や少し脚に異常が出ただけでも遭難の恐れがあることで、夏場より人の往来も期待できないので、常に"危険である"という認識を強く持たないといけません。

 

 忠さんから「車の運転できるの?」と心配して頂きましたが、雪の無いところの歩行では痛みがなく、連続して大きい負荷が掛からなければ支障がなさそうでした。

 車道の広いところまで移動して、忠食としました。

 未だに風は冷たく、熱湯を使ったカップラパーティーと食後のベトナム産コーヒーが、冷えた体に温かく染みました。

 結局、入渓点の足跡は謎のままですが、それも含めて、いろんな話で楽しい時間を過ごしました。

 

 忠食後、午前中の川を離れて五城目・南秋方面へ向かって、釣りは状況次第としました。

 これは五城目町恋地集落の水田ですが、雪はありますが畔(くろ)が出てきております。

 

 保呂瀬の堰堤です。

 山肌にはまだ雪が見えており、萩形ダムからの杉沢発電所の放流により、川の水が雪代独特の翡翠色をしておりました。

 今年も開催される「みちのく渓流釣り大会in馬場目川」に、今年の残雪がどの様に影響するのか、いろいろと考えるのが楽しみです。

 

 保呂瀬を過ぎると、下流域の田んぼに雪が見えなくなりました。

 途中で忠さんの釣友の方のお宅へ立ち寄り、そこを出たのは15時半を過ぎており、納竿としました。

 

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 秋田市内に入り、忠さん宅への通り道につき秋田大橋へ向かいました。

 実は釣り場を離れた直後、忠食まで携帯圏外に居たため、忠さんの携帯にメールや不在着信が何通か届いており、パートナーズ関連の方々から午前中の状況報告が寄せられており、その中に秋田大橋で仲間の方に釣果が挙がったとの報もありました。

 17時過ぎに到着して、誰か居るかと近づいてみると・・・、

 

 3人居た釣りをされていた方のうち、2人が忠さんの同級生やパートナーズの方でした。

 サクラマス解禁日につき、雄物川・玉川・岩見川・米代川・子吉川など、各河川の有名ポイントへパートナーズの皆さんが挑んでいたとのことで、釣果が挙がった・挙げられなかったの情報が飛び交い、全体としての釣果はそれなりに挙がっており、一喜一憂ありながらも大いに盛りあがった様です。

 昨年のサクラマス釣りは近年稀に見る絶好調の年となりましたが、今年も良い解禁日と言えそうです。

 

 忠さん宅に到着したのは17時半すぎでした。

 こうして、いろいろなことが盛りだくさんの釣行が終了しました。

 

 午前の釣りを終えてから忠食までの時間の中で、忠さんが「今日の状況を踏まえると、改めて魚影が薄くなったと感じる。昔と比べても仕方のないことだが、この川が夏以降も大丈夫なのかと本当に不安になる」と仰いました。

 その続きで、「かつて『渓流のルアーハイテク講座』に"今しか味わえない"みたいなことを表現していたな」と仰ったのですが、その言葉が私の頭の中に引っかかっており、この記事を残すに当たり、忠さんが25年前に著した『渓流のルアーハイテク講座』を何度か読み返しておりました。

 今の私より若かった30代の忠さんが記した「まえがき」「あとがき」を見ていると、現状を予言しているかの様な行(くだり)が随所に見られます。

 

 そして、私は図らずも今期の初釣果をヤマメで得ることができました。

 "図らずも"は偽らざるところながら、「今しか味わえない・・・」を踏まえますと、その釣果に対して、これも忠さんのお言葉ですが「無関心からくるかけがえのない自然の変化」や、文豪の開高健さんが仰ったことで有名な「悠々として急げ」など、そうした言葉の捉え方のところで、改めて、いろいろと考えさせられた釣行となりました。

 

 忠さんには毎回のことながら、今回は特に御心配を掛けてしまいました。

 脚や腰の状況は、翌日には概ね回復しておりました。

 サクラマス解禁日の4/1という日に、こうして渓流釣りに御一緒して頂き、おかげで今回も貴重な経験を得ることができました。

 感謝申し上げます。

 ありがとうございました。

 

 以上です。